アメリカン・ウイスキー協会(AWA)が2026年6月18日、米印貿易交渉についての声明を発表しました。
インドが世界最大のウイスキー消費市場であることを踏まえ、アメリカン・ウイスキーにとって「定義的な長期機会」になりうると位置づけています。
この声明が出た背景には、急展開する米印関係があります。2026年2月にトランプ大統領とモディ首相が合意した貿易枠組みで、インドは米国製品に対してゼロ関税に向かうことを約束しており、AWAはこの大きな枠組みの中にアメリカン・ウイスキーを組み込むよう働きかけています。
バーボンは「先行するスコッチ」を追いかける立場

インド市場への参入をめぐっては、スコッチウイスキーが一足先に有利な地位を固めています。
2025年5月の英印貿易協定で、インドがスコッチに課す関税は現在の150%から10年かけて40%まで段階的に引き下げられることが決まりました。スコッチウイスキー協会が「画期的」と歓迎したこの合意は、スコッチにとって数十年来の悲願でした。
一方バーボンは、2025年2月のトランプ・モディ会談の結果として関税が150%から100%へと引き下げられています。数字だけ見れば前進ですが、スコッチが最終的に40%まで下がる見通しと比べると、まだ大きな差があります。
AWAのマイケル・ビレロ代表兼CEOは「優遇措置を求めているのではなく、公平に競争できる環境を求めている。市場に決めさせてほしい」と述べており、交渉を通じてスコッチとの条件差を埋めることを狙っています。
AWAはトランプ政権の通商担当部局への直接の働きかけに加え、米国・インド戦略的パートナーシップフォーラム主催のシカゴでの非公開会合でインドのヴィナイ・クワトラ大使とも意見交換を行っています。
「外来ウイスキー」に立ちはだかるインド国産の壁

見落とせないのは、インドが単なる消費市場ではないという点です。
インドのウイスキー市場規模は330億ドル(約4兆7,000億円)ともいわれますが、その大半は国内産のスピリッツが占めています。しかし近年はインドリ、アムルット、ランプールといった本格的なインド産シングルモルトが世界の品評会でトップを争うほどになっており、「スコッチが安くなるから飲む」だけでは済まない競争環境が生まれています。
インドが国産産業を保護しながら外来ウイスキーの関税を下げていくバランスをどう取るかは、政治的な問題でもあります。過去に英印交渉で「ウイスキーの熟成年数定義」が焦点となり交渉を複雑にした経緯があり、米印でも同様の論点が浮上する可能性は否定できません。
インドの中産階級は2047年までに10億人を超えると予測されており、市場としての将力は誰もが認めるところです。スコッチが関税面で先行し、インド国産が品質面で追い上げ、そこへバーボンが「公平な競争の場」を求めて割り込もうとしている——この三つ巴の構図がどう決着するかは、今後数年のウイスキー業界の地図を塗り替えるかもしれません。












