今週、世界的スピリッツ企業3社が相次いで数字を公表しました。
ディアジオは北米本社の従業員を3割超削減、ブラウン・フォーマンは減収でのスタート、ペルノ・リカールは3年連続の売上減。
わかりきっていたことではあるのですが、こう揃うとつらいものがあります。
三社の状況を、まず数字で整理すると

気になる方も多いと思うので、まず全体像を数え上げで整理します。
第一に、ディアジオは北米本社の839人のうち305人、実に3割超を削減する方針を固めました。
第二に、ブラウン・フォーマンは2027会計年度の第1四半期の売上高が前年比1%減の9億1,100万ドル(約1,448億円)でスタートし、通期もほぼ横ばいの見通しです。
第三に、ペルノ・リカールは2026会計年度の売上高が前年比3.9%減の94億ユーロ(約1兆7,390億円)となり、これで3年連続の減収となりました。
ディアジオ、本社にまで刃が及んだ再編
ディアジオは新CEOのデイビッド・ルイス氏のもとで、世界全体で2,000人規模の人員削減を進めています。
全従業員27,000人超に対する比率としては一桁台にとどまりますが、しわ寄せが集中しているのが北米本社です。
ニューヨーク州労働局への届出(WARN)によると、削減対象は305人。
本社の839人という規模から見れば、3割を超える規模です。削減は今月末から始まり、1年ほどかけて実施される見込みです。

スコットランドの蒸溜所側でもすでにお伝えした通り、カーデュ、クラガンモア、ポート・エレン、ダフタウンの4拠点で172人が対象となっています。
キャメロンブリッジ蒸溜所では人員削減を巡ってストライキの是非を問う投票も始まりました。
カナダのオンタリオ州では工場閉鎖を巡って州政府と正面から対立する場面もありました。
本社・生産拠点・販売網のすべてで同時に再編が進んでいるというわけです。
ブラウン・フォーマンとペルノ・リカール、明暗の分かれ目
ブラウン・フォーマンについては、買収騒動からの再建の行方をお伝えしてきました。
今回発表された第1四半期は、売上高が前年比1%減の9億1,100万ドル(約1,448億円)、営業利益は3%減。
ジャックダニエル本体は横ばいを保ったものの、テネシーハニーやジェントルマンジャックは8〜10%落ち込みました。
一方でレディ・トゥ・ドリンクは20%増と好調で、通期の売上高はほぼ横ばいという見通しを据え置いています。
地域別では、米国が3%減、ドイツ・フランス・スペインを含む先進国市場が6%減となる一方、メキシコを中心とした新興国市場は11%増と伸びています。アイルランドのスレーン蒸溜所の生産停止など、構造改革は並行して続いています。
ペルノ・リカールも似た構図です。売上高は前年比3.9%減の94億ユーロ(約1兆7,390億円)。
主因は米国と中国で、この2市場だけで全体の24%を占めながら、合わせて19%の落ち込みを記録しています。逆にこの2市場を除けば、全体では0.5%のプラスです。
トルコが26%増、ナイジェリアが18%増、インドが7%増と、新興国が下支えしている構図はブラウン・フォーマンとも重なります。
ジェムソンも米国では苦戦しつつ、それ以外の地域では9%増、中国では2桁成長を続けています。
同社は一時ブラウン・フォーマンの買収も検討していましたが、その後この件からは撤退しています。
米国・中国という二大市場の停滞を、新興国の成長でどこまで補えるか。3社が抱える課題は、驚くほど似通っています。
三社の数字を並べてみると、見えてくるのは同じ構図です。米国とヨーロッパという伝統的な市場では在庫調整とコスト削減が続き、そのしわ寄せは工場や本社の雇用にまで及んでいます。
一方で成長の芽は、インドやトルコ、ナイジェリア、メキシコといった、これまで「その他」として扱われがちだった市場に集中しています。
ウイスキー業界の重心が、静かに動き始めているというわけです。
日本はこの構図の中で、やや宙ぶらりんな位置にいます。
急成長中の新興国ほどの伸びしろがあるわけではなく、かといって米国や西欧ほど需要が縮んでいるわけでもありません。
ジャックダニエルの値上げのように、コスト増を価格に転嫁する動きはすでに国内でも起きています。今後、各社が経営資源をどこに振り向けるかによって、日本の店頭に並ぶラインナップや価格が静かに変わっていく可能性がありそうです。
3社がそろって同じ問題を抱えているという事実は、個社の経営判断の話にとどまらない、業界全体の転換点を示しているのかもしれません。









