ウイスキーの現行品とオールドボトルの味の違いを考える

グレングラントオールドボトル
オーツカ
では前回に引き続き、オールドボトルについて聞かせてください。

よく「オールドボトルのほうがうまい」という意見を聞きますが、ビギナーさんは「?」な部分も多いと思います。

過去の原料、製造方法、予算(人員?)のかけ方などの側面も含め、現行品とオールドの違いを教えて下さい。

古谷さん
オールド至上主義は個人的に好みではありませんが、蒸溜所によっては、明らかに現行品と異なる品質のボトルが存在します。

僕がわかる範囲でお答えしていきますね。

 

オールドボトルの味の違い①未開封の瓶内でも変化が起きている?

ウイスキーを開封すると、アルコールが揮発し、アルコール臭と呼ばれる独特の香りが弱くなります。

棘が取れるなんて言い方もしますね。

そのためウイスキー本来の香りを強く感じられるようになり、飲みやすくなります。

これはオールドボトルにも現行品にも言える事です。

では、未開封の品ではどうでしょうか?

 

たとえば

A:現行品を出荷直後(発売日)に購入。開栓し1年間かけて飲む。

 

B:現行品を出荷直後(発売日)に購入。管理がしっかりしている場所で10年間保管。開栓し1年間かけて飲む。

 

A、Bともに開栓してから1年間かけて飲む事は同じですが、Bは10年間保管した状態から飲み始めています。

瓶に詰められた直後でも、ボトルには少しだけ空気が入ります。およそ3センチほどですが、キャップとウイスキーの液面に空気と触れ合うところがありますね。

Bに関してはこの微量の空気を内包した状態で10年間保管されているので、本当にゆっくりとですが少しずつ味が丸くなると予想されます。

未開栓の状態でもかなりゆっくりではありますが、少しずつ変化が起きていると僕は思っています。

オールドボトルの味の違い②時代によって異なる原酒配合バランス

さらにボトリングされた時代によって原酒の配合バランスが違います。

「オールドボトルの10年物」は10年以上熟成した古酒(15年、20年、30年など)のブレンド量が多く「現行品の10年物」は古酒の量が少なめです。

このため同じ10年物を比べても、多くの熟成品がブレンドされているオールドボトルの方が複雑でレイヤー構造のある風味を感じさせることが多々あります。

現行品に古酒の量が少なめなのは、古酒の枯渇です。

現在の古酒不足は深刻で、潤沢に古酒が使えないという状況でもあります。

各メーカー、各蒸留所とも、この状況は深刻に考えており、しっかり将来のことを見越している蒸溜所は計画的にボトルの販売量を絞っています。

たとえば2014年にアデルフィが創業したアードナムルッカンなどは7年間大きなリリースはしない予定のようです。

オールドボトルの味の違い③原材料が品質の差にもなっている?

オールドボトルと現行品の味の差には、麦の品質も関係しているのではないかと考えられています。

麦は時代と共に糖度を増す品種改良がなされてきました。

糖度を上げると、アルコールを発生させる力が強くなるのです。

アルコールを大量発生させれば当然生産量が増えるので、コストカットになります。

効率よくアルコールを発生させるために糖度をあげていったのですね。

 

しかし、糖度が上がった割に、麦の粒の大きさにそれほど変化があるわけではないので、糖の部分のみが肥大していると考えられます。

つまり糖度が増えた分、本来存在していた他の成分が失われたのではないかと思われているわけです。

この失われた成分がオールドボトルと現行品の味わいの差なのではないか?と考えられています。

現代では、過去の麦の品種を栽培し、それを使用したウイスキー造りを試みている蒸溜所もあります。

その結果が出るのはまだまだ先だと思いますが、楽しみですね。

是非オールドボトルを飲んでみてほしい銘柄

現行品とオールドボトルを比べるにあたり、今まで蒸留所名を出していませんでしたが、個人的に是非比べてみていただきたい銘柄があります。

恐らくは現行品で最も印象が違うのがシングルモルトの代表格「マッカラン」です。

シングルモルトのロールスロイスと称されて久しいマッカラン。

現行品のマッカランはどこのBARでも「初心者が飲むシングルモルトの代名詞」的な扱いになっていますが、オールドボトルのマッカランは12年物でも非常に熟成感が強く、濃厚で華やか、まさにラグジュアリーと呼べる高級感のある逸品でした。

車で例えるならとてもじゃないですが、免許取りたての初心者におすすめする車種ではありません。まさに玄人向けのロールスロイスと呼んで差支えのない風格でした。

本来、ロールスロイスを乗りこなすためには知識や経験、熟練度が必要であり、その性能を最大限に高めるスキルがあればこそ楽しめるのです。

現行品のマッカランは初心者でも乗りこなす事が出来る「軽自動車」という体裁になっているので、ロールスロイスと呼ばれていることには違和感を覚えます。

オールドボトルは時間をかけて楽しもう

オールドのマッカランは初心者がいきなり飲んでもなかなか「美味しい!」とは感じられないかと思います。

その熟成感をしっかりと味わうには、適切なグラスを用意して、その香りが開くまで時間をたっぷりかけてストレートやトワイスアップなどで飲むのが適正です。

オールドのマッカランのポテンシャルを引き出すと、初心者の方でもびっくりするくらいの変化を味わう事が出来ます。

 

以前のページでお話した長期熟成品と同じく、オールドボトルも現行品よりは飲み方の幅がだいぶ狭いです。

水割りやロック、ハイボールで飲んでも当たり前に美味しいですが、その繊細な香味が多量の加水に負けてしまい、ただ飲みやすいだけになってしまうこともありますので注意しましょう。

 

オールドと現行品では様々な違いがありますので、過去の評価を鵜呑みにするのではなくまずは自分の舌で好みのスコッチを探して欲しいなと思います。

 

 

オーツカ
原料の考察は面白いですね。

今度はゲストに麦の専門家をお呼びして聞いてみようかな(笑)

古谷さん
これまたマニアックですね。
オーツカ
オールドボトルって飲んでみたいなぁとは思いますけど、初心者の方がBARで頼むにはなかなか勇気いるかと思います。金額ってワンショットどのくらいと決めてるんですか?
古谷さん
希少性の高いものは当然価格が上がりますね。昔は年数×100円がワンショットの値段と言われていました。20年物ならワンショット2,000円。
オーツカ
それ以上の金額であれば、何かプレミアムな価値が乗っかっているというわけですね。
古谷さん
お客様のお好みや予算を伝えていただければ、レモン・ハートはもちろん、どこのBARでもオールドボトルを吟味してご提供していただけると思います。

どんどん好みを伝えてみるのがよいでしょう。

オーツカ
好みの伝え方のポイントとかってありますか?
古谷さん
まずは飲み方と、おおよその金額、そして飲んでみたい香りや味わいでしょうか。

そのあたりのイメージが伝えられない方は、「あっさりしている」や、「重厚感がある」くらいの表現で構いません。

まろやかさや、個性の強さなども抽象的でよいので教えていただければ、バーテンダーもそれをヒントに考えて歩み寄れると思います。

 

オーツカ
なるほど!

今回もありがとうございました。

では、お決まりの告知です。

古谷さん
レモンハートの新刊出ましたー。みなさん是非お酒のお供にどうぞ。

オーツカ
あとレモン・ハートは2018年8月にオンラインストアをオープンしたんですよね。

一発目のオリジナル「クライヌリッシュ1997」良かったです。

今後も秀逸なオリジナルボトルも続々追加していくようですので、みなさん是非のぞいてみてくださいね。

ABOUTこの記事をかいた人

オーツカ

ウイスキーをもっと身近に感じてほしい。小難しいウイスキーの世界を分解して、わかりやすく整理する「ウイスキーオーガナイザー」です。 まだあまりウイスキーを知らない人がウイスキーを好きになる「きっかけづくり」をできればと思っています。 日本最大級のウイスキーメディアBARRELを企画、運営、編集及びカメラマン、さらには執筆もしています。