キャンベルタウン・モルト・ウイスキーとは?/味の特徴や飲み方、種類やおすすめ銘柄をご紹介

キャンベルタウン・モルト

どうも、オーツカです。
今回はスコットランドのキャンベルタウンの解説をしていこうと思います。
ハイランド、スペイサイド、アイラ、アイランズに比べると、小さい土地ですがスコッチを語る上では欠かせないエリアです。

キャンベルタウンってどこにあるの?

キャンベルタウンはスコットランドの南西、キンタイア半島の端っこにひっそりとある都市です。
このあたりは『アーガイル地方』といい、セーターやベストのデザインで定番の、『アーガイル柄』(下図のような格子状のチェック柄)の語源ともなっています。
“キャンベルタウン”の名前はこの地方の氏族だったキャンベル家(キャンベル・オブ・アーガイル)にちなんでいるとされています。

キャンベルタウンは北米からの海上輸送の拠点としてとても立地がよく、大西洋に向かう船の寄港地として栄えました。
1900年代前半にはウイスキー産業を中心に、漁業、造船業、農業、炭鉱が発達。
栄華を極め、スコットランドで一番お金持ちが住んでいる町として有名となりました。

しかし、今ではこれらの産業は完全に衰退し、”陸の孤島”と呼ばれています。
現在の人口は5,000人を割り、観光業が中心の町となりました。

栄光と挫折のキャンベルタウンモルト

最盛期には30以上の蒸留所で栄えたキャンベルタウン

出典:http://www.campbeltownheritagecentre.co.uk/bg/campbeltownmodellarge_sepia.jpg

最盛期には30を超えるのウイスキー蒸留所が存在し、スコットランドではハイランドに次ぐ規模を誇っていたキャンベルタウンは、なぜ衰退してしまったのでしょう。

栄光の時代をつくった3つの理由

まず19世紀にキャンベルタウンがウイスキーの都として栄えた理由は大きく3つ。
①ウイスキーの原料となる大麦、燃料となる石炭が多く取れたこと。
②良質で豊富な水源があったこと。
③グラスゴーやイングランドへの輸送地として優れた港だったため。
このように生産から物流まで非常に合理化されていたわけですね。儲かるわけだー。

衰退の原因となった4つの理由

しかし20世紀になるとこの優位性は急速に失われます。
①第一次世界大戦が起こり、増税、禁酒運動、大恐慌などの社会的要因。
②生産の規模を拡大しすぎて原料や燃料が枯渇してしまったこと。
③輸送手段が海上から陸上、空路へと変わり、輸送面の強みがなくなってしまったこと。
④調子に乗って粗悪なウイスキーばかりをアメリカに出荷してたら嫌われてしまったこと。
などが挙げられます。
特に④のブランド力の低下。
キャンベルタウンの多くの蒸留所はアメリカへ大量にウイスキーを密輸して儲けていました。
当時のアメリカは禁酒法時代。ウイスキーの需要は高かったわけですね。
1933年に禁酒法が解け、ウイスキーが今までの価格では売れなくなります。
しかしそれでもウイスキーを売ろうと、どんどん価格を下げ、品質を落としていき、キャンベルタウンのウイスキーのクオリティと評判は落ちていきました。これによりキャンベルタウン最大のウイスキーマーケットであったアメリカを失ってしまったのです。

余談ですが、キャンベルタウンで最大の規模を誇った『ヘーゼルバーン蒸留所』ではかの竹鶴政孝氏が研修をしています。
ここでスコッチを学んだんですね。
なお、ヘーゼルバーン蒸留所は1925年に閉鎖しています。

兵どもが夢の跡。残った蒸留所はたった3つ。

現在操業しているウイスキー蒸留所はスプリングバンク蒸留所、グレンスコシア蒸留所、そして2004年に80年ぶりに再オープンしたグレンガイル蒸留所の3つ。時代に流されることなく、粘り強く品質を守り続けたこの蒸留所達はかつての輝きを取り戻すべく奮闘しています。

キャンベルタウンモルトの味や香りの特徴は?

ピート香がありますが、アイラ・モルトほどではありません。
一番の特徴は『ブリニー』と表現される塩辛さ
港町で育ちました!と言わんばかりの潮の香りを含んだ爽やかな塩あじがウリです。
香り高くボディも厚め。トロリとオイリーで、重みがあります。
一杯で満たされる。満足度が高いウイスキーといった印象です。

代表的な蒸留所とその銘柄をご紹介

スプリングバンク蒸留所

是非、ウイスキービギナーのうちに体験していただきたい銘柄です。
1828年創業のスプリングバンク蒸留所は伝統の製法にこだわり続け、暗黒の時代を乗り越えてきました。
その伝統の製法とは”フロアモルティング”と呼ばれ、床の上で大麦を発芽させる非常に手間のかかる自家製麦を行っています。
このフロアモルティングは小規模で生産性は低いですが、土地ならでは特徴的な味が表現できるのです。

まずはスタンダード品のスプリングバンク10年を飲もう

スプリングバンク10年

「モルトの香水」とも称されるスプリングバンク10年は、レモンやグレープフルーツを想像させる柑橘系の香りがします。
口に含むとオレンジマーマレードとハチミツの風味。
そして最後にブリニーと呼ばれる特徴的な塩辛さ。
スイートでフルーティな香りは、加水することでより華やかになります。
香水と例えられるのも納得の気品ある香り。
ちょっと気の強い女性を連想させる匂いなんですよねぇ。

15年、18年、21年などを飲みましたが、熟成年数が増すほど深みが足され、レーズンやチョコレート感が強くなる印象です。
シェリー樽原酒がふんだんに使われているのも要因のひとつでしょう。ただ、カルト的な人気を誇る蒸留所なので超熟モノはどれも値が張ります。

ピートを効かせたロングロウ

ロングロウ

スプリングバンク蒸留所ではピートの使用量と蒸留の回数を変えて3つのラインナップをつくっています。
そのひとつが、元々キャンベルタウンにあったロングロウ蒸留所の名前を冠した銘柄「ロングロウ」。
ピートを48時間炊き続け乾燥させたフェノール50超えの麦芽を使い2回蒸留で仕上げるヘビーな逸品です。
強烈なピート香がありますが、とても甘くクリーミーです。
薬品に漬けられたカスタードプリンのような味わいですね。

ピートを使わないヘーゼルバーン

ヘーゼルバーン12年

こちらも元々キャンベルタウンにあったヘーゼルバーン蒸留所の名前をつけた銘柄です。
上にも書きましたが、竹鶴政孝氏が修行した蒸留所としても有名ですね。
ピートを焚かないノンピート麦芽を使用し、3回蒸留で仕上げたライトな逸品です。
年に一回しか生産されてない限定アイテムで、毎回リリースが少ないです。
金柑ジャムとイチゴジャムを混ぜたような香りがし、酸味とほろ苦さを感じさせます。
遅刻してしまった朝に「もう、焦っても仕方ないか」と腹を決め、焼いた食パンにマーガリンとイチゴジャムをダブルで塗って食べたような味がします。
リラックスしながらスイスイ飲めるウイスキーです。

グレンスコシア蒸留所

グレンスコシア蒸留所が誇るグレンスコシア ダブルカスク

蒸留所の所有者がコロコロ変わり、なかなか安定してウイスキーを生産できないグレンスコシア蒸留所。
不定期の操業で日本にあまり商品が入ってきません。
ここ数年で蒸留所の改修が行われ、ラインナップも増えました。
残念ながらオーツカはグレンスコシアのダブルカスクという銘柄しか飲んだことはありません。
香りはかなり甘いです。キャラメルポップコーンのような甘く香ばしい匂い。
味はキャンベルタウンモルトらしい塩辛さを感じました。
ボトルのデザインは前回より好きです。

グレンガイル蒸留所

グレンガイル蒸留所が誇るキルケラン

スプリングバンクの姉妹蒸留所として2004年に復活オープンしたグレンガイル蒸留所。
原料はスプリングバンクでフロアモルティングされた麦芽を使っています。仕込み水も同じです。
送り出すシングル・モルトは「キルケラン」
本来、蒸留所名と同じ「グレンガイル」を名乗りそうなもんですが、他の蒸留所が「グレンガイル」の名称を商標登録しており使用できないことから、地元の聖人セント・ケアランの教会を意味する「キルケラン」から命名しました。
2016年には12年ものがリリースされましたが、個人的にこの12年は姉妹蒸留所のスプリングバンク10年より完成度が高いように思えます。
バニラクッキーの匂いから始まり、ライムやレモンピールのような柑橘系の酸味、非常に多彩で複雑な香りです。
味はキャンベルタウンらしい、しっとりとしたピート香に塩気。
飲み方もストレート、ロック、ハイボールどれでも美味しいと思います。

ラベルには蒸留所の窓から見える教会が描かれています。
基調となるパッケージデザインは同じながらラインナップごとに背景色に変化があり、ペールトーンで彩るレトロなグラフィックスは非常に好感度が高いです。
古書と一緒に本棚に並べたくなるいいデザインだなぁ。

キルケランのラインナップ

まとめ

キャンベルタウンはウイスキー産業の光と闇に翻弄され、栄光と挫折を経験した港町でした。
そこで造られるスコッチウイスキーはブリニーと表現され、塩辛く気品ある味の力強いウイスキーです。
蒸留所は10分の1以下にまで激減してしまいましたが、時代の変遷を生き抜いた蒸留所達は創業以来一貫して伝統の味を守り続けています。
その頑なな力強さは、生み出されるウイスキーに息衝いています。
これからもキャンベルタウン・モルト復興のために職人たちが流す汗と涙は”ブリニー”と称えられることでしょう。

ABOUTこの記事をかいた人

オーツカ

ウイスキーをもっと身近に感じてほしい。小難しいウイスキーの世界を分解して、わかりやすく整理する「ウイスキーオーガナイザー」です。 まだあまりウイスキーを知らない人がウイスキーを好きになる「きっかけづくり」をできればと思っています。 日本最大級のウイスキーメディアBARRELを企画、運営、編集及びカメラマン、さらには執筆もしています。

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