マッカランやハイランドパークを擁する英スピリッツ大手エドリントンが、米ワイオミング州のクラフト蒸溜所「ワイオミング・ウイスキー」の保有株80%を、創業メンバー側に売却しました。
これにより、同社は米国ウイスキー事業から完全に撤退することになります。
売却先は、共同創業者デイヴィッド・デファジオ氏が率いるWWパートナーズ。財務条件は非公表です。エドリントンは2018年にまず少数株主として出資し、その後段階的に持ち分を増やして2023年には80%の過半数株主となっていました。わずか3年ほどで手放した形になります。
クラフト蒸溜所としての来歴

ワイオミング・ウイスキーは、牧場経営者ブラッドとケイト・ミード夫妻がデファジオ氏らと2006年に立ち上げた蒸溜所です。
ワイオミング州で初めて認可を受けた蒸溜所として知られ、2009年から生産を開始しました。地元ビッグホーン盆地産の大麦を用いた、いかにも「アメリカン・クラフト」らしい出自を持つブランドです。
エドリントン傘下では、2024年9月にマスターブレンダーのナンシー・フレイリー氏が一度退任していましたが、今回の売却にあわせて経営に復帰する見込みです。後任として指揮を執っていたブレンダン・クック氏が今後も残るかは、現時点で明らかになっていません。
グレンタレット、フェイマスグラウスに続く3件目
今回の売却は、単発の出来事ではありません。
エドリントンは2018年にグレンタレット蒸溜所を売却し、2025年7月にはブレンデッドスコッチの主力ブランドだったザ・フェイマスグラウスとネイキッドモルトをウィリアムグラント&サンズに売却しています。今回のワイオミング・ウイスキーで、この「非・ウルトラプレミアム資産の切り離し」は3件目です。
同社は一貫して「ウルトラプレミアムスピリッツへの集中」を戦略として掲げてきており、今回もその延長線上にある動きと説明できます。実際、6月30日に発表された2025年4月〜2026年3月期の本決算資料でも、ワイオミング・ウイスキーへの投資について減損を計上したことが特別損失の一因として明記されており、事業として積極的に育てる対象ではなくなっていたことがうかがえます。
皮肉なのは、その”本丸”も苦戦中ということ

ただし今回の決算は、その「選択と集中」の先にある景色が必ずしも明るくないことも同時に示しています。通期売上高は前年比14%減の9億2,230万ポンド、EBITは24%減の2億2,660万ポンド。会長のアンガス・コバーン氏は「消費者信頼感の低下に、各国での規制強化や増税、事業コストの上昇が重なった一年だった」とコメントしています。
しかも減収の主因は、まさに「集中」の対象であるはずの高価格帯です。
マッカラン25年・30年など最上位クラスの販売数量が落ち込んだ一方、マッカラン12年は二桁成長。
CEOのスコット・マクロスキー氏は「最上位の需要は依然として弱いが、コアレンジの成長で貢献利益は微増できた」と説明しており、実態としては「ウルトラプレミアム一本足打法」からの微妙な軌道修正が始まっているようにも読めます。
ちょうど前月にはマッカランがハロッズに英国初の常設ブティックを開いたばかりでしたが、あの大型投資も、こうした厳しい数字を背景に置くと「攻めの一手」であると同時に「てこ入れの一手」でもあったと見えてきます。











“選択と集中”を進めた先で、選んだはずの本丸が一番苦しんでいるという構図はなかなか皮肉です。