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おすすめの飲み方・飲み進め方
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密かに人気の高い銘柄「スキャパ」。
柑橘系の香りとカステラやザラメ糖、そして麦の甘さが愛おしくも奥ゆかしいブランドですね。
バーボン樽由来のフルーティさがよく出ており、瑞々しく染み入るような『甘美な酒』というイメージです。
現行品のスキレン、グランサ共に、ストレートで。グランサはソーダ割でも美味しく飲めます。
ただ、加水にはあまり強くない印象。ボディがかなり軽いのでヘタります。
グランサのハイボールは青りんごやレモン、ライムといった爽快な香りがはじけます。ニッキやシナモンのような風味もあるので、シナモンパウダーを少々ふりかけるなんてのもオシャレな飲み方ですね。
オーナー交代や一時閉鎖など、供給が不安定な時期があり、12年、14年、16年とスタンダードボトルの年数表記もコロコロと変わりました。現行品と閉鎖前の1994年以前のボトルを比べてみるのも面白いかと思います。
蒸溜所ボトルのリリースが少ないので、当然ボトラーズからのリリースも少ないです。G&M社がリリースしている蒸溜所ラベルが比較的手に入りやすいでしょうか。8年ものや1966蒸留なども有名ですが、もはや手に入らないと思います。
あと、たまーにボトラーズからこっそりと「シークレットオークニー」の名前で出ていることがあるとかないとか。
個人的には1970年~1980年頃に流通したバランタインなどのブレンデッドウイスキーを飲んで、古き時代のスキャパの片りんを鼻先にでも掠められたらおしゃれだなぁと思っています。
スキャパの発祥と歴史
どこで作られているのか?
スコットランド北海に浮かぶオークニー諸島、その中で最大面積を誇る島、メインランドにスキャパ蒸溜所はあります。
スキャパはノース語で「ボート」を意味しているようですが、スキャパ蒸溜所付近の地形から「貝床のある地峡」とも読み取る説もあります。
![スキャパ蒸溜所付近のボート](https://www.barrel365.com/wp-content/uploads/2019/03/gahjedrh.jpg)
スコットランド最北にある蒸溜所としても知られており、島の先にあるスキャパ湾を見渡せる高台に存在しています。
スキャパ湾は1918年、第1次世界大戦時にドイツの戦艦ヒンデンブルグとセドリックが沈められたことで知られています。
![第一次世界大戦のスキャパ湾](https://www.barrel365.com/wp-content/uploads/2019/03/gadge.jpg)
浅瀬に沈んだ戦艦の舟形がスキャパ蒸溜所のある崖から見えたので、当時は波間に漂う戦艦を見物する人々で賑わったそうです。
またスキャパ蒸溜所は第一次世界大戦の間、英国海軍の兵舎として使用されていました。
ミルルームには彼らが作った木造の階段が残っており、戦争の爪痕を残す蒸溜所としても有名です。
スキャパの歴史
![スキャパ蒸溜所](https://www.barrel365.com/wp-content/uploads/2019/03/1-11.jpg)
スキャパ蒸溜所のあるオークニー諸島は昔から農業が盛んで、モルトの原料となる大麦も盛んに作られていました。
創業は1885年。ハイランドパークのスチルマン、そしてスコットランドラナークシャー出身の化学者によって同年10月から蒸溜を開始しました。
創業から2年目、1887年に伝説的ウイスキー評論家のアルフレッド・バーナードが蒸溜所を訪れた際、「小さいながらも英国内全ての蒸溜所の中で最も完璧な蒸溜所」とメモに記述したそうです。
それもそのはず、その当時のスキャパ蒸溜所では製麦〜醗酵〜蒸溜〜貯蔵と全工程を行うことができ、メインの動力は水車でしたが、補助用の動力源として蒸気エンジンも備わっていました。
つまり当時の最新技術が余すところなく散りばめられていたのです。
![オークニー諸島](https://www.barrel365.com/wp-content/uploads/2019/03/gajeh.jpg)
当時、他の蒸溜所では石炭などを焚き、直火で蒸溜するのが一般的でしたが、スキャパは19世紀から既に蒸気を熱源とした蒸溜を行っていました。
他の蒸溜所が直火から蒸気へと熱源を切り替え始めたのが1960年代ですので、スキャパは極めて先進的な存在だったといえます。
1954年にはハイラム・ウォーカー&サンズが買収。1959年に設備を改修しています。
1970年代になるとバランタインで開発されたローモンド・スチルが導入され、現在もそれが使われています。
何度かオーナーが変わった末、1994年には操業を停止。
1997年からは近くにあるハイランドパーク蒸溜所の従業員が時折スキャパに出向し、設備を維持するために蒸溜を続けていたといいます。
操業停止から10年後、2004年になって、アライド社が約200万ポンドをかけて設備の増強を実施。全面的に操業を再開しました。
スキャパの製法(作り方)
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ポットスチルは初溜用1基、再溜用1基の、合わせて2基が設置されています。
使用されているのは上記でも紹介した幻のローモンド・スチル。
1959年製で、ハイラム・ウォーカー傘下のインバーリーブン蒸溜所で開発されたものです。
このローモンド・スチルは全部で6基製造されバランタインの他の蒸溜所(グレンバーギやミルトンダフ)から輸送されました。
現在ローモンド・スチルを使って稼働しているウイスキー蒸溜所はスキャパのみとなります
(スキャパ以外では、ブルックラディ蒸溜所「アグリー・ベティ」があり、ボタニストジンをつくるのに使用されています)。
ストレート型のネックには精溜用のプレートが埋め込まれており、蒸溜釜から伸びるラインアームは取り換えが可能。
また内部にスチームコイルと呼ばれる3つの仕切り板のようなものがあり、蒸気の還流を調整できる仕組みになっていました。
そのため、特性の異なる様々なタイプの原酒を作り出すことのできる画期的なスチルでした。
現在スキャパでは釜内のスチームコイルを取り除いたものを使用していますが、このローモンド・スチルがスキャパ独特の風味を生み出すとされています。
![](https://www.barrel365.com/wp-content/uploads/2019/03/3-9.jpg)
使用する酵母はドライイーストで、発酵時間はなんと160時間!スコットランド最長の発酵時間として知られていました(2004年に操業が再開されたときに、80時間に短縮、さらに現在は50時間程度に短縮)。
麦芽にはノンピートのものを使用しています。
創業当時は麦芽の乾燥にコークスやピートを使用していたので、昔のスキャパは現在のものより相当ピーティーな味わいだったことが予想できます。
スキャパのシングルモルトに使用するのはファーストフィルのバーボン樽のみ。
ファーストフィルのバーボン樽はセカンドフィルのものと比べてより強いバニラの香り、フルーツの甘味を原酒に付与します。スキャパ独特のパイナップルのような甘みはこれが要因ではないでしょうか。
仕込水は蒸溜所背後にあるリングロ・バーンの泉とその周辺の湧き水を使用。
この水は同じオークニー諸島の蒸溜所、ハイランドパークと同様の中硬水となります。
海の近くにある熟成庫は潮の香りで満ちており、スキャパのドライな風味を造り出すと言われています。
![](https://www.barrel365.com/wp-content/uploads/2019/03/4-8.jpg)
がしかし、実はスキャパのウイスキーはスコットランド各地で熟成されているので、海の付近にあることがドライな風味の要因であるかどうかは不明です。わかりやすい売り文句かもしれません。ちなみに、熟成庫内にはミルトンダフやグレンリベットなどの原酒も置いているようです(災害などがあったときに蒸溜所のストックを守るための保険)。
原酒の管理は蒸溜所に勤める5人のクラフトマンにより、コンピューターは一切使わず、全て手作業にて行われます。
1997年には年間わずか10万リットルだった生産量も、現在では24時間シフトで週5日間スチルを稼働させることにより、純アルコール換算で年間100万リットルを作れるまでになりました。
柔らかなスペイサイドモルトのような味わい、それでいて島モルトのドライな特性を持つウイスキー。
スキャパの独創性はこだわりのローモンドスチルと、樽、そして職人の時間をかけた手仕事が生み出しているのです。
ウイスキー「スキャパ」の種類/ラインナップ
スキャパ スキレン(オーケディアン)
スキャパ16年が販売中止された2015年の春以降にリリースされたノンエイジボトル。
現在サントリーから販売されているオフィシャルボトルはこのスキレンのみとなります。
香りはエステリー、バニラクリーム。
アルコールの刺激がややあり、オーキーな印象ですが、とても近代的な味わいで飲みやすい。
ナッティ&モルティーでドライフルーツの甘味が感じられるバランスの良いモルトです。
オイリーでドライな口当たり、飲み込めばスパイシーな余韻もあり、シナモンやオークの香りが漂います。
加水するとよく開くので、トワイスアップもおすすめ。オークニー諸島のウイスキーには特有のヘザーのニュアンスが加わり、麦の味が強くなります。
スキャパ グランサ
16年終売後、イギリス国内向けにリリースされたボトル。
バーボン樽で熟成後、エクストラピーテッドウイスキーの樽で追熟させたという独特の製法でつくられました。
16年やスキレンと異なり、よく熟れた洋梨のような香りと、口に含んだ瞬間のヘザーハニーのようなやや薬品っぽさもあるはちみつの甘さ、ほのかなスモークが印象的です。
原酒の若さからアルコールの刺激がややあり、香りはバニラ・アプリコット・ビスケット・アニス・甘草。
味わいはカスタード、キャラメル、ヘザーハニー、ライム、青っぽいです。あとはどことなく、生ハム(笑)。
余韻で仄かなピートを感じられます。
スキャパ 12年
こちらは90年代〜00年前半くらいに流通していたボトル。
酒齢12年以上の原酒をヴァッティングしてつくられました。
香りはバニラ、ドライプラム、バニラ、チェリー。
味は、カラメル、コンデンスミルク、プラムの爽やかさ、スパイシーな後味も印象的です。
余韻にはオーク材と磯の香りが漂います。
ものすごく個性的という感じではありませんが、柔らかで繊細な味わいの1本で、伸びが良いです。
スキャパ 14年
こちらは酒齢14年以上の原酒を使用してつくられたボトル。2010年に製造中止となりました。
香りは、軽めのバニラ、 ナッツ入りのクッキー、仄かなお香。
味は、ハチミツ、バニラ、少々オイリー、オレンジピール。
アフターには少々のパイナップル。
さっぱり飲めちゃうライトなボディのボトルですが、力強い麦の味やパイナップル感はまさにスキャパ。
スキャパ 16年
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こちらはかつてのレギュラーボトル。
2015年3月まで販売されていましたが、現在は終売となりました。まだ飲めるバーもありますね。
香りはベイクドオレンジ、アプリコット、バニラ。
味わいはオレンジアロマオイル ・バニラ・カスタードクリーム、ナッツ・ナツメグ最後に仄かなお香が感じられます。
余韻はスパイシーでオークの香りがありますが、長くはありません。
華やかでスッキリとしたボディ、アルコール度数が低いのでスイスイいけてしまうボトル。
個性は強くないですが、飲みやすくかなり人気のボトルです。
スキャパ 25年
25年という長期熟成の原酒を使用したボトル。
2000本限定の商品で1980の希少品。
香りはエステリー・バラ・オレンジ・ザラメ。オレンジピール・レモンピール・ヒマラヤ杉のような香り。
味わいはベイクドオレンジ・ちょっと時間の経った白桃・バニラカスタード・いちごジャム。
余韻はシナモンスパイス、ショウガ、深いオーク。
粘性が高く、芳醇で奥行きのある味わい。
ちょっと渋みを感じるほどタンニンがある、アルコール度数54度の濃厚スキャパ。スキャパのステータスをすべて強くするとこうなるのね、というのを表現しているボトル。
リッチで品のある味わいのデザートモルトとしても良さそうですが、超希少品ですね。
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ちなみに以前に2000本限定で発売した25年ものを先日のフェスで飲むことができました。
オレンジピールやレモンピールといった柑橘のフレッシュさと渋みの中に、森林の香りやバラの香りも感じて、「高貴」という言葉がしっくりくる素晴らしいウイスキーでした。後半に返ってくるジンジャーやコリアンダーシードのようなスパイスもたまりません。
これは素晴らしい銘酒。いやー飲めてよかった。
![スキャパ25年](https://www.barrel365.com/wp-content/uploads/2019/07/kiyosato-9-665x1024.jpg)
ざっくり覚える!
スキャパはスコットランド最北端、オークニー諸島にあるメインランドで作られるシングルモルトウイスキー。
第一次大戦、第二次大戦の爪痕を色濃く残すこの土地は、エリアとしては「アイランズモルト」になります。
個性的なローモンド・スチルを用いた蒸溜が特徴で、麦芽の風味が強く、カステラやザラメ糖のようなアロマのある複雑でなウイスキー。
口当たりはソフトでとっつきやすく、ボディも軽いので、ウイスキーを飲みなれていない方でも楽しめます。
またスキャパはかの有名な「バランタイン17年」のキーモルトとしても使われています。
バランタイン17年のオレンジ、ハニー、塩キャラメルを思わせる風味はスキャパ無しでは成しえません。
製造元はペルノリカール社で販売をサントリーが行っています。