バルヴェニー蒸溜所が、1931年蒸留・88年熟成のシングルモルトを発表しました。
わずか17本限定のこの一本は、これまでの記録を塗り替える世界最長熟のスコッチウイスキーです。
88年、そして17本という数字の中身

今回発表された「バルヴェニー・エイティエイト・イヤーズ・オールド」は、1931年3月5日に蒸溜され、スペイン・ヘレス産のヨーロピアンオーク・シェリーバット(カスクNo.239)に詰められました。
蒸溜所のダフタウンにある熟成庫で保管され続け、現マスターブレンダーのケルシー・マッケックニー氏が2019年に機が熟したと判断し、ボトリングに至っています。
度数は43.2%、世界でわずか17本という極端な限定数で、公式には価格を発表せず、選ばれた個人顧客・コレクターへの提供に限られるとのことです。
熟成中、原酒が失われるリスクと常に隣り合わせだったことも明かされています。
マッケックニー氏は、当初の大樽のまま置いていれば原酒をすべて失っていた可能性があると振り返り、劣化を防ぐために途中でより小さな樽へ移し替えたと説明しています。
ボトルは職人による手吹きクリスタルのデカンタに納められ、アーティストのダニエル・アーシャム氏が手がけた彫刻作品の中に収められています。

彫刻の裏面には88層のオークが施され、廃棄されたポットスチルから作られた銅製のディスクが飾られているとのことです。
この「1931年コレクション」は、9月2日から5日にかけて韓国のアートフェア「フリーズ・ソウル」で世界初公開される予定です。

記録を更新し続ける「最古のウイスキー」争い
世界最長熟スコッチの記録は、ここ数年で目まぐるしく更新されてきました。
独立系ボトラーのゴードン&マクファイル(G&M)は2022年に80年熟成のグレンリベットを、2025年には85年熟成のグレンリベット1940を発売し、当時の世界記録を更新しています。
今回のバルヴェニー88年は、このG&Mの記録をさらに3年更新した格好です。G&Mが独立ボトリング事業の終了を発表し、自社が保有する希少な熟成原酒そのものに軸足を移しつつある中、蒸溜所を保有する側のウィリアム・グラント&サンズが、この争いに割って入ってきた形とも言えそうです。
50年・60年から続く、超熟デカンタの系譜
バルヴェニーはこれまでも、マルトマスターのデイヴィッド・スチュワート氏の在籍記念として超熟ボトルを手がけてきました。
50年熟成(2012年発売、88本限定)は希望小売価格2万ポンド(約433万円)、60年熟成(2022年発売、71本限定)は14万5,000ドル(約2,316万円)です。
今回の88年は、原酒の蒸溜自体がスチュワート氏の入社(1962年)よりさらに30年以上さかのぼる点で、これまでのシリーズとは性格が異なります。
手吹きクリスタルのデカンタという意匠面では50年・60年の系譜を引き継ぎつつ、中身の由来は次世代のマッケックニー氏が独自に発掘した原酒という位置づけです。
バルヴェニーは日本国内ではサントリーが正規販売元を務めていますが、今回の88年は世界17本という規模のうえ、価格非公表かつ個人顧客・コレクターへの直接提供という販売形態のため、国内の店頭に並ぶ可能性はほぼないとみられます。1931年コレクションには12年・15年の熟成品も含まれており、こちらの国内展開があるかどうかは今後の発表を待つ必要がありそうです。









