カナディアンウイスキーとは?/特徴や飲み方、種類やおすすめ銘柄をご紹介

カナディアンウイスキーとは

世界五大ウイスキーのひとつに数えられる「カナディアンウイスキー」。
日本でウイスキーと言えば国産のものをはじめ、スコットランドやアメリカのものが多く飲まれており、カナダ産はあまり目立たないといった印象です。
しかしその生産量はスコッチに次ぎ、世界第二位。とても人気の高いウイスキーなのです。
今回はそのカナディアンウイスキーの歴史や特徴、代表的な蒸留所とそのおすすめ銘柄をご紹介していきます。

カナディアンウイスキーってどんなウイスキー?

どこで生まれたの?

カナディアンウイスキーが生まれた土地

いわずもがなカナダです。
カナダは日本の27倍、998万km2もあります。ロシアに次いで世界2位の大きさを誇ります。でかいですね。

カナダと言えばビール造りが有名なのですが、17世紀後半にビールを造っていた醸造所に、蒸留の装置が併設されウイスキーの生産が始まったとされています。
18世紀に入るとオンタリオ州の五大湖周辺で蒸留が行われるようになり、徐々に活性化。
そして1776年以降、アメリカの独立戦争の後くらいからウイスキー産業は本格化していきます。
アメリカが独立に沸いていたその頃、独立に批判的なイギリス系農民がカナダに移住して、そこでライ麦や小麦などの穀物の生産(製粉業)を開始します。製粉業界は発展し、穀物が大量に余りました。この余った穀物を使ってウイスキーを作る人がドシドシ増えてきます。ケベック、モントリオールなどの地域では製粉業から蒸留だけを専門に行う業者も現れ、カナディアンウイスキーは発展します。

アメリカ禁酒法時代に爆上げ!

アメリカ禁酒法時代

さらに生産が加速したのは1900年代。
1920年~1933年までアメリカで施工された「禁酒法」により、アルコールの製造、販売、輸送が全面的に禁止されてしまいます。それまでアメリカ人は自国のアメリカンウイスキーと輸入したアイリッシュウイスキーを飲んでいましたが、急に飲めなくなってしまったのです。
カナダは隣国だったため、ウイスキーを調達できなくなったアメリカの密造業者が、ここぞとばかりに集まります。そしてカナディアンウイスキーの樽を求め、次々と国境を渡ったのでした。この当時のカナダは「アメリカのウイスキー庫」とまで呼ばれ、大量のウイスキーを製造しました。莫大な富を築き、一気にアメリカの市場を掌握します。
当時オンタリオ州だけでも200か所を超える蒸留所があったと言われており、カナダの国家収入の3割近くがウイスキー産業によってもたらされたという試算もあります。まさにカナディアンウイスキーバブルですね。

禁酒法改正後も、アメリカ産のウイスキーは生産が軌道に乗るまで時間がかかり、なかなか市場に出回りませんでした。そのためカナディアンウイスキーがバンバン飲まれ、評価を上げていきます。この頃はカナディアンウイスキー自体の品質も上がり、多くのアメリカ人がカナディアンウイスキーを支持するようになります。
巨万の富を持って、カナディアンウイスキーは世界に進出します。ハイラム・ウォーカー社とシーグラム社がその双璧で、アメリカの蒸留所やスコットランドの会社を買収し、一大国際企業となっていくのです。

衰退の時

しかし栄華は長くは続きません。
カナディアンの全盛期は1970年代まで。1980年代以降は衰退していきます。
衰退の原因は、カナダ国内の厳しいアルコール規制と、世界的なハードリカー(蒸留酒)の低迷です。カナダはアルバータ州を除くほとんどの州でアルコールの販売が規制されています。酒屋はすべて州が運営することとなり、価格の自由競争は存在しなくなりました。ウイスキーボトル一本の価格の83%が税金というとんでもない状態。かつてのアメリカの禁酒法を超える、厳しい税収です。
ちなみにお酒を売っているのは州立の「LCBO」と呼ばれるショップ(上記の写真がその建物です)
全ての酒類がここで管理されており、日本のようにスーパーやコンビニにはお酒類は置いていません。

ただし最近は売上も上がり、復活の兆しを見せています。国外への輸出を積極的に行っており、カナディアンウイスキーの生産量の約7割がアメリカで消費されています。
現在は蒸留所の多くがカナダ以外の外国企業となっていますが、独立系のマイクロディスティラリーも近年急増しています。

どんな種類があるの?

カナディアンウイスキーには「フレーバリングウイスキー」と「ベースウイスキー」なるものの2タイプの原酒が存在します。
この2つをブレンドしたものが”カナディアンブレンデッドウイスキー”、いわゆる「カナディアンウイスキー」です。(カナディアンのほとんどがこのブレンデッドです。)

カナディアンウイスキーの種類

樽での熟成はだいたい3~4年のものが多く、両者別々に貯蔵して、熟成した後にブレンドを行いますが、原酒の段階でブレンドして、それを樽詰めして熟成させる”カナディアンクラブ”という商品も存在します。稀にフレーバリングウイスキーのみで出荷される珍しいものもあります(ブッシュパイロットなど)。

“カナディアンウイスキー”を名乗る条件

カナディアンウイスキーの法律上の定義を簡単に解説すると、、、、

  • 穀物を原料に酵母によって発酵を行うこと
  • 小さな木製の容器(700リットル以下の樽)3年以上熟成させること
  • 糖化・蒸留・熟成をカナダで行うこと
  • 瓶詰の際のアルコール度数は40度以上であること
  • カラメルまたはフレーバリング(香味の添加)はOKですよ

とこんな感じです。一番下のフレーバリング(香味の添加)ですが、これはひとつ前に書いた「フレーバリングウイスキー」とは違い、リアルにカナディアンウイスキーに別のお酒を混ぜ込むことです。ワインやラムなどをブレンドして風味づけすることもあります。(ボトルの中身の9.09%まではカナダ産以外のものを加えて良いとされています)

カナディアンウイスキーの味の特徴

カナディアンウイスキーの味の特徴

5大ウイスキーの中で、最も軽いと表現される酒質が特徴です。近年はすいすい飲めるライトウイスキーがブームなので、着実に生産量を増やしています。
アイリッシュウイスキーも酒質が軽いことが特徴でしたが、カナダ産はさらにライトでマイルド。
シナモンや焼いたトーストのような風味を持っており、カラメルのような香りを帯びています。
ライ麦特有のスパイシーさは思ったほど感じない商品も多く、総じて華やかで飲みやすいものが多い印象です。

飲み方は?

カナディアンウイスキーはソーダやジンジャーエール、さらにはセブンアップなどで割って飲むのが、カナダではポピュラーとされていました。ギムリ蒸留所で造られる”シーグラム7クラウン”を7アップで割る飲み方は「セブン・アンド・セブン(7&7)」と呼ばれています。
しかし近年は、「クラフト蒸留所」がカナダでもブーム。30社以上がこれまでにない複雑な風味のカナディアンウイスキーを造っています。
酒質が軽いのが魅力なので、是非ストレートで楽しんでいただきたいですね。スコッチやジャパニーズに比べると価格もリーズナブルで1,000円前後で手に入ります。長期熟成されたエイジドものも比較的安いので、ビギナーのお財布に優しいウイスキーといえます。
最初はBARなどでメジャーなものを飲んでみるのも良いでしょう。やや年数高めの商品をストレートで味わうのがおすすめです。

カクテルのベースとして

カナディアンウイスキーはカクテルベースとしても優秀

カナディアンウイスキーはカクテルのベースとしてもよく使用されます。
日本のBARでは、ストレートやロックで飲むよりもカクテルとして使われることが多いと思います。(希少なオールドボトルは除く)
理由は前述したライトでスムーズ、非常にマイルドな酒質にあります。
「マンハッタン」をはじめ、「ニューヨーク」「ブルックリン」「オールドパル」など様々なカクテルのベースとして使われています。
ちなみにカナダ人はエッグノックと呼ばれる甘い卵のカクテルが大好きで、こちらにもカナディアンウイスキーをたっぷり使います。(ラムやブランデーをベースにする場合もあります)ナツメグが香る「ボストン・フリップ」というカクテルはカナディアンウイスキーで作ると格別です。

主な製造地域と蒸留所

ハイラム・ウォーカー蒸留所

カナディアンウイスキーを語る上で最も有名、かつ最大の生産量を誇る蒸留所です。首都オタワがある大都市オンタリオ州にあり、デトロイドの真向かいに位置しています。
歴史は古く1858年にハイラム・ウォーカーにより建設されました。ベースウイスキー、フレーバリングウイスキーをニュースピリッツの段階でブレンドし、それを樽に詰めて熟成する製造手法(プレバレル・ブレンディング)をとります。かの有名なアメリカのマフィア、「アル・カポネ」が足繁く通った蒸留所としても有名です。
代表銘柄は「カナディアンクラブ」。通称C.Cの名で呼ばれ、これを飲んでウイスキーに目覚める人も多い逸品です。日本で手に入るラインナップは「スタンダード」、「ブラックラベル」、「クラシック12年」、「20年」の4種類です。

カナディアンミスト蒸留所

1967年にコリングウッドに建設された蒸留所。厳選されたライ麦や大麦、そしてジョージア湾の冷たくてクリーンな仕込み水を使って作られます。軽快でありながらまろやかですっきりとした味わいが特徴です。現在はブラウンフォーマン社が運営しており、アーリータイムズなどがブレンドされ出荷されます。
カナディアンミスト」は「クラウンローヤル」や「カナディアンクラブ」と並ぶ3大カナディアンウイスキーのひとつと言われています。
なお、四角いボトルがとってもかわいい「コリンウッド」という商品も製造しています。ホワイトオーク樽で熟成させた後、樽の内側を赤外線で焙ったメープルウッド゙で後熟した逸品で、メープルシロップのような優しく甘めの味わいで初心者の方にもおすすめです。

グレンオラ蒸留所

1989年に「ノヴァ・スコシア州」に創業した新しい蒸留所。「ノヴァ・スコシア州」はカナダの東にある、人口100万人程度の小さな州。
ノヴァ=新しい。スコシア=スコットランド。という意味があり、「新しいスコットランド」と呼ばれています。その州名が表す通り、スコットランドからの移民が多く、蒸留所のオーナーもスコットランドのヘブリディーズ諸島から渡ってきた移民の子孫だそう。
スコッチに酷似した造り方で、ブレンドを行わい「シングルモルトウイスキー」を造っています。ブレンデッドが主流のカナディアンとしては異色の存在で、原料の麦芽もすべてスコットランドから輸入しています。
日本ではあまりお目にかかることはありませんが、「グレンブレトン」というシングルモルトを販売しています。
まだ売ってるところありました(完売注意)

ギムリ(クラウンローヤル)蒸留所

1968年、カナダの一大酒造メーカー「シーグラム社」によってマニトバ州のギムリに建設されました。世界に名を轟かせたシーグラム社ですが、2000年に酒類の事業を撤退。現在はディアジオ社がオーナーとなっています。作っているウイスキーは「シーグラムVO」「シーグラム7クラウン」そして世界No1カナディアンウイスキーとして名高い「クラウンローヤル」などです。高級感があり、ブランデーのようなフルーツ香、トゲを感じさせない熟成感が魅力。ちなみにギムリ蒸溜所で造られるウイスキーにはフォアローゼスがブレンドされていると言われています。

アルバータ蒸留所

1946年にアルバータ社がカルガリーに建設したカナダ最北の最大規模の蒸留所です。カナダで唯一、フレーバリングウイスキーもベースウイスキーもライ麦を主原料としています。「カナディアンの至宝/ライ麦100%ウイスキー」というのが売り文句で、その文句に恥じないメローでリッチな複雑味を併せ持つ。
代表的な銘柄は「アルバータプレミアム」「アルバータ ダークバッチ」など。使用するフレーバリングウイスキーはジムビームとメーカーズマークで使われていたバーボン樽(ファーストフィル)で最低6年以上熟成させ、オークの新樽で最低3年以上熟成。ベースウイスキーはバーボンの古樽で通常3年間熟成。これを合わせることにより、辛くスパイシーなライ麦由来のコクは抑えられ、スムースでライトな口当たりを実現します。

ブラックベルベット蒸留所

1939年、イギリスのギルビー社がオンタリオ州、トロントに創設した蒸留所で、当初はジンなどを作っていました。
蒸留所名にもなっているブランド「ブラックベルベット」が大成功し、原酒が枯渇して、1960年代にアルバータ州に新蒸留所を建て直しています。
アメリカで人気の高いウイスキーで、アメリカ国内では売り上げトップ5に入ります。もともとなめらかな味わいが人気の「ブラックベルベット」ですが、甘い味付けのフレーバードウイスキー「トースティッド・キャラメル」などのウイスキーリキュールも造っており、若い世代の取り込みに意欲的です。現在はバートンブランズ社が所有しています。

フォーティークリーク(キトリングリッジ)蒸留所

1972年にオー・ド・ヴィー(フランスにおけるブランデー、コニャック、アルマニャックなどの総称)の製造を目的に、オンタリオ湖付近に造られた小さな蒸留所です。ナイアガラの滝がすぐ近くにあり「カナディアンウイスキーの革命児」と呼ばれています。なぜ「革命児」と呼ばれるようになったのかというと、1992年ワイン造りのベテランのジョン・ホール氏がウォッカ工場を買い取り、「フォーティークリーク」というウイスキーを開発したからです。「フォーティークリーク」はこれまでのカナディアンウイスキーにない複雑な味やフレーバーを加えた新しいタイプのカナディアンウイスキーで、次々に賞を獲得したのです。「フォーティークリーク」はカンパリ社に1億2,000万ドルで売却されましたが、ホール氏はそのままフォーティークリークでウイスキーを作り続け、多くの賞を獲得し続けています。

静かなる復活を遂げるカナディアン

カナディアンウイスキーは復活してきている

上記で紹介したほとんどのカナディアンウイスキーは輸出(主にアメリカ市場)用に生産されており、多くのカナディアンウイスキーはまだまだカナダ本国でしか手に入りません。しかし徐々に国外にも新しいタイプのカナディアンウイスキーが出回り始め、世界的にファンコミュニティを形成し始めています。
クラフトブームに乗るスコッチや、アメリカンに続けとばかりに、ここ数年カナダにも小ロットでこだわりのハンドメイドウイスキーを造る蒸留所が増えてきました。
2016年のウイスキーバイブルのワールドウイスキーオブザイヤーにカナディアンの「クラウンローヤル ノーザンハーベスト ライ」が選ばれていましたし、今後、良い変化がたくさん出てきそうですね。

禁酒法真っただ中の1920年代、カナディアンウイスキーは隆盛を極めていました。お酒の製造が禁止され、密輸を行うギャング達や、ブートレッガー(密売人)が暗躍し、もぐり酒場(スピークイージー)では夜ごとカナディアンウイスキーカクテルを煽る若者で溢れました。
それまでの価値観や理想を疑い、新しい生き方、新しい歩み方を模索していた混沌と変革の時代。
そういった時代はいつでも熱量を帯びています。
現在ゆっくりではありますが、着実に熱を纏いだしたカナディアンの潮流が、ウイスキーの世界を素敵に彩っていくことに期待しましょう。

ABOUTこの記事をかいた人

オーツカ

ウイスキーをもっと身近に!小難しいウイスキーの世界を分解し、わかりやすく整理する「ウイスキーオーガナイザー」。 これからウイスキーを知りたいビギナーさんの味方になります!日本最大級のウイスキーメディアBARRELを運営、編集長及びカメラマン、さらには執筆もしています。 他にも1000万PVを超える大規模サイトも運営しており、集客コンサルティングなど行っています。コラボやお仕事のご依頼はお問い合わせフォームから。