スコッチウイスキー業界の著名な企業から、市場の動向を示す重要な財務報告が発表されました。
人気蒸溜所であるグレンゴイン、タムデュー、そして待望の復活を遂げたローズバンクなどを所有する「イアン・マクロード・ディスティラーズ」が、過去数十年で最大となる大幅な減収減益を記録したことが明らかになりました。
過去数十年で最大の落ち込み

2025年6月23日に公開された、2024年9月30日を期末とする年次決算報告によると、同社の税引前利益は1,560万ポンド(約31億円)となりました。
これは、前年の3,380万ポンド(約67億円)から半減以上となる数字です。
さらに、グループ全体の売上高も前期の1億6,050万ポンド(約319億円)から1億2,820万ポンド(約255億円)へと25%の減少を記録しました。
同社はシティAMに対し、「今回の取引減少は、コロナ禍の小規模な影響を除けば、過去数十年で初めての大きな業績反転です」とコメントしており、状況の重要性がうかがえます。
背景にある市場の変化

この業績反転の背景には、世界的な需要の変化があります。
イアン・マクロード社は、ここ数年、瓶詰めされた製品(ケースグッズ)と樽のまま取引されるウイスキー(バルク販売)の両方で、世界的な需要の恩恵を受けてきました。
この需要は2022年から2023年にかけてピークに達したと分析されています。
しかし今回の報告では、特にアジアを中心とした輸出市場で、瓶詰め製品(ケースグッズ)の需要が「軟化」したことが指摘されています。
一方で、樽のまま輸出されるスピリッツの需要は横ばいを維持したとのことです。
将来への展望
厳しい結果とはなったものの、同社は黒字を維持しており、市場が安定し、緩やかな成長軌道に戻りつつある兆候も見られると前向きな姿勢を示しています。
現在および将来の成長を支えるため、運転資金と在庫への大規模な投資を継続しており、今後の市場回復を見据えた戦略を進めている模様です。
今回の発表は、近年のウイスキーブームが新たな局面を迎えていることを示す一つの指標と言えるかもしれません。