ウイスキー樽の種類、熟成で変わる味の傾向

ウイスキー樽の種類

ウイスキーの味を決める最も重要な要素、それが『樽』熟成です。
もともと樽(カスク-cask-と呼ばれる)はウイスキーの運搬用、貯蔵用に使われていました。
19世紀初頭に、イギリスやアメリカでウイスキー消費が急増したので、蒸留所は仕方なく港に転がっていたラム酒やワイン、シェリー酒の樽を輸送用に使い始めます。うんしょうんしょと樽を運ぶ最中、思わぬ効果に気が付きます。生産者たちは「樽にはタイプがあって、樽によってウイスキーの香味が大きく変わる」ことを見つけたのです。
今回はウイスキー樽にはどんな木材が使われているのか、サイズや形の種類があるのか。そして樽のタイプによって、どんな味の変化があるのかなどをご紹介します。
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木材の種類

ウイスキーの香味に大きい影響を与える樽にはすべてオークの木が使われています。
オークは日本でナラ(楢)の木のことを指します。ナラは高級家具の材料に用いられたり、燻製用のスモークチップや茶の湯の炭にも使わています。
全世界に300種類以上あるオークの木ですが、その中でもホワイトオークとコモンオークという種類がウイスキー樽になるのです。
あまり木材の種類がウイスキーのラベルに表記されることはありませんが、「ミズナラ」を使った樽に貯蔵したものなどは「MIZUNARA CASK」と書かれています。

アメリカンホワイトオーク

北米産のホワイトオークという木材の種類です。バーボンウイスキーやシェリー酒、ワインなどの熟成に広く使われています。ウイスキー産業で使用されている樽の90%がアメリカンオーク製で、バーボン樽に至ってはほぼすべてこの木材で造られています。バニラやカラメル、ハチミツなどの甘いフレーバーとアーモンドやヘーゼルナッツなどの香ばしさをウイスキーに与えると言われています。長期熟成したものにはココナッツミルクのような香味も感じさせます。

コモンオーク(スパニッシュオーク)

ヨーロッパ産オークの二大オークのひとつです。コニャックやブランデー、ワインの熟成に使われています。このコモンオークの中でもスペイン産のスパニッシュオークがスペインワインやウイスキーの熟成によく使われます。タンニン分やポリフェノールを多く含み、熟成感を強調し、甘くて重みのあるフルーティーさを演出します。このスパニッシュオークにシェリー酒を詰めて数年置き、樽空けした後にモルトウイスキーを詰めるという使い方をされます。砂糖漬けの果物の皮やレーズンなどのドライフルーツ、シナモンや松脂のようなフレーバーを与えると言われています。

セシルオーク(フレンチオーク)

このセシルオークがヨーロッパ産オークの二大オークのもうひとつ。フランスのアリエ地区、トロンセ地区、ヌヴェール地区などで多く見られるオークの種類です。ワイン樽やコニャック樽として使われていましたが、スコッチウイスキーやジャパニーズウイスキーの熟成用にも使われます。ややタンニン量が多くスパイシーな香りを与えると言われています。

ミズナラ(ジャパニーズオーク)

日本固有の希少で高価なオークです。水分が多く燃えにくいのでミズナラと呼ばれます。伽羅(きゃら)や白檀(びゃくだん)といわれるオリエンタルな香りをまとうとして世界でも注目されています。いわゆるお香とか、お線香の匂いです。樽の中の成分がにじみ出るまで時間がかかるタイプの木材で、特長を最大限引き出すにはどうしても長期熟成になります。日本の木としてはコナラという気密性の高い種類の木材が使われることもありました。

代表的な樽のサイズ

次に樽のサイズの種類です。樽のサイズによっても出来上がるウイスキーの質は異なります。一般的には樽の容量が小さいほど大きく熟成が進むと言われています。これは樽のサイズが小さいほど、原酒を包み込む樽材との接触面積が大きくなるからです。逆に樽の容量が大きいものは樽の影響が少なく、ゆっくり時間をかけてウイスキーを熟成させるのに向いています。
もちろん大きい樽を使い、じっくりと長時間熟成させることは望ましいですが、原酒不足がささやかれる昨今、小さい樽を使って早期に熟成したウイスキーを出荷するスタイルも流行っています。

バレル・バーレル(barrel)

容量サイズは180リットル~200リットル。うちのサイト名にもなっていますね!(笑)
アメリカンホワイトオークを材料に作らています。一回目はバーボンウイスキーやテネシーウイスキー、カナディアンウイスキーなどに使われ、その空き樽がスコッチウイスキーやジャパニーズウイスキーウイスキーで再利用されています。昔はバーボンを熟成させた後は捨てていたそうですが、20世紀後半からスコッチや日本のウイスキーメーカーによる再利用が始まりました。新樽のバーボン樽は焦げ臭くて生木っぽいのでそのままモルトウイスキーには使えませんが、一度バーボンを熟成させたものはウイスキー熟成にはうってつけだったわけですね。最も多く使用されているタイプのウイスキー樽です。

ホグスヘッド(hogshead)

容量サイズは220リットル~250リットル。
バーボン樽を一度解体し、側板を削り、胴回りをやや大きく組み直した寸胴な樽です。
バーボン樽は輸出の際にバラバラに解体して運ばれました。もう一度組み直す際にサイズを大きくして貯蔵効率を高めるとともに、ウイスキーと樽の接触面積を少なくして木香の影響を弱める工夫から生まれました。250リットル(55UKガロン)が標準サイズですが、スコッチ用は220リットル~250リットル程度まであります。スコッチとアイリッシュのほとんどがこのホグスヘッドで熟成されます。ホグスヘッドとは「豚の頭」の意味で、ウイスキーを詰めた樽の重さが豚一頭分と同じことからこう呼ばれています。

パンチョン(puncheon)

容量サイズは480リットル~520リットル。
アメリカンホワイトオーク、コモンオークでから作られるのが一般的で、シェリー酒の貯蔵に使用された後にウイスキーメーカーに使われます。サントリーでは、近江エージングセラーの自家製樽工場で、柾目の通った北米産ホワイトオーク材だけを厳選し、伝統の技でこのパンチョン樽をつくっています。
もともとビールやワイン用327リットル(72UKガロン)やラム用545リットル(120UKガロン)に使われていました。形はずんぐりむっくりしており、ホグスヘッド樽などと比べるとかなり大きいサイズです。ウイスキーとの接触面積が少ないので熟成はゆっくりと進みます。

バット(butt)

容量サイズは500リットル。
ラテン語で「大きい樽」を意味します。ヨーロピアンオークまたはアメリカンホワイトオークで造られており、シェリー酒の輸送、貯蔵用に使われています。その後、ウイスキーメーカーの手に渡り”シェリーバット”として使われます。ウイスキー生産者がオリジナルで作った樽を持ち込んでシェリー酒を詰め、風味を樽につけるため一定期間保管する場合もあります。この”シェリーバット”がまさにウイスキーの原点と言われ「シェリーウッドタイプのモルトウイスキー」と呼ばれるのです。

その他の樽

有名なのは上記4種類のサイズですが、他にも多くの樽が存在します。
小さいものだと上図の左上にある40リットル程度のクォーターカスクがよく使われます。
ラフロイグやアードモアのラインナップにこのクォーターカスクが使われています。樽が小さく原酒との接触面積が広いので短期間でウイスキーに樽成分を浸透させることが利点です。
バリックという種類はカバランソリストに使われていました。220リットルから~300リットルくらいのワイン熟成用の樽です。
ドラムという種類はバットよりも大きく約650リットル、ポルトガルのポートワインやマデイラワインの熟成用に使われています。ウイスキーでは二次熟成の「ウッドフィニッシュ」に使われることが多いです。
さらに大きいゴルダは700リットルを超える容量を誇り、シェリー酒をスコットランドやアイルランドまで船で輸送するために作られました。

樽の価格は?
あまり知られていませんが、樽にかかるコストは結構なものです。だいたいウイスキーの生産量の15~20%。バーボン樽で6万円~8万円。シェリー樽は9万円~12万円、大きいものだと25万円をゆうにこえるものもあります。最近ではウイスキーの需要が増え、樽が足りなくなってきています。最後の最後まで大切に使用してもらうことを願うばかりです。

1つの樽は何回使用されるのか

さて、上記で樽の価格を書きましたが、樽は一体どのくらい使いまわしできるのでしょうか?
蒸留所にやってきた樽は生涯のほとんどの時間を貯蔵庫の静かで暗い闇の中で過ごします。その胸にはしっかりとウイスキーを抱き、ひっそりと呼吸を続け眠っているのです。ウイスキー樽は蒸留所の方針にもよりますが、樽は4~5回は使用でき、寿命は50年~長いもので70年と言われています。長く使うためには色々な修理を行います。傷んだ側板を交換したり、側板を数本継ぎ足して、バーボンバレルからホグスヘッドに変身させたりしながら使っていくのです。

ウイスキーを初めて詰める樽は「ファーストフィル」と呼ばれます。
ウイスキーを飲んでいるとよく見たり聞きたりしますね。”ファーストフィルシェリー樽”みたいな単語。
これは樽が新品ということではありません。以前にバーボンやシェリーなどを熟成させていた空き樽に初めてウイスキーを詰めることをスコッチではこう呼ぶのです。2度目場合は「セカンドフィル」、3度目は「サードフィル」と呼び、2度目以降は共通して「リフィル」とも呼ばれます。
“リフィルホグスヘッド”と表記してあるウイスキーは、「何回かウイスキー熟成に使われたホグスヘッド樽で熟成していますよ」ということです。

樽材の香味成分の影響が最も強く出るのが最初の「ファーストフィル」。「セカンドフィル」は最初と比べ25~30%の影響度(バーボン樽の場合)、「サードフィル」は10%程度の影響度といったところ。ただし、シェリー樽のほうがバーボン樽よりも香味成分が強いので、影響力は高いと思われます。
つまりめっちゃ樽の影響を受けているのが「ファーストフィル」、ウイスキーがもともと持つ香りや酸化による柑橘風味などを重視している場合は影響度の少ない「リフィル(セカンド、サード)」と覚えておきましょう。

樽で変わる味の傾向

では樽の種類でウイスキーの味はどのように変わるのか。
最近では通常の樽熟成の後に種類の違う樽に詰め替えて、その樽の風味を付与する「ウッドフィニッシュ」と呼ばれる手法も増えています。
ウイスキーのラベルに「●●フィニッシュ」とか書かれていますよね。アレです。2種類、または3種類の樽の個性が融合して複雑な風味を出すことで人気です。

ウッドフィニッシュ
ウッドフィニッシュの期間は銘柄にもよりますが数か月~2年間程度が多いです。
同一銘柄でもこのフィニッシュする樽によって全然味が変わったりするので、そのフレーバーの傾向をご説明します。

シェリー樽(カスク)の種類

シェリーワイン樽

これまでシェリー、シェリーと普通に書いてきましたが、そもそもシェリーを知らない方もいますよね。
シェリーとはスペインのアンダルシア地方へレス周辺で造られている白ワインの一種です。シェリーは英語読みでスペインでは「へレス」と呼びます。
食前、食中、食後に飲めるオールマイティーなお酒です。シェリー酒と呼ばれることもあります。
シェリーは劣化や酸化のリスクを防ぐために「酒精強化」という製造法をとっています。白ワインはアルコール度数が15%以下が通常です。長期間保存するとお酢になっちゃったりするんですね。なのでシェリー酒は日持ちするようにブランデーなどブドウ由来のアルコール度数の高いお酒を加えることで15%以上のアルコール度数に増すことをしています。ウイスキーに使われるのはこのシェリーを一旦詰めた後の空き樽です。つまりシェリーの味を熟成中に沁み込ませるということです。ではシェリーにはどんな種類があるのか見ていきましょう。

フィノ(フィノシェリーカスク)

透明で辛口、軽い口当たりで後味さっぱり。シャープで繊細、アーモンドのような香りのするシェリーがフィノ(Fino)です。カバランやグレンファークラス、キルホーマンなどの銘柄からもリリースがあったかと思います。
ちなみにフィノにとっても似ているマンサニージャ(マンサリーニャ)と呼ばれる種類もあります。やや塩っぽさがありカモミールのような香りもします。こちらもカバランの銘柄にありましたね。

オロロソ(オロロソシェリーカスク)

白でも赤でもない、ビールで言うとスタウトのような濃い琥珀色やマホガニー色をしています。非常に香り高い辛口の古酒です。フルボディでクルミを思わせるフレーバーと木樽の良い香りを持つ満足度の高いシェリーがオロロソ(Oloroso)です。ウイスキーに熟成感、コク、深い余韻を与えます。グレンリベットやグレンモーレンジィ、アベラワーなど非常に多くのスコッチに利用されています。

モスカテル(モスカテルシェリーカスク)

モスカテルのモスカは英語のモスキート(蚊や羽虫)の語源で、虫が寄ってくるほど甘い香りがするからと言われています。色は濃い黄金色をしており、フローラルでグレープフルーツのような柑橘系の香りを纏っています。非常に甘口で凝縮した糖を感じさせるシェリーがモスカテル(Moscatel)です。シングルモルト余市や宮城峡が限定本数でモスカテルウッドフィニッシュを出していました。マスカットのようなフレッシュな香りとドライレーズンのような甘さが印象的でした。

PXカスク(ペドロ・ヒメネスカスク)

シェリーの中では最も濃い色をしており、グラスに注ぐと向こう側が全く見えないくらいの濃い茶褐色をしています。干しブドウを原料に使い、長期熟成することにより極甘口でソフトでなめらかな口当たりなのがペドロ・ヒメネス(Pedro Ximenez)です。貴腐ワインやアイスワイン以上の糖度を持つものも多く、食後のデザートや料理のソースなどとしても使われます。ラフロイグやベンリアック、ラガヴーリンなどがこのペドロヒメネス(PX)カスクを使ったラインナップを出していますね。

マデイラ・ワイン

マデイラワイン樽

シェリーと並び称される、ポルトガルのマデイラ島で造られている世界三大酒精強化ワインのひとつ。辛口のセコから中辛口のメイオ・セコ、中甘口のメイオ・ドセ、甘口のドセと甘さが4種類あるのが特徴で辛口のものは冷やして料理と合わせ、甘口は食後にゆっくりと飲むイメージです。ウイスキー樽に使われる場合は、細かい種類を表記したボトルは少なく、『マデイラワインカスク』とか『マディラワインフィニッシュ』などとまとめられています。
グレンモーレンジィのバカルタやエドラダワーミントやシトラスのような香りと、シロップのようななめらかさ、メントールやユーカリのような後味を与えると言われています。

ポート・ワイン

ポートワイン樽

シェリーと並び称される、ポルトガル北部のポルト港から出荷される世界三大酒精強化ワインのひとつ。酒精強化ワインの中でもアルコール度数は高く、濃厚な甘味が特徴です。ポートワインは主に三種類に分かれており、「ルビーポートワイン」「トゥニーポートワイン」「ホワイトポートワイン」です。ウイスキーでよく使われるのはこのうちの「トゥニーポートワイン」。カシスのような香りと甘味、熟成感が強くなり粘性を帯びると言われています。グレンモーレンジィのキンタルバンというウイスキーはルビーポートワインを使っていました。こちらはタンニンの酸味と渋みが強かった印象があります。

マルサラ・ワイン

マルサラワイン樽

シェリー、マデイラ、ポートに加え、このマルサラワインを含めて世界四大酒精強化ワインと呼ぶこともあります。イタリアのシチリア島西部に「マルサラ」は存在し、ここで作った白ワインにブランデーやワイン蒸留酒、ミステッラ、モスト・コットを添加し、オーク樽で熟成させます。熟成期間が1年のものはフィーネ、2年のものはスペリオーレ、4年のものはスペリオーレ・レゼルヴァ、5年のものはヴェルジオ、10年となるとヴニルジネ・ストラヴェッキオと呼ばれます。木の香りやカラメル、焼いたパン、柑橘系果実にハチミツと非常に豊かなアロマの酒精強化ワインです。本場イタリアのティラミスにも使われています。グレンドロナック、キルケランなどのラインナップにこのマルサラの樽が使われていました。

ワイン樽(カスク)

上記4種類の酒精強化ワインではなく、一般的なワインを指します。ワインカスク、赤ワインカスク、白ワインカスクなどと表記されるものです。レッドワイン、ホワイトワイン、ワインカスクブレンドと表記するものもあります。
赤ワインの樽がフィニッシュに使われていることが多く、しっとりと赤色を付けます。ボディを分厚くする意図が強くウイスキーの味に重厚感をプラスします。いわゆる”リッチ”などと表現されるやつですね。長く赤ワイン樽に入れていると、タンニンの渋みやペタッとした舌ざわりなども反映されると思います。

バローロカスク

バローロはイタリアを代表する高級赤ワインのひとつ。渋み酸味が強く重厚なコクが印象的なワインです。色調はガーネット色、長期熟成されたものは果実感よりもやや乾いたイメージになります。「バローロカスク」や「ガヤ・バローロカスク」といった名称でスプリングバンクやヘーゼルバーンなどに使われていました。ちなみにイタリアにはガヤ・ワイナリーという醸造所があり、バローロやバルバレスコといった有名な赤ワインを造っています。

バーガンディカスク

こちらはバーガンディという名のワインがあるわけではなく、ブルゴーニュワインの樽のことを指します。フランス東部のブルゴーニュ地方特産のワインで渋味が少なく、すっきりした酸味があり、香り高いのが特徴です。スプリングバンクからリリースされたバーガンディカスク12年はフィニッシュに使われるのではなく最初から12年間ブルゴーニュのワイン樽で熟成させた珍しいタイプのウイスキーでした。

ソーテルヌカスク

「ソーテルヌ」はフランスボルドー地方にあり、世界最高の甘口ワイン(貴腐ワイン)の産地として知られています。貴腐葡萄から作られる甘口の白ワインで、深い黄金色と複雑な風味が特徴です。甘さはもちろん、果実味や酸味を特徴としていてレモンや梨、白桃、アプリコットやパイナップルのようなアロマを感じます。アランやキルホーマンのラインナップにこの樽が使われました。レモンっぽさととろみのあるフルーツの風味が足されるイメージです。

ポムロールカスク

アランやシックスアイルズなどのアイランズ系でしか見ない印象のポムロールカスク。「ポムロール」地区はボルドー地方のワイン産地のひとつで、その生産規模は小さく希少価値があります。熟したプラムの芳醇な香りを持っており、渋みと酸味が豊かで口当たりは柔らかく、コクのあるワインです。ほとんどが4年~7年で飲み頃となる早熟タイプです。ウイスキーにはベリー系、プラム系のニュアンスが足される印象ですね。

アマローネカスク

バローロと同じくイタリアで造られる赤ワインで、貴族しか味わうことができなかった時代もあるほど、希少かつ高級なワインです。味わい、香り、色、すべてのおいて濃厚で重厚。粘性が高くチョコレートのような苦みとスモーキーな苦みを感じさせます。こちらもアランのアマローネカスクしか見たことないですね。アランは色々なカスクフィニッシュを行っているのでこういった高級樽路線はお手の物といったところでしょう。

ビール樽

ビール樽のフィニッシュ

ビールの樽で熟成したウイスキーも昨今出てきています。
スイス産シングルモルトの「サンティス ドレイファルティケイト」などがこれに当たります。IPAカスクを使った例としてはイチローズモルト 秩父 IPA カスク・フィニッシュ などがあり意外にもフルーティなニュアンスが強かったのが印象的でした。ジェムソンのカスクメイツはスタウトビールの樽が使われており、カカオやコーヒーのようなビターな風味がありました。どれもうっすらとビールのホップを感じる出来になっています。逆にビールをウイスキー樽で熟成させるのも流行ってますね。アメリカやヨーロッパのクラフトビールシーンでは、ウイスキーやワイン樽で熟成した「バレルエイジ」というビールも次々に誕生しています。

ラム樽

ラムカスクフィニッシュ

ラムはラム酒のこと。サトウキビの廃糖蜜やしぼり汁を原料とした蒸留酒で西インドを原産地としています。お菓子作りにもよく使いますね。ラムレーズンとか。色での分類(ホワイトラム、ゴールドラム、ダークラム)や風味による分類(ライトラム、ミディアムラム、ヘビーラム)などがあり製法も様々です。カラメルを焦がしたような苦みと甘い味。まとわりつくような甘い匂いも特徴です。ウイスキーで表記されるのはラムカスク、ラムフィニッシュ、カリブラムを用いたカリビアンカスクなどが多いかと思います。
グレンフィディックやバルヴェニーをはじめ、インドのアムルット、アイリッシュではウエストコークなどに使われています。

その他樽(カスク)

他にもコニャック樽やカルヴァドス樽を使ったものも存在し、焼きリンゴやシナモンのような香り、ポン菓子やキャンディのようなフレーバーをつけます。あまりお目にかかりませんが、テキーラ樽を使ったウイスキーなんてのも存在します。
ちなみに、「プライベートカスク」「プライベートセレクト」と表記されるものもいくつかありますが、これは蒸留所のオーナーや生産者が独自に選び抜いた樽を指すことが多いようです。希少性が高く、価格は上がる傾向です。

マリッジとダブルマリッジ

マリッジとダブルマリッジ

「ウッドフィニッシュ」以外にも、熟成後のふたつのお酒をブレンドして更に樽に戻して熟成させる「マリッジ」と呼ばれる手法があります。ウイスキー初心者の記事で特集したフロム・ザ・バレルなどがそれに当たります。さらに、一度マリッジしたウイスキーをさらにブレンドして樽熟成させる「ダブルマリッジ」などもあり(ホワイト&マッカイetc)、生産者達は日々研究しウイスキー熟成の研鑽を積んでいます。

樽熟成は神秘

昨今、樽で熟成する技法はより活発になっています。UD社のクラシック・モルト・ダブルマチュアード・シリーズをきっかけにシェリー樽の細かい種類までボトルに明記されるようになりました。グレンモーレンジィのシェリー、マディラ、ポート樽を巧みに使った樽熟成シリーズなどはもはや定番です。これからもどんどんと樽の種類は増えていくことでしょう。
刺激が強く荒々しいウイスキーを数年~30年寝かせることによりまろやかで美味しいものに変化させる樽熟成。
その熟成の秘密は科学的に解き明かされていない部分が多く、謎に包まれています。
その神秘に触れながらウイスキーをじっくりと味わっていきましょう。

最後に書籍をご紹介

より詳細な樽の情報を知りたい方には以下の書籍もおすすめです。もっと樽熟成を知りたいと思っている方は是非読んでみてください。

ウイスキーの樽熟成を知るための本

樽とオークに魅せられて
著者の加藤氏は島根農科大学農学部を卒業後、サントリーに入社。以来ウイスキーの樽一筋50年を超える世界指折りの樽研究家。樽材とオークとどんぐりを求めて、世界各地のオークの森を駆け回っています。ワイン樽やウイスキー樽の考察はもとより樽の作り方やオークの種類カタログ、ラストには縄文時代まで遡り、オークと文明にまで言及しています。まさに樽に人生を捧げた樽ニスト。オークへの愛情がほとばしる一冊です。オールカラーで写真も豊富、読みやすいのでおすすめです。何故か装丁の帯にダウンダウン浜ちゃんがコメントを寄せています。樽って凄いねんなァ!
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ウイスキーの科学(最新版)
こちらの著者、古賀氏もサントリー中央研究所にてウイスキーの貯蔵、熟成の研究に携わった方。大学は東京大学理学部。つまりかなり科学的なアプローチを得意としています。どのようにしてウイスキーが生まれ、なぜ魅力的な香味を放っているのか?そして私たちに何を語りかけているのか?を主題とし、ウイスキー製造の各工程で待ち受ける謎をひとつずつ解き明かしていきます。そしてこの記事でも書いた「樽熟成」を科学的に分解します。読了にはかなりのエネルギーがいる一冊ではありますが、読み終えた後にはウイスキーへの考え方が少し変わる程のインパクトがあります。
詳細はこちら

Sherry – Unfolding the Mystery of Wine Culture
インパクトのあるイエローの装丁が美しい、日本におけるシェリーのパイオニア中瀬氏の一冊。シェリーの生い立ちやその歴史的背景はもちろん、大航海時代~現代に至るまでの変遷を克明に描いています。シェリーの種類や味の傾向などもわかりやすく書かれており、製法や他のワインとの違い、飲み方や料理とのマリアージュなどなどシェリーづくしのマニアックな内容になっています。マニアックといえど嫌味なところはなく、読みやすいです。ウイスキーとシェリーの関係についても言及しており、シェリーが歴史的にどうウイスキーと交わっていったのかがよくわかる内容となっています。
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ABOUTこの記事をかいた人

オーツカ

BARREL編集部代表。インテリアと猫が好きな筋肉質。ウイスキーを飲んでいる若者が周りに少ないと思ったので、BARRELを立ち上げました。いつでもウイスキー初心者の味方になりたいと思っています。 ウイスキー業界×インターネットで色々したいですね。