広島県廿日市市の老舗酒類メーカー、株式会社サクラオブルワリーアンドディスティラリー(以下、サクラオB&D)が2026年4月より、自社が製造するすべてのウイスキー製品のラベルを順次刷新し、日本洋酒酒造組合(JSLMA)が制定した「JW(ジャパニーズウイスキー)ロゴマーク」を導入すると発表しました。
このロゴマークは、JSLMAが定める厳格な自主基準を完全に満たした製品にのみ付与されます。製品の中身や品質に変更はなく、ラベルデザインの刷新です。
JWロゴマークとは何か

JSLMAが2021年に制定したジャパニーズウイスキーの自主基準は、スコッチウイスキーの規定にも匹敵する厳格な内容です。
麦芽・穀類・日本国内で採水した水のみを原料とし、糖化・発酵・蒸留のすべてを日本の蒸溜所で行い、700リットル以下の木製樽で3年以上日本国内で熟成させ、アルコール分40%以上で国内においてボトリングすること——これらをすべて満たした製品のみが「ジャパニーズウイスキー」を名乗れます。
この自主基準は2024年4月に本格施行されましたが、組合非加盟の事業者には法的拘束力が及ばないという限界がありました。
そこで2025年3月27日に投入されたのがJWロゴマークです。
ウイスキー樽の鏡板をモチーフにしたこのマークの有無で、消費者が店頭で瞬時に本物を見分けられる仕組みを目指しています。
瀬戸内の海と、山奥のトンネルで育てる

1918年創業のサクラオB&Dは、広島県廿日市市桜尾に本社と蒸溜所を構えます。
穏やかな瀬戸内海に面したこの立地で造られる原酒は、海風の影響を受けたエステリーなキャラクターを持ちます。
もう一つの熟成拠点が、北部の中国山地に位置する「戸河内トンネル」です。かつての未完成の鉄道トンネル(全長約387メートル)を熟成庫に転用したもので、年間を通じて温度約14度・湿度約80%というスコットランドのハイランドに近い安定した環境を保っています。
この環境がバーボン樽熟成の原酒に、過度な樽感を抑えたバニラやリンゴの繊細なアロマをもたらします。
今回ロゴが付与される製品は、シングルモルト「桜尾」「戸河内」から、ブレンデッドの「戸河内 PREMIUM」「戸河内 RUM CASK FINISH」「SOGAINI(そうがいに)」、さらにはハイボール缶まで、全ラインナップにわたります。
なぜこれが業界全体の話なのか
ジャパニーズウイスキーは国際的な需要の急増に伴い、海外から安価なバルク原酒を輸入して瓶詰めした製品が「日本産」として流通する事態が常態化してきました。
現行の酒税法では、製品中に真正のウイスキー原酒が10%含まれていれば「ウイスキー」として販売できるという緩い定義が残っています。
2026年3月の参議院予算委員会では、こうした制度的な欠陥が国会の場で正面から問われ、国税庁は2018年の「日本ワイン」表示基準の厳格化を先例に、ジャパニーズウイスキーの法的定義確立に向けた作業を進めていることを認めています。
完全な法制化までにはさらに数年を要する見通しですが、その間の「防波堤」として機能するのがJWロゴマークです。
サクラオB&Dは三井物産企業投資との資本業務提携(2025年10月)も済ませ、グローバル展開を加速させる体制を整えています。
普及価格帯の「SOGAINI」も含めて全製品を基準適合品として揃えたことは、海外のバイヤーや消費者に対して同社の「品質への一切の妥協なし」という姿勢を最も明快に示すメッセージといえるでしょう。











