番外編のブランデーの記事が好評だったため、アップルブランデーである「カルヴァドス」ついても詳しく解説していこうと思います。
普段からビールや日本酒、焼酎、ウイスキーなど日本国内だけでもたくさんのお酒を楽しむことが出来るこの世の中ですが、カルヴァドスを晩酌のお供にしているという方はどれくらいいるのでしょうか?
そもそもカルヴァドスの存在を知らないという方も多いのではないでしょうか。
カルヴァドスというお酒は、日本ではあまり馴染みのないものです。しかし、ひとたび覚えてしまえばその極上の味わいの虜になること間違いなし。
今回は、あまり知られていない隠れた名品であるカルヴァドスについて、その製法や飲み方、おすすめの銘柄まですべてご紹介いたします。
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カルヴァドスとは
カルヴァドスというのは、古くからフランスのノルマンディー地方で特産品として愛飲されてきました。
フランスでは昔からコース料理の前と後にお酒を飲む文化があり、それぞれ食前酒・食後酒として親しまれています。
カルヴァドスはこの食後酒として長らく楽しまれてきました。
フランスで食後酒として楽しまれる一方で、日本では全く異なる方向でその才能を生かすこととなりました。
それは、お菓子やパンに使用するという方法です。
有名レストランやブーランジェリー(フランス語でパン屋さんのこと)、さらにはプロのパティシエにも重宝されているのがカルヴァドスです。
アップルパイやドライフルーツの漬け込みなどには決まってカルヴァドスが使われており、みなさんが気づかないうちに間接的にカルヴァドスを楽しんでいます。
カルヴァドスなんて聞いたことがない!という方は、是非レストランやケーキ屋、パン屋などで辺りを見渡してください。
きっと「カルヴァドス」と書かれた瓶を見つけることができるはずです。
カルヴァドスの原料
一見お菓子の引き立て役に見えるカルヴァドスですが、一体どんなお酒なのでしょうか?まずは原料や名前の由来、その歴史をみていきましょう。
カルヴァドスとは、ブランデーの一種。正確にはアップルブランデーの一種です。
アップルブランデーとは、りんごを発酵させてそれを蒸溜した蒸溜酒のことです。つまり原料はりんごということですね。
みなさんはシードルというお酒を飲んだことはありますか?
シードルとは、りんごを発酵させて作るお酒のことです。
ビールのように発泡性があるものと、ワインのようにジュースのような口当たりのものに分けられ、日本の女性の間で非常に人気があるのです。
このりんごを原料としたシードルを蒸溜させると、アルコール分をぎゅっと凝縮させて抽出することができます。ワインを蒸溜させてブランデーを作るのと同じ要領ですね。
こうしてできた蒸溜酒のことを「アップルブランデー」と呼ぶのです。
カルヴァドスの名前
カルヴァドスはアップルブランデーに属するのですが、なぜカルヴァドスと呼ばれるのでしょうか。
カルヴァドスが通常のアップルブランデーと区別される基準は、その産地が限定されていることにあります。
その産地とは先ほども書いた「フランスのノルマンディー地方」。
ノルマンディー地方は、フランスの北西部に位置する王政時代の州のことであり、世界遺産であるモン・サン・ミッシェルがあることでも有名な土地です。
この土地のもう一つの顔というのが、世界で有数のりんごの原産地ということです。
このノルマンディー地方で製造されたアップルブランデーのみが、カルヴァドスと名乗ることが出来るのです。その他の地域で作られたものは、総称してアップルブランデーと呼ばれています。
産地が限定されているカルヴァドスですが、流通量は決して少なくはありません。
むしろ、カルヴァドス以外のアップルブランデーを飲んでいる人の方が圧倒的に少なく、その流通量の多さから、りんごの蒸溜酒全てのことをカルヴァドスだと思っている人は非常に多いです。
カルヴァドスの歴史
カルヴァドスの歴史は明確ではありませんが、1553年の古文書にりんごの蒸溜酒(シードルブランディ)が作られたという記録が発見されています。それ以前から作られてきた可能性は高く、少なくとも450年以上の歴史があると言われています。
カルヴァドスが世界に広まるきっかけとなったのが、19世紀に起きたフィロキセラの危機です。
フィロキセラとは樹の根に寄生してそこから樹を腐らせてしまう害虫のことで、この影響によりワインを作るぶどうの樹が壊滅的になってしまったのです。
そこで頭角を現したのがりんごを原料としたカルヴァドスだったのです。
一度はワインの代わりとなるほど有名になったカルヴァドスですが、その後の世界大戦によってノルマンディー地方は戦場と化し、カルヴァドスの生産も困難となってしまいました。
そこから現在に至るまで、数々のメーカーや会社がカルヴァドス復興に力を入れ続けた結果、美味しいカルヴァドスを日本でも気軽に飲めるようになったのです。
カルヴァドスの製法
次に製法を見ていきましょう。
通常のブランデーとの製法の違いなどはあるのでしょうか?
収穫から蒸溜まで
カルヴァドスの製法は基本的にぶどうを原料としたブランデーと同じです。
まずは原料の収穫から始まります。カルヴァドスの原料はりんごですが、実際には二つのフルーツを使用することもあります。
使用されるりんごはノルマンディー地方で栽培されたものであり、その中でもカルヴァドスへの使用が認められた48種類のりんごから選び抜かれています。
ここから造られるシードルには大きく分けて4つの風味があり、それぞれ「ビター」「ビタースイート」「スイート」「サワー」です。
ブレンダーによってこれら4種類のシードルが絶妙なバランスでブレンドされてから、ようやくカルヴァドスとしての威厳が持てるということです。
カルヴァドスのもう一つの原料というのが、洋ナシです。
実は規定量までならりんごの他に洋ナシをブレンドすることが認められているのです。
ブレンドする場合は1割~3割程度使用されることが多く、今はりんごと洋ナシの配合率を表記した斬新なカルヴァドスも販売されています。
原料が揃えばそれらを発酵・蒸溜にかけていきます。
ここは他のブランデーと同じ流れですね。蒸溜した後は無色透明の綺麗な液体となります。これは「オー・ド・ヴィー・ド・シードル」、つまりりんごの蒸溜酒と呼ばれています。
オー・ド・ヴィーとは、フランス語で「命の水」という意味の他、蒸溜した水という意味もあるのです。
このオー・ド・ヴィー・ド・シードルは無色透明ですが、カルヴァドスを見たことがある人は「カルヴァドスは色がついているはずでは?」と思ったはずです。その通り、カルヴァドスはこの時点ではまだ完成ではなく、最終工程が残っているのです。
樽熟成が味の決め手
そう、ウイスキーと同じ「樽熟成」です。
樽での熟成を経て初めて一人前のカルヴァドスとなります。これはカルヴァドスと表記をするためにも必須のことであり、さらに最低熟成年数も2年と決められているのです。
また、コニャックやアルマニャックのように熟成年数によってランクが分けられています。
熟成年数が短いものから順に、
- フィーヌ
- ヴィユー・レゼルヴ
- ヴィエイユ・レゼルブ
- VSOP
- オル・ダージュ
- ナポレオン
です。
フィーヌは最低2年、ヴィユー・レゼルヴは最低3年、ヴィエイユ・レゼルブやVSOPは最低4年、そしてオル・ダージュとナポレオンは最低6年以上の熟成年数が義務付けられています。
一般的にブランデーは熟成年数が長ければ長いほどアルコールの角が取れてまろやかな味わいとなりますが、カルヴァドスも同様で熟成年数が長いほど飲みやすくコクのある風味に仕上がります。
この辺りもウイスキーと同じですね。もちろんその分お値段も高くなります。
カルヴァドスのエリアから銘柄を見抜く
カルヴァドスはノルマンディー地方で作られるアップルブランデーのことですが、その中でもカルヴァドスを製造できるエリアは3つに分類されています。
ノルマンディー地方の中でも、指定された3つの地域でしかカルヴァドスを製造することが出来ません。
そしてさらにこの3つの地域では、カルヴァドスの製法や原料にそれぞれ個別のルールが課せられています。
これらをすべて満たしたカルヴァドスは、各地域の名前を製品名に関することが許されています。
こうした地域の呼称を統制している法律がAOCと呼ばれるものです。
「アペラシオン・ドリジーヌ・コントロレ」の略で、フランスの農業製品をはじめ、フランスワイン、チーズ、バターなどに対して与えられる品質保証の制度です。
日本語の正式名称では「原産地呼称統制」と呼ばれています。つまり、その地域の名前を冠するには、AOCで決められた基準をクリアしていなければいけないということです。
これはコニャックやアルマニャックが分かりやすい例といえます。ブランデーの中でも評価の高いコニャックブランデーとアルマニャックブランデーですが、コニャック地方やアルマニャック地方で作られた全てのブランデーがその名を使えるわけではありません。それぞれの熟成年数や原料など全ての基準を満たしていないといけないのです。
このような基準が、カルヴァドス、そしてその各地域にも課せられているということです。
なぜこんなことをするのか?それは、コニャックやアルマニャック、そしてカルヴァドス各地域の名を冠したブランデーが全てしっかりと品質を保っており、そのブランドに恥じない商品であることを確実にするためです。
コニャックという名前なのに品質が悪ければ、一気にその信用を失ってしまいますね。そうした危機を防ぐために、このような原産地呼称統制法が採用されているのです。
エリア1:カルヴァドス・ペイ・ドージュ
最も優れた生産者たちが集まると言われているのがこのカルヴァドス・ペイ・ドージュというエリアです。
ノルマンディー地方中心部分にあるこの地域では、第二次世界大戦後の被害からカルヴァドスを復興させようと多くの優秀な企業が集まった場所なのです。
カルヴァドスがこの「カルヴァドス・ペイ・ドージュ」を名乗るには4つの条件をクリアしなければいけません。
製造地
もちろん、カルヴァドス・ペイ・ドージュ地区で製造されるということです。他の地域で製造されたものは、条件を満たしていてもペイ・ドージュを名乗ることはできません。
原料
二つ目は原料の配合率です。ペイ・ドージュを名乗るには洋ナシの含有量を3割以下にしなければいけません。りんごの名産地であるペイ・ドージュでは、できるだけりんごの風味を生かしたカルヴァドスを多く生産しているのです。
蒸溜方法
ここでは、単式蒸溜器で二回蒸溜と決められています。二回に分けて蒸溜することで、より風味を凝縮させた雑味のないカルヴァドスを作ることが可能になります。この蒸溜方法はコニャックと同様であり、コクのある洗練された蒸溜酒を作るのに適した蒸溜方法なのです。
熟成年数
最後は熟成年数です。ペイ・ドージュのカルヴァドスは最低2年間オーク樽での熟成を経る必要があります。
カルヴァドス自体の最低熟成年数が2年間なので、ここに関してはそこまで厳しくないようですね。
カルヴァドス・ペイ・ドージュの商品は非常に優れたものが多く、りんごの風味をしっかりと感じることのできる代物がたくさんあります。それ故、価格も少し高いものが多いです。しかし、初めてカルヴァドスを飲む方には是非最初に試していただきたい味わいと言えるでしょう。
エリア2:カルヴァドス・ドンフロンテ
カルヴァドス・ドンフロンテ地区は、ペイ・ドージュ地区の南西に位置する小さな地域です。
面積が小さいので、カルヴァドスの生産自体量自体もかなり少なく、全体のおよそ1%程度しか製造していないのです。
しかし、日本での流通量は比較的多く、価格も良心的なので、美味しくて手の出しやすい商品が揃っています。
カルヴァドス・ドンフロンテと名乗るには、ペイ・ドージュ同様4つの条件を満たさなければいけません。
製造地
カルヴァドス・ドンフロンテ地区で製造されたものでなければいけません。
原料
りんごはもちろんですが、ここでは洋ナシを3割以上使用しなければいけないという規定があります。
これは、ドンフロンテ地区がポワレ(洋ナシのワイン)を特産としていることが理由であり、二つのこの地の名産を組み合わせてカルヴァドスを作っているということです。
蒸溜方法
蒸溜はひとつ前のペイ・ドージュとは別で、半連続式蒸溜器を使用することが義務付けられています。これはアルマニャックの蒸溜方法と同じで、長時間かけて一度だけ蒸溜するため、口に残る野性的な風味を表現できると言われています。
熟成年数
ドンフロンテを名乗るには、最低3年間のオーク樽熟成が必要です。ペイ・ドージュよりも一年長くその最低年数を設けています。しかし、どちらも最低年数というだけで、多くはそれ以上の年数をかけて熟成されています。
カルヴァドス・ドンフロンテは、洋ナシの含有量が多いためりんごの風味を絶妙なバランスで柔らかくまろやかに中和しています。香りも優しくとろけるようで、飲みやすさにびっくりする人も多いです。日本人の中でも人気の高いブランドですね。
エリア3:カルヴァドス
カルヴァドス原産地呼称に該当する最後の地域は、単にカルヴァドスと呼ばれる地域です。
3つの中では最も規制が緩い地域であり、カルヴァドスの価格的にも割とお手頃なものが多いです。
カルヴァドス地域というのは、上二つのペイ・ドージュ、ドンフロンテ以外のカルヴァドス製造を認められた地域のことを指します。
つまり、上記二つの地域以外でカルヴァドスを作るには、必ずこの条件をクリアしなければいけないということです。
原料
指定された地域内で採れたりんごや洋ナシを蒸溜・ブレンドして使用されます。それぞれの含有量に規制はなく、より自由で新しい風味を作ることが出来ます。
熟成年数
熟成年数は最低2年間であり、オーク樽での熟成が義務付けられています。2年間以上熟成されるものも多く、15年以上熟成されたカルヴァドスも少なくはありません。
このカルヴァドス地区というのは、正式にはカルヴァドスACとしてくくられています。多くの種類が今も開発されており、伝統的なカルヴァドスとは違った新しい風味を感じさせてくれるのはこの地域のカルヴァドスかもしれません。
カルヴァドスの楽しみ方
カルヴァドスは製造方法こそ普通のブランデーと変わりありませんが、そこにりんごや洋ナシといったフルーツが含有されるため、味わいや香りは全く異なるものとなります。
ブランデーに慣れない人が初めに通る道としても有名であり、女性にも飲みやすい人気のお酒です。
ウイスキーが好きな方に好まれることも多く、BARなどではバーテンダーさんがモルト好きの方におすすめすることもよくあります。
そんなカルヴァドスですが、どのようにして楽しむのが一番なのでしょうか?飲み方やその他の使い方を見てみましょう。
おすすめの飲み方
カルヴァドスはウイスキーやブランデーよりも甘みがありますが、度数は最低40度と意外にも強いお酒です。香りから想像する味わいとはかなり違うものになっています。それゆえ、カルヴァドスの飲み方には色々な方法が試されてきたのです。
ストレート
やはり一番のおすすめはストレートです。あまりストレートで飲まない方は、喉への刺激に最初はびっくりしてしまいますが、慣れるとその刺激も心地よくなってくるはずです。
色や粘性、複雑なフレーバーを確かめるにはこの飲み方でしょう。
ロック
ストレートがきついという方は、ロックで冷やして飲むとより飲みやすくなるのでおすすめです。ウイスキーに使うような丸い溶けにくい氷を使うと、風味を薄めることなく楽しむことが出来ます。
りんごジュースで割る
初めてカルヴァドスを飲む人におすすめなのは、カルヴァドスをりんごジュースで少しだけ薄めて飲むという方法です。カルヴァドスはもともとりんごを原料としているので、リンゴジュースが混ざっても違和感なく甘みが強い飲みやすい風味になります。
ご自宅でも試しやすい飲み方ですね。
レモンをプラス
カルヴァドスはウイスキーと同じくアルコ―ル度数の高いお酒です。アルコールの刺激にどうしても苦手意識を持ってもしまう人も多いでしょう。
そんな方は、カットレモンと一緒に飲むと良いです。
レモン果汁を口に含んでからカルヴァドスを飲むと、アルコール感が緩和されてよりカルヴァドスの風味をじっくりと楽しむことが出来るはずです。
おすすめの食べ方
パンに使う
冒頭で軽くお話ししましたが、日本ではカルヴァドスをパンやスイーツに使うことが圧倒的に多いです。これはプロだけではなく一般の方でも簡単に使用することが出来るのです。
カルヴァドスを使う際に最もおすすめなのは、アップルパイに少しだけ加えるという方法です。アップルパイの生地に少量練りこむとフルーツの部分以外だけでなく、全体からりんごの芳醇な香りを漂わせることが出来ます。
アップルパイのジャムの部分にカルヴァドスを加えると、甘いりんごが少し完熟感や重厚感を持ち、大人の味わいに仕上げることが出来ます。
有名なブーランジェリー(パン屋)では、必ずと言っていいほどカルヴァドスが使われています。ご自宅でプロの味を表現するのも一つの楽しみ方だと言えるでしょう。
スイーツに使う
カルヴァドスをパイやパンに使うのであれば、スイーツにだって使うことが出来るのでは?と思った方、
その通りです。
カルヴァドスはアップルパイほどではないですが、スイーツにも多く使われている優れたお酒です。
スイーツに使うときに最も多いのが、ドライフルーツをカルヴァドスで漬け込むという方法です。それこそドライアップルの漬け込みなんかはもちろんですが、そのほかにも洋ナシやレーズンなんかにも非常によくあいます。
銀座の某有名レストランでは、クリスマスのシュトーレンに「シュトーレン・カルヴァドス」という商品を出されていたほどです。カルヴァドスをふんだんに効かせたこの商品は、即売り切れになっていました。
ちなみにシュトーレンとはフランスの伝統菓子で、多くのドライフルーツをパンに練りこみ、その周りを砂糖で覆ったものです。クリスマスがくるまで毎日一切れずつ家族で食べるというのが伝統なのです。家族でカルヴァドスを使ってシュトーレンを作れば、クリスマスまでの楽しみも一つ増えていいかもしれませんね。
おすすめカルヴァドス
たくさんの魅力にあふれたカルヴァドス、ここからはその魅力を存分に味わえる「おすすめカルヴァドス」をご紹介していきましょう。
まだカルヴァドスを飲んだことのない初心者からもっとカルヴァドスを知りたい中級者まで、どんな人でも楽しめる素敵なカルヴァドスを見つけましょう。
まず軽い→重い順におすすめカルヴァドスをご紹介いたします。その後に最近飲んだBARREL編集部おすすめを少し置いておきますね。
(今回もBARレモン・ハートの古谷氏にもちょこっと監修いただいてます。)
ブラー グランソラージュ
カルヴァドスの代名詞といえばブラー社。
ブラー社が作るカルヴァドスはサントリーが販売していることから、日本でも比較的認知度の高い銘柄です。フランスでの評価も申し分なし、まずはここを通らなければカルヴァドスは語れないでしょう。
ブラー社は1825年にペイ・ドージュ地区の中心となる街に建てられ、それ以来優れたペイ・ドージュブランドを生み出してきました。
「グランソラージュ」は最良のりんごを生み出す「偉大なる土壌」という意味を持っています。
2~5年熟成の、若くピチピチしたフレッシュなりんごの香り。熟成感はそこまでありませんが、オーク樽のニュアンスも感じられます。
お値段的にもはじめてのカルヴァドスにはぴったりのボトル。
シャトー・ド・ブルイユ フィーヌ カルヴァドス
カルヴァドス・ペイ・ドージュ地区にかまえるシャトー・ド・ブルイユ社の一品であるこのカルヴァドスは、カルヴァドスを初めて飲む人からブランデー好きまであらゆる層のファンを獲得している商品です。
ペイ・ドージュ地区に43ヘクタールもの畑を持つこのシャトー・ド・ブルイユ社。ここで単式蒸溜を経てから、フレンチ・オークの樽でじっくりと寝かせています。風味はりんごのフルーティな味わいがしっかりと表現されており、それでいてペイ・ドージュならではの飲みごたえのある一品です。
価格は3,000円代~5,000円と非常にお手頃。初心者でも始めやすいカルヴァドスではないでしょうか。
あまり価格差がないのであれば、「V.S.O.P」もおすすめです。
ルモルトン レゼルヴ
ドンフロンテ地区にある農園、ルモルトン家が自家蒸溜・熟成して造る、フランスを代表するカルヴァドス。
ルモントンのカルヴァドスはパリをはじめ、フランス各地の高級レストラン(タイユヴァンやトゥールダルジャンなど名門ホテルに納入)で高評価を受けています。
レゼルヴは約5年熟成。
柔らかい口当たりが特徴で、ジンジャエール割り、トニック割りなどでスタートにいただくのも美味しいカルヴァドスです。
デュポン V.S.O.P
ペイドージュ地区に東京ドーム6個以上(約30ヘクタール)の農園を持っているデュポン。6,000本を超えるりんごの木が植えられており、13の品種を扱っています。
世界的にも有名なブランドで、フランス国内はもちろんイギリスでは高級百貨店として名高いハロッズやフォートナム&メイソンなども扱っています。
V.S.O.Pは4年以上の熟成品。バランスに優れ、りんごの爽快感、そしてしっかりとオーク樽の風味。ローズのような花の香りもまとっています。
もう少し出せばひとつ上のオルタージュも買えるのでより完熟なりんご感、ウッディネスがお好みの方はこちらもおすすめ。
シードルやリキュール、りんごジュース(激うま)なども製造しており、カルヴァドスにも豊富な種類のラインナップがあります。(2018年末で20商品くらいあります)
ローリストン オルダージュ
パリの農産物コンテストで金賞、サン・ティレール・デュ・アルクエの最高賞をはじめ、50年に渡り200以上のメダルを獲得している「ローリンストン」。次項でも紹介しますが、カルヴァドスの雄「クール・ド・リヨン」を製造しているクリスチャン・ドルーアン社のオーナー“クリスチャン・ドルーアン氏”が手掛ける銘柄です。
古酒ヴィンテージコレクションを持ち合わせていることも有名で、1950年代のヴィンテージカルヴァドスも多く所有しています。
オルダージュは比較的若めの銘柄ですが、ブランド特有の可憐で上品な風格が漂っています。
りんごや洋ナシの甘くフルーティーなフレーバーはもちろん、滑らかな舌触りが特徴的。口に含むとチョコレートの香りやオーキーな味わいを感じる事ができます。
ロジェ・グルー 8年
カルヴァドスの最上級品を産出するペイ・ドージュ地区のほぼ中央に設立されたロジェ・グルー社。
約50種類のりんごを原料に自然発酵でシードルを作り、半年以上寝かせ味わいに深みをプラス。薪を使い、直火でゆっくりと蒸溜。単式蒸溜器で一次蒸溜したアルコール度数30%の原酒を、オーク樽で数ヶ月熟成させた後、再度70度まで二次蒸溜し、再びオーク樽で熟成させるという独特の製法をとります。
黒糖やかりんとうのような濃い香り立ちが特徴でシナモンのようなスパイシーなニュアンスを感じさせます。
口に含むとりんごのコンポートのような風味とスパイス感、辛口でいてスムースな口当たりはやみつきになります。
クール・ド・リヨン V.S.O.P
おすすめブランデーの記事でも紹介したクール・ド・リヨンはノルマンディー地方中心部のりんごの優良生産地ペイ・ドージュ地区で造られています。
ペイドージュ地区の中でも、特に優良といわれるフィエフ・サンタンヌにりんご園を保有し、蒸溜、熟成、ブレンディングの全てを自社で行っています。
熟成期間は5~14年、平均して8年前後でしょうか。若い原酒も混ぜ合わすことでスイートなフレーバーをオン。
バニラや焼き菓子のような風味と深く長い余韻が特徴的です。
世界でも最も歴史と権威のある酒類コンペティションのひとつ、 IWSC(インターナショナル・ワイン・アンド・スピリッツ・コンペティション) のヨーロピアン・スピリッツ・プロデューサー部門でトロフィーを受賞しています。
編集部おすすめカルヴァドス
ここからは独断と偏見でBARREL編集部が選びました。
上記より少し熟成年数が高いもの、つまりお値段が張るものも含まれます。でも美味しいですよ。
クール・ド・リヨン・ポム・プリゾニエール
こちらもクリスチャン・ドルーアン社が1979年に発売を開始したクール・ド・リヨンの銘柄です。ドルーアン社はカルヴァドスACの製品も多く保有しており、フルーティで飲みやすいと評判が高いです。
見た目にもわかりやすくおすすめなのは、ペイ・ドージュ地区認定の「クール・ド・リヨン・ポム・プリゾニエール」です。
瓶の中に丸ごとりんごが入ったその見た目から、日本でも非常に人気の高い商品として知られています。
熟成は約5年、若いりんごの風味を楽しむことができます。ストレート、ロック、どちらもおいしい。
その見た目もインパクトがあるので、プレゼントなどにも人気の商品です。ちなみにりんごは瓶の中で育てられています。
ルモルトン 15年
続いて、初心者へのおすすめでも紹介したルモルトンの長熟版です。
ルモントンというブランド自体非常に評価が高く、フランス以外でもヨーロッパの各有名レストランで使用されている間違いない一品です。
ドンフロンテ地区と言えば、洋ナシを3割以上使うことが義務付けられています。
このルモルトン15年もふんだんに洋ナシを使用しており、15年の間じっくりとオーク樽のなかで熟成されています。非常に柔らかい舌触りが特徴で、その甘みは豊かでリッチ。ひとたび口に含むと一気に洋梨の香りが広がります。オレンジのようなフレーバーもあります。
25年は更なる風味を伴っています。
ブラー X.O.
8~40年の熟成を経た原酒を綿密にブレンドしているブラー・X.O.は、熟成感とフレッシュ感、そして価格のバランスが絶妙な逸品。
日本でも簡単に入手可能であり、完熟した深みのあるりんごの風味を存分に楽しむことが出来ます。
華やかな香り、アーモンドを焼いたようなナッツの香ばしさが印象的です。甘味はきつくなく、なめらかな舌触りでスイスイと飲めてしまうきれいなカルヴァドス。
価格は販売元によって差がありますが、大体5,000円代で見つけることが出来ます。X.O.規格の中では非常にお手頃価格だと言えるでしょう。
簡単にではありますが、カルヴァドスについて解説しました。
カルヴァドスはりんごを原料とし、ぶどうを原料とするブランデーとは全く違う魅力をたくさん持っていることが少しでも伝わったかと思います。
カルヴァドスにも多くのブランド、ヴィンテージがあります。
さぁ、今日からあなたにぴったりのカルヴァドスを見つける旅に出ましょう。
そして、カルヴァドスを飲むことをご褒美に、毎日を少しだけ贅沢に変えてみてはいかがでしょうか。