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ウイスキー・スポンジがついに蒸溜所を持った。カイス蒸溜所ついに稼働

ウイスキー・スポンジがついに蒸溜所を持った。カイス蒸溜所ついに稼働

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スコットランドのカイス蒸溜所が、2026年7月2日に蒸留を開始しました。

薪の直火で加熱するポットスチル、最長2週間の発酵、ヘリテージ大麦。

現代のスコッチが数十年かけて手放してきたものを、わざわざ拾い直すという方針を掲げた蒸溜所です。

オーツカ
ヘリテージ大麦は収率を追って改良される前の古い品種のことで、育てにくく量も取れないかわりに麦の味が濃いとされています

批評家がつくる側に

設立に関わったのは3人の友人同士です。このパターン最近多いですね。

ベリー・ブロス&ラッドで長くスピリッツの買い付けを担当していたジョニー・マクミラン、ウイスキー・スポンジの名で知られる書き手でありデカダント・ドリンクスを立ち上げたアンガス・マクレイド、そしてクラブ・チンの創設者アーロン・チャン。ここにスコッチ業界で40年以上のキャリアを持つロニー・コックスが加わっています。

資金は世界中のウイスキー愛好家からのみ集めたとされています。大手資本も、蒸溜所を売り抜けるための投資ファンドも入っていません。

注目すべきは、この顔ぶれの中心にいるマクレイドが、長年にわたって現代のウイスキーを論じてきた人物だという点でしょう。

書き手や売り手として外から評価を下していた人間が、自分で釜を焚く側に回った。このあたりもよくあるパターンです。

しかも掲げているのが、現代のニューポットは蒸留の段階で個性を削りすぎているという、かなりマニアックで踏み込んだ主張です。

きれいで安定した酒質を追い求めた結果、優雅ではあるが面白みに欠ける熟成酒になってしまう。

だからマッシュの持つ風味と質感を、多少荒っぽい部分も含めて残したい。そう説明しています。

オーツカ
いやぁさすがのウイスキーギーク。自分で資金を集めてやってのけるのが恐ろしいところです。

収率を捨てるという選択

具体的な造りを見ていくと、方針が徹底しているのが分かります。

原料はヘリテージ大麦です。

収率を追って改良される前の古い品種を指し、背が高くて倒れやすく、収穫量も現代品種にはるかに及びません。

それでも麦そのものの味が濃いとされ、近年になって使う蒸溜所がぽつぽつと現れています。

栽培コストは当然上がりますから、最初の一歩から効率を諦めていることになります。

木製ウォッシュバックでの発酵は最長2週間に及びます。一般的なスコッチの発酵時間が48時間から60時間程度、長めの蒸溜所でも80時間前後であることを考えると、桁が一つ違う長さです。

オーツカ
日本では京都府の丹丘蒸留所が、ステンレスタンクで72時間発酵させたあと、杉製の大桶に移してさらに120時間かけて乳酸発酵させるという二段階の工程を採っていたかな、と思います。それでも合計192時間、8日間です。

伝統的なビール酵母を使い、ウォッシュバックに棲みついた微生物の働きも積極的に取り込むといいます。トロピカルフルーツを思わせる香りや酸味、そして時に手に負えない風味が出てくることを、熟成後の複雑さの種として歓迎するという考え方です。

そして蒸留は薪の直火焚き。効率も予測可能性も明らかに落ちますが、深みと個性のある酒を得るにはこれが最善という判断だと説明されています。熟成にはおとなしいリフィル樽を中心に使い、樽の力で覆い隠さずに酒質そのものを語らせる方針だといいます。

ハウススタイルは1種類に絞り、大麦や季節、そして蒸留器を操作する人間の手つきによって生じる差を、そのまま残すとしています。

ここまで並べると見えてくるのは、収率と再現性という近代の蒸溜所が最優先してきた2つを、意図的に手放しているということです。時間もかかり、歩留まりも悪い。それを承知でやっている。

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古い造りが、そのまま環境負荷を下げる

もう一つ面白いのが、この古風な造りが環境負荷の低減と結びついている点です。

薪直火のウォッシュスチルが蒸溜所の熱需要の大部分を賄い、残りの工程は電力で動かします。

スピリットスチルも電気による直接加熱式です。再生可能エネルギーで運用した場合、ボイラー燃料に灯油を使う同規模の施設と比べて二酸化炭素排出量が94%減るというのが、技術者による試算だとされています。

スコットランドの蒸溜所では、麦汁を煮る熱も蒸留器を温める熱も、灯油を燃やして作った蒸気で賄うのが標準的なやり方です。

つまり94%減という数字は、業界の平均的な設計と比べてこれだけ違うという意味になります。

ただしこの規模で薪焚きと電気加熱のスチルを作った前例がないため、設備の多くを専用に開発する必要があったといいます。安く済む話でも、簡単な話でもありません。

蒸溜所は稼働中の農場にある既存の農業用建物を利用しており、少人数での運営が予定されています。

ビジターセンターもギフトショップも作らないと明言しています。観光収入をあてにせず、酒を造る場所として作った、ということでしょう。

最初に流れ出たニューポットについて、マクレイドは穀物の香りと青草っぽさ、そしてかすかに汗を思わせる癖のある要素があると評し、良い兆候だと述べています。きれいさとは逆方向の評価語を、そのまま長所として口にしているところに一貫性があります。

酵母の菌株や発酵時間はまだ調整中で、樽のプログラムは2027年に予定されています。

当然ながら、飲めるようになるのはずっと先です。それでも今のスコッチが失ったものを名指しして、実際に釜を焚いてみせた蒸溜所が現れたという事実は、10年後に振り返る価値のある出来事になるかもしれません。

オーツカ
歩留まりも予測可能性も投げ捨てる。いいじゃないですか!こういう蒸溜所こそ応援したい。



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