原酒不足で一度は姿を消したエライジャクレイグ21年シングルバレルが、13年ぶりに再リリースされます。
6月14日のナショナル・バーボン・デーに合わせ、ケンタッキー州バーズタウンのヘヴンヒル・バーボン・エクスペリエンス限定で登場します。
アルコール度数は94プルーフ(47%)、希望小売価格は299.99ドル(約4万7,000円)。
現行ラインナップで最も長い熟成年数を背負うボトルです。

「消えた長熟」はバーボンブームの副作用?

そもそもエライジャの長熟シングルバレルが市場から消えたのは、原酒が足りなかったからです。
18年シングルバレルは2012年、基準を満たす古樽の在庫が尽きて一旦休止。
その穴を埋めるように20年が放出され、2013年には21年が、2014年には23年がそれぞれ前の年数を置き換える形で年次リリースされていきました。
つまり超長熟のラインは、安定供給ではなく「在庫の都合で年数が動く」状態だったわけです。
2016年にはスモールバッチが12年表記を外し、8〜12年原酒のブレンドに切り替わりました。背景には「ブランドを成長させつつ将来の18年・21年向けの原酒を確保するには、12年原酒が足りない」という事情があったとされています。2023年にはバレルプルーフからも12年表記が消えています。
ブームで飲み手が増えれば増えるほど、古い樽から先に枯れていく。年数表記の後退は、その正直な記録だったと言えると思います。
現在は供給過剰の局面

そして話はここで反転します。21年が戻ってこられた背景には、原酒不足とは正反対の市況があります。
2025年初頭時点でケンタッキーの熟成中バーボンは過去最高の約1,610万樽に達し、州の業界団体の数字をもとに約300%の供給過剰だとする見方も出ています。
需要が落ち着いて在庫が積み上がり、ジムビームはケンタッキーの施設を約1年間休止、ヘヴンヒルやメーカーズマーク、ワイルドターキーも2025年に減産に動いたと報じられています。
ただし、注意したいのは今だぶついているのが2021〜22年に詰めた若い原酒だという点です。21年ものは逆算すれば2005年前後に樽詰めされた酒ですから、足元の供給過剰とは別の在庫から生まれています。
それでも、超長熟バーボンが相次いで登場し、買い手に有利な空気が広がった2025年という地合いが、温存していた古樽を世に出す後押しになった面はあるのではないでしょうか。15年の新規投入、18年の再バッチ、そして21年と、この数カ月でシングルバレルの梯子を組み直してきた流れも、その読みを補強します。

日本に届くかは未定
もっとも、市場全体がだぶついているからといって、日本の棚に並ぶとは限りません。
当面はヘヴンヒル・バーボン・エクスペリエンスの限定発売で、年内に一部市場へ広がる予定とされています。
しかも2025年のアメリカンウイスキーの対日輸出は28%減と、関税の報復措置のあおりを受けて大きく落ち込んでいます。
アメリカ国内に酒は積み上がっているのに、海を渡る流れは細っているわけです。
なお度数は94プルーフで、かつての長熟ボトルが採用していた90プルーフよりわずかに高め。18年の90プルーフを「もう少し強くてもいい」と感じていた愛好家には、地味ながら歓迎される調整ではないでしょうか。
BARRELでも過去に20年や23年といったエライジャの長熟品を口にした感想をエライジャクレイグの記事にまとめていますが、年数が二桁後半に入ったこのブランドは、もはや一般的なバーボンの枠から外れた濃密さを持っています。21年がその系譜のどこに着地するのか、飲める日が来るのを待ちたいところです。

エライジャクレイグの種類/ラインナップ
エライジャクレイグ スモールバッチ
以前のフラッグシップ的ボトルだった12年ものが原酒不足から販売中止になり、後継としてリリースされたのがこのノンエイジのスモールバッチ。
こちらは酒齢8年〜12年の原酒をブレンドして仕上げています。
原酒コントロールのため生産量は減らしているようで、少量生産を意味するスモールバッチがブランド名に組み込まれています。
上記でも紹介した通り実際に2017年のアメリカのウイスキー専門誌 『ウイスキー・アドボケード』 TOP20では、ランキング1位に輝くほど評価の高いボトルです。
揮発性溶剤、プラム、カラメル、バタークッキーの芳醇な香り。
味わいは12年に比べ軽くなったものの、ブラウンシュガーのような甘み、焼きリンゴ、カスタード、焦がしたカラメルとバニラが好印象。
バーボン特有の接着剤のようなエステリーさはうっすらと感じますが、フルーティと芳醇な穀物感を味わうことができるボトルです。
エライジャクレイグ 12年
こちらは以前販売されていたエライジャクレイグのフラッグシップボトル。
1986年にリリースされて以来、その見事な出来栄えはバーボンに限らず世界中のウイスキーファンを唸らせました。
当時は市場価格で2000円を切る場合もあり、安旨バーボンの頂点とも言ってよい存在でした。
しかし原酒不足のため、惜しまれつつも販売中止となってしまいました。
現在のスモールバッチも良い出来栄えですが、味の奥深さが違います。
香りは上品なキャラメル、バターをたっぷり使ったクロワッサン、熟したバナナ、レーズン、プラム。
味わいはバタークッキー、バナナ、中間にソフトな乳酸、わずかなアンズの酸味、後半はバニラやカラメル、長く深いウッディな余韻が続きます。
メローでフルーティ、日本人が好みそうな甘くて濃いバーボンの味わいがよく出ている素晴らしきボトルです。
ラベルに12年表記があるものは4種類(ふたつは裏面表記)あるので、バーなどで見かけたら是非お試しください。
エライジャクレイグ スモールバッチ バレルプルーフ
蒸溜所や一部地域のショップでしか売られていないバレルプルーフ仕様のエライジャクレイグです。
バレルプルーフなのでアルコール度数が62度~70度前後あります。
非常のパワフルな香味を持っていて、口当たりはドライ。乾燥した穀物の甘み、ドライフルーツがたっぷり入ったシリアルの味わい。
以前は12年熟成のバレルプルーフでしたが今は8年〜12年の原酒をブレンドしたものになっているようです。

こちらは取材用に海外より購入した商品。70度近いアルコール度数。強烈にウッディだが、バランスが良い。
エライジャクレイグ 18年シングルバレル
こちらは18年熟成した原酒を、他の樽と混ぜずにボトリングしたもの。
12年物の更に上を行く複雑な風味を持っています。
キーとなる風味一つ一つが全てギュッと濃縮されているような「濃い」ボトルです。
ジュースで例えるなら粘性のあるピーチネクターのような感覚です。
香りは枝付きレーズン、プラムエキス、艶っぽい赤いリンゴ、シリアルとその中に入っている乾燥ラズベリー、オレンジ、バナナ。ローストアーモンドの印象も。
口に含むとアルコールの刺激は穏やか、なめらかな舌触りで、アンズのような酸を最初に感じます。
古い家具のような香りが鼻に抜け、バナナやマンゴーの強い甘味、それがバニラとキャラメルに変化します。
しばらく待つと、チェリーやピーチやパインの酸も感じとれます。
余韻はミディアム~ロング。ヘーゼルナッツ、ナツメグ、ココア。ドライで渋みのあるオークの香りに癒しを感じます。
バーボンウイスキーってこんなんだったっけ?と後から疑問に思うくらい一般的なバーボンとはかけ離れた風味を持つ別格のボトルです。
過去のラベルには上記のもの以外にも商品名や「Kentucky Straight Bourbon Whisky」部分が筆記体になったものが存在します。

こちらは恐らく1990年代後半流通のもの。時代によって3回ほどラベルチェンジがあるようです。
エライジャクレイグ 20年 シングルバレル
こちらはエライジャクレイグを20年熟成したバーボンにしてはかなり長熟のボトル。
18年同様、単一の樽から取り出したものをボトリングしているシングルバレルとなります。
艶やかなリンゴ、オレンジマーマレード、煮詰めたイチゴジャム、メロン、バナナ、シナモン。鼻抜けには古いインクの香り。
味わいはドライフルーツ、パッションフルーツの濃厚な甘み。メロンキャンディ。
バナナ、バターをたっぷり乗せた焼きリンゴパイ、シナモンもかかっている。
幾層もの甘味の後から穏やかな酸味、タンニンの渋みが訪れ、ウッディでスパイシーでドライ。長い余韻。
バーボンの完成形と言っても過言ではない深く複雑な味わいのボトルです。
エライジャクレイグ 23年 シングルバレル
こちらはエライジャクレイグ最長熟のラインナップ。
1989年、1990年頃にリリースされていたボトルかと思います。
裏面には手書きで日付や原料比率が明記されており、トウモロコシ75%、ライ麦13%、大麦麦芽12%の比率でつくられたとのこと。
以前ご紹介したエヴァンウィリアムス23年と比肩される長熟バーボンの名品。
味わいはまさに「ウッドスパイスアドベンチャー」。
18年や20年、21年といったエライジャ長熟品が好きな人は好物だと思います。
香りは強烈な木質感、重厚なオーク、焼きたてのアップルパイ。シナモン、杏、メープルシロップ、完熟バナナ、ドライチェリー、タバコの葉。
12年ものと比較すると同じエライジャクレイグと思えないディープな世界観を纏っています。
味わいもオーキーでエレガント。酸と渋みは強いですが、いやらしさはなく暖かい。キャラメル、バタースコッチ、アンズ。
中盤からカスタードクリーム、バニラ、クリーミーなバターを感じます。後半はシナモンスパイスとおがくず。非常に複雑です。
余韻も非常に長く、しばらく鼻腔に居座ります。
一度飲んだら忘れられないオークの怪物とも言えるべきインパクトの風味です。
少量の加水で飲み口の木質感がとれるのでおすすめです。バーで見かけたら是非お試しください。















