パースシャーのKythe(カイブ)蒸溜所が、9月30日に蒸溜の開始を発表しました。
木材を燃やす直火の初留釜に、フロアモルティングの麦芽、ビール酵母。1950〜60年代のハイランドモルトを再現するために、原料も設備も昔のやり方へ戻した蒸溜所です。

愛好家3人、構想14年の蒸溜所

創設したのは、ウイスキーメーカーのアンガス・マクレイルド氏、蒸溜所長のジョニー・マクミラン氏、会長のアーロン・チャン氏の3人です。
構想が始まったのは14年前で、建設に入ったのは2024年。出資者は10か国以上のウイスキー愛好家で、ベンチャーキャピタルや大手資本は入っていません。
場所はブレアゴウリー近郊の農場で、2棟の納屋を改装しました。
1トンの糖化槽、6,000リットルの初留釜、4,000リットルの再留釜を備え、年間の生産能力は6万LPAです。
グレンフィディックの能力が2,000万LPAを超える(300倍以上)ので、とても小さい蒸溜所です。
ここまで戻すのか、と思う原料と設備

原料は主にマリス・オッターで、多くを蒸溜所のある農場で育てています。
収量が少なくタンパク質の多い品種で、全量をフロアモルティングで麦芽にしています。
発酵は木製の発酵槽で最長2週間。ベルヘイヴン醸造所の使用済みビール酵母に、1950年代の圧搾Mストレイン蒸溜酵母を合わせ、熟成後にエキゾチックな果実味が出ることを狙います。
最大の難所が、初留釜の直火です。燃料は木材で、温度は800℃を超えます。
余市の石炭直火蒸溜でも釜は約800℃にさらされますが、木材を燃やして同じことをする蒸溜所は世界でもごく少数です。
スコットランドでも、グレンファークラスは1980年代初めに蒸気加熱を試して直火へ戻しています。直火が原酒に厚みを与えると考える造り手は、今も確かにいるわけです。
マクレイルド氏自身、火力の調整が利かず作業環境も過酷で、どうしても散らかる作業だと認めています。それでも続けるのは、「効率は個性の敵」という考えからです。
バッチごとの揺れも個性として織り込み、収量は度外視して規模を絞り、質で価値を取る事業モデルを組んでいます。

初リリースは8年後、先に売るのは樽

樽詰めは今秋から。リフィルのバーボン樽とシェリー樽に詰め、敷地内の熟成庫で寝かせます。
3年でウイスキーを名乗れますが、最初のボトリングは8年後を見込んでいます。
先に動くのは樽の販売で、年内に購入プログラムを始める予定です。樽の販売は、当初から資金計画の一部に組み込まれていました。
見学施設の予定はまだ出ておらず、ギフトショップは当面期待しないでほしいとマクミラン氏は話しています。
樽を買う側にとっては、8年先まで蒸溜所が続くことが前提になります。グレンウィヴィスでは、個人オーナーの樽の扱いが管財人の選任待ちになっているところです。
エデンミルのように、経営危機のあとで買収されて存続する例もあります。
売るボトルが出ない8年間をどう乗り切るのか。それが、この蒸溜所の次の試金石ではないでしょうか。










