まとめて試飲できる!オリジナルのアイル・オブ・ジュラのセット
ジュラのシングルモルトを知る!
スコッチウイスキー「アイル・オブ・ジュラ」のシングルモルトラインナップをまとめて飲み比べてみたい!という方に向けて3本を少しずつ飲めるセットをご用意しました。
パッケージが刷新された看板商品の「10年」。ジュラのハウススタイルがわかります。
「18年」はプラムや蜂蜜に浸したレーズンなどを感じるワインの熟成樽を用いた珍しいタイプ。
目玉模様が目を引く「プロフェシー」は、スモーキーさを感じられるユニークな味わいの逸品です。
30mlセットと100mlセットから選べるので、少しずつ飲み比べて、アランというウイスキーを知ってください。
おすすめの飲み方・飲み進め方
ハイランドパークにタリスカー、アランといった競合ひしめくアイランズモルトにおいてその存在は忘れられがちですが、ライトボディでバランスが良く飲み方も選ばないうえ、モルト初心者にもおすすめできます。
飲み方はストレート、18年は加水も〇。
オレンジを添えたハイボールなんかもおいしいのです。果実と相性がよく、モーレンジよりも合う気がします。
Barでは序盤に飲んでいただいて、ヘビーピートなラインに行く前の繋ぎにするのがよいかと思います。
愛好家の方からすると現行品は水っぽく、ボトラーズのリリースする長期熟成のジュラや1960~1970年代のオールドボトルが好まれている印象がありますが、新ラベルになりかなり良くなってきていると思います。
なんでもジュラは20年ほど前から7000樽のストックをすべてファーストフィルのアメリカンオーク樽に詰め替える作業を行っているという話があり、その影響なんじゃないかなぁと踏んでいます。
アルコールや原酒、熟成度といったどっしりとした厚みではなく、樽を詰め替えたことで多層感が増し、クリーンな酒質に複雑味が足された印象です。
スモーキーなジュラがお好きな方は、旧ラインナップのスライトリーピーテッド(10年・16年)とピーテッド(スーパースティション・プロフェシー)などもまだまだ飲めるのでおすすめします。
価格もそこまで張りませんし、ジュラらしいクリーンな酒質にピートの乗った味わい。そしてバナナやミルクチョコといったクリーミーな後味が楽しめます。
アイル・オブ・ジュラの発祥と製造場所、歴史の紹介
アイル・オブ・ジュラ蒸溜所があるジュラ島は、アイラモルトで有名なアイラ島の東北に位置します。
南北に40km、東西に10kmという細長い形をしており、アイラ海峡を挟んでアイラ島と向かい合うように浮かんでいます。
島の人口は200人足らずですが、島には5,000頭を超える鹿が生息しているためゲール語で「鹿の島」の意味を持つ「ジュラ」という名前で呼ばれるようになりました。
そんなジュラ島のクレイグハウスという村の中心街にアイル・オブ・ジュラ蒸溜所は建てられています。
ジュラ島の密造の歴史は深く、なんと1502年には既に密造酒を造っていたという資料が残っているほどです。
アイル・オブ・ジュラはその密造酒を造っていた蒸溜所とほぼ同じ場所に建てられました。
なので創業は1810年と古いのですが、土地代のことで地主とトラブルになり20世紀に入ってから約50年閉鎖していました。
現在の蒸溜所が稼働したのは1963年。
島民の雇用を確保するために2人の地主が働きかけアイル・オブ・ジュラは再スタートを切ることとなりました。
グレンアラヒーやタリバーディンを彷彿とさせる蒸溜所の形状は、当時随一の技術力を誇ったデルメ・エヴァンスが設計を担当しています。
ジュラ島は作家のジョージ・オーウェルが彼の遺作「1984」を執筆した地でもあります。
1945年の9月、結核に体を侵されたオーウェルはジュラ島へ訪れ、最後の執筆に身を投じました。
当時、電話線が敷かれていない世と隔絶された地を求め行き着いた先がジュラ島でした。
島最北端にあるバーンヒルのコテージが彼の執筆場で当時このコテージの10キロ四方には民家が全くありませんでした。まさに「隔絶された地」です。
そこであのディストピア小説の名作「1984」が生まれるわけです。
オーウェルの体の状態や、ジュラ島という隔絶された土地での執筆があの反全体主義へのバイブルを生んだと思うと感慨深いです。
ちなみに村上春樹氏の代表作「1Q84」はオーウェルの「1984」のパロディからつけられたタイトルなんだそうです。こうやって歴史を知るとまた読みたくなってきますね。
1963年、設立当初はインバーゴードン系列でしたが1995年にホワイト&マッカイ社の手に渡り2007年インドのUBグループの参加へ。
2014年にフィリピン大手の種類メーカー、エンペラドール社によって買収され現在に至ります。
アイル・オブ・ジュラの製法
原料となる麦芽はスコットランド本土から取り寄せており、基本ノンピートの麦芽のみを使用しているのがポイント。
これはご近所のアイラモルトとの差別化を図るためなんだとか。
しかし近年では7〜8月にかけての1ヶ月間だけの期間限定でフェノール値55ppmのヘビリーピーテッドの麦芽を仕込みに利用するようになりました。
仕込み水は蒸溜所背後にあるマーケット・ロッホの湧水を使用。
こちらはピート色が濃く、まるでコーヒーのような茶色の水質となります。
ポットスチルはランタンヘッド型で初溜2基、再溜2基の合わせて4基。
スチルはいずれも巨大で高さがなんと8mもあり、そのサイズ感は見る者を圧倒します。
この巨大なスチルもアイル・オブ・ジュラのスムースな味わいに関係していると言えます。
熟成に使用するのはバーボンやシェリー樽の他に、ボルドーやトロンセ、リムーザン、アリエなどの豊富なワイン樽を巧みに利用して追熟やヴァッティングを行い、複雑な味わいを付与、表現しています。
アイル・オブ・ジュラのラインナップ
アイル・オブ・ジュラはオフィシャルボトルの種類が多いことでも有名です。
2020年では定番商品や期間限定商品の枠である「シグネチャーシリーズ」をはじめ、PXシェリーカスクを用いた免税店向け商品の「トラベルエクスクルーシブシリーズ」、希少品や熟成年数の長い限定品をリリースするカテゴリ「レア&リミテッドシリーズ」など多岐に及びます。
ここでは代表的なものを一部をご紹介します。
アイル・オブ・ジュラ ジャーニー
2018年4月にリリースされた比較的新しいジュラのコアレンジ。
創業から1963年の復活、そして現在までとジュラの歩んできた道のりを「旅~JOURNEY~」と表現した現代風なタイトリング。
アンバーゴールドのカラーからバニラとオレンジなどの柑橘類のスパイス。干し草にうっすらと漂うスモーク。
テクスチャはややワクシーで固く、味わいは梨のような瑞々しさにあふれています。シナモンとクローブのスパイスも感じます。
フィニッシュはショートからミディアムで、スパイシー。若い木材の香りにアップルジュースのような余韻が残ります。
気軽に楽しむジュラと言った印象。
ハウススタイルを知るには10年のほうが適正かも。
アイル・オブ・ジュラ 10年
パッケージが刷新されたジュラ10年。
アメリカンホワイトオークのバーボン樽+オロロソシェリー樽フィニッシュといった構成。
2020年現在、まだまだ市場やモルトバーにはひとつ前のレンジである「オリジン」のほうが出回っている印象です。
オリジンと突き合わせて比べてはいませんが、香りはやや甘みを増した印象。干し草、ふすまパン。レモン、オレンジ。
味わいはフレッシュなリンゴとシナモンのスパイス。香りほど甘さには無くドライな印象。やや土っぽさを伴いヨモギのような植物っぽさもある。
個性の強いタリスカーやハイランドパークなどの人気アイランズと比べても面白い。
現在のジュラの入門編にはこの10年か、少しお金を足して12年がいいと思います(個人的には12年がおすすめ)。
アイル・オブ・ジュラ オリジン 10年
こちらは10年もののアイル・オブ・ジュラ。
2018年4月まではブランド内のスタンダード的立ち位置でしたが、コアレンジの刷新により終売。
熟成樽はファーストフィルのバーボン樽が使用されています。
香りはふくよかなバニラ、セロリ、干し草、ほんのりシナモンスパイス、りんご飴。
味わいもアップルシナモンのフルーティな甘みとスパイシー、バニラウエハースの甘さと香ばしさ、水々しいさくらんぼ。若干カルダモン。
軽やかでスムースな口当たり、後味には氷砂糖。フルーティな甘みが特徴的なボトルです。
クセがないのでウイスキー初心者や女性にもお勧めの1本です。
リニューアルされた10年とも飲み比べてみてください。
アイル・オブ・ジュラ セブンウッド
こちらはファーストフィルのバーボン樽で熟成を行った後6種類のフレンチオーク樽(リムーザン、トロンセ、アリエ、ヴォージュ、ジュピレス、レベルトランジェ)にて追加熟成して作られたボトル。
香りはコーヒー、ミルクチョコレート。徐々にシュガーバターブレッド、パイナップルキャンディ、奥にほんのりココナッツ。
味わいは上品なハチミツ、ワッフルの甘み、ジンジャーのジャムをつけたクッキー、後半にはビターチョコレート。
クリーミーなテクスチャと品のある甘み。
後半ビターへと変化する複雑な味わいが魅力的な1本です。
アイル・オブ・ジュラ 12年
12年もののアイル・オブ・ジュラ。
バーボンバレルにて熟成を行った後、オロロソシェリー樽にて追加熟成して仕上げています。
新生ジュラでは最もコスパの光る一本かと思います。
香りはナッツ入りチョコレート、ウッドスパイス、シナモンシュガー。砂糖漬けのオレンジピール。
味わいはとてもジュラらしいハチミツとねっとりとしたバナナの味わいにピートがうっすらとかかる。
余韻はミディアムロング。やや焦がした砂糖の印象もあるが全体的には軽やかでフルーティ。
ジュラらしいライトでクリーンな酒質に、少し古酒感を感じさせる厚みが与えられています。
今のジュラを知れる良いウイスキーです。
アイル・オブ・ジュラ プロフェシー
ジュラ島の女性予言者にまつわる逸話から名づけられており、英語で「プロフェシー(Prophecy)」とは予言という意味です。
プロフェシーは40ppmのヘビーピーテッド麦芽から蒸溜されたモルトをメインに、シェリー樽とリムーザンオーク樽熟成のノンピート原酒を加え、複雑なフレーバーに仕上がっています。
香りはややミーティなスモークで柑橘が強く、熟したリンゴや新鮮なプラムを感じます。
味わいはクリーミーでマイルド。飲み心地が良く、シトラスやドライレーズンを感じます。少し潮のフレーバーがあり、キャンベルタウンっぽいピートを感じます。チェリー感が好きな人はいいかも。
プロフェシーは年に1回の限定生産で、アイラモルトとも異なる面白いヘビー・ピート・ウイスキーです。
アイル・オブ・ジュラ 18年
こちらはバーボン樽にて熟成した後、レッドワインカスクにて追加熟成を行ったもの。
ラベル改変前のものが、「第1級グラン・クリュ・クラッセのボルドー樽でフィニッシュ」と明記されていたのですが、今回も「プルミエ・グラン・クリュの赤ワイン樽で後熟」とのことなので同じ仕様かと思われます。
香りはプラム、蜂蜜に浸したレーズン、カカオ、シナモン。フルーツの瑞々しさが出ています。
味わいはメープルシロップ、トフィーのしっかりした甘み、肉厚で熟れたブラックベリー、ビターチョコ、ウッドスパイス。
深い味わいですがスムースでクドさが無いためついつい飲み過ぎてしまう逸品。
甘み、スパイシー、ビターのバランスが良くとれたボトルです。
アイル・オブ・ジュラ 21年
もともとアイル・オブ・ジュラ創立200周年を祝い2010年にリリースされた限定ボトルでした。
バーボン樽で熟成後、「ティオ・ペペ」で有名な、ゴンザレス・バヤス社の1963オロロソシェリー樽で追加熟成を行った希少な逸品でしたが現在は定番化され、数量限定ではありますがリリースされています。(現行品はオロロソシェリーでのフィニッシュを行っていないはず)
繊細ではあるけれど豊かな強いキャラメルナッツのアロマ。プラム、ドライベリー、苺ジャムといったベリー系の要素。土っぽいピートが続く。
味わいは苺ジャムやミルクチョコレートの甘み。中盤にココアのほろ苦さ、干し草、奥にミントとリコリス。
余韻には新しめの木材とアーモンド。
上品でバランスの良いボトルなのでおすすめできます。
上記は終売した21年ですが、まだまだ市場には残っています。
現行品のデザインは↓。日本ではなかなかお目にかかれませんね。
2020年以降はボトラーズからのリリースが多かったですね~。
ちょっと価格も上がってきた(安いところもある)印象のジュラですが、なんだかんだ万能感の高いシングルモルトと言えます。
ざっくり覚える!
アイル・オブ・ジュラはアイラ島の東北に浮かぶ細長い島「ジュラ島」にてつくられているシングルモルトウイスキーです。
ジュラ島は人口わずか200人弱の小さな島ですが、野生の鹿が5000頭ほど生息しています。
SF小説好きの方はジョージ・オーウェルが「1984」を執筆した土地と言われるとピンとくるのではないでしょうか。
いわゆるアイランズモルトに属し、フルーティーで甘口軽快。
アイラ島に近い島でつくられていると聞くと、ピートが効いたスモーキーフレーバーを連想しますが、どちらかと言えば内陸、ハイランド寄りの印象を持つシングルモルトといえます。
アイル・オブ・ジュラはスコットランドで3番目に消費されているブランドで、メジャー銘柄の陰に隠れてはいますが、昔から品質とコストパフォーマンスが高いことで知られています。
ホワイト&マッカイやクレイモアなどにも使われており、2014年に現在、フィリピンの大手酒類メーカー、エンペラドールが所有し製造・販売を行っています。