フランスの名門酒販店ラ・メゾン・デュ・ウイスキー(LMDW)が、2026年のコレクションを相次いで発表しています。
看板シリーズ「アーティスト」は15年間守ってきたスコッチ限定の縛りを外し、初めてラムを主役に据えました。
同時に発表されたマルスウイスキーとの単一樽セットでは、鹿児島の津貫蒸溜所が中心に据えられています。
2026年のLMDWを彩る三つの企画

今年のLMDWの新作は、大きく三つに分かれます。
第一に、マルスウイスキーとの毎年恒例の単一樽セット。今年は津貫蒸溜所そのものにフォーカスし、蒸溜所内熟成と屋久島熟成を対比させた4本組です。
第二に、看板シリーズ「アーティスト」の第16弾。これまで15回すべてスコッチだった枠に、マルティニークのラム蒸溜所ネイソンが初めて選ばれました。
第三に、ブラントン・バーボンの人気銘柄ブラントンとLMDWの独占契約20周年を記念した、宝石をモチーフにした5樽のセットです。

津貫と屋久島、熟成環境がつくる違い
マルスウイスキーとLMDWの協業は2015年に始まり、2022年からは毎年、単一樽セットを発表しています。2023年は津貫と駒ヶ岳の原酒を組み合わせ、2024年は樽の種類とピートレベルに焦点を当てました。
今年は津貫蒸溜所そのものに絞り込み、熟成場所の違いを軸にしています。同じ津貫の原酒でも、蒸溜所内で熟成させたものと、屋久島の熟成庫に送られたものとでは、仕上がりがまったく異なるという狙いです。
BARRELでも以前、津貫と厚岸の原酒を交換して熟成させた「モルトデュオ」をお伝えしましたが、
南北の蒸溜所が共演!「マルスウイスキー モルトデュオ 津貫×厚岸 2024」と「カムイウイスキー®カパッチリカムイ」同時発売
異なる環境で熟成させて違いを検証するという発想は、本坊酒造がマルスウイスキー全体で一貫して追求してきたテーマです。
屋久島エイジングセラーを使った熟成も、過去にBARRELで紹介した「化物尽絵巻」シリーズの第三弾にすでに登場していました。
今回のセットは4本組です。もっともピートの効いていない『9年 2017 ライトリーピーテッド・シェリーカスク』は3.5ppmで、津貫蒸溜所内で9年熟成。
もっとも強く炭を感じさせるのが『8年 2017 ピーテッド・シェリーカスク』で、こちらは50ppmのピート原酒をシェリーパンチョンに詰め、屋久島で8年熟成させています。
面白いのは『5年 2020 ピーテッド・バーボンバレル』の2本で、蒸溜年もピートレベルも樽種もまったく同じ原酒を、片方は屋久島、もう片方は津貫でそれぞれ熟成させたペアになっています。
屋久島は寒暖差と湿度が津貫よりもさらに激しく、天使の分け前も大きくなるとされ、原酒と樽の相互作用がより強く出るとLMDWは説明しています。

スコッチ限定という縛りを外した理由

LMDWのアーティストシリーズは2011年の創刊以来、15回にわたって毎回スコッチのシングルモルトを起用してきました。
今年の第16弾で初めて選ばれたのが、マルティニークのラム蒸溜所ネイソンです。
ラインナップは、70度の単一区画ホワイトラムから始まり、オロロソシェリー樽フィニッシュ、バーボン樽熟成、そしてミズナラ樽フィニッシュを経て、コニャック樽で熟成させた11年物まで、5本でネイソンの個性を一通り辿れる構成になっています。中でもミズナラ樽フィニッシュの1本は、日本のウイスキーファンにも親しみやすい要素と言えそうです。
同時期に発表されたブラントンの20周年セットは、LMDWとの独占契約が始まった2006年から数えて20年の節目を記念したもの。
ルビー、エメラルド、サファイアをそれぞれモチーフにした5樽が用意されています。
一つの酒販店が、日本の蒸溜所とフランスの伝統的スコッチシリーズ、そしてカリブのラムを同時に手がける。
LMDWの2026年のラインナップは、ウイスキー専門店という枠自体が少しずつ広がっていることを示しているのかもしれません。









