鹿児島県霧島市の横川蒸留所は、ウイスキー製造開始日である2023年5月31日を数字に冠した新商品「シングルモルトウイスキー 霧島 531」を8月30日に発売します。
価格は13,500円、700ミリリットルでアルコール度数は53.1パーセントです。
免許取得の2年3ヶ月と、届かなかった恩返し

横川蒸留所の前身は、昭和24年から焼酎を造ってきた黄金酒造です。
長年培った蒸留技術を生かし、2023年からウイスキー製造に乗り出しました。
もっとも、免許取得までは平坦な道のりではなかったようです。申請から取得までに2年3ヶ月を要し、思うように進まない時期が続いたといいます。この時期を支えたのが、蔵元の高校の先輩にあたる松本純氏でした。奔走してくれたおかげで無事に免許が下り、2023年5月31日にウイスキー製造の第一歩を踏み出せたということです。
「531」という数字には、その日への感謝とともに、これから先も忘れないという蔵元の誓いが込められています。松本氏は今年3月19日に亡くなっており、完成したウイスキーを直接手渡すことは叶わなかったそうです。

「霧島」はすでに動き出していたブランドだった
今回の「531」は、実は横川蒸留所にとって初めてのウイスキーではありません。
同蒸留所は2024年秋から、シェリー樽と赤ワイン樽の原酒をブレンドした「霧島」シリーズを毎年展開しており、犬や猫をあしらったラベルの「アニマルコレクターシリーズ」としてコレクション性を打ち出してきました。
「531」はこの既存ラインに合流する形の、免許取得の節目を記念した特別編集という位置づけになります。
一番搾り、乳酸発酵、低温蒸留という三本柱

横川蒸留所が掲げる製法は三つあります。麦芽から抽出した麦汁のうち、雑味の少ない一番搾りだけを使う一番搾り製法。発酵段階で乳酸菌の働きを促し、完熟果実を思わせるエステル香を引き出す乳酸発酵製法。そして熱による原酒の変質を抑えながらゆっくり蒸留を進める低温蒸留製法です。
「531」はこれらの原酒を、ミズナラ樽・シェリー樽・赤ワイン樽で個別に熟成させたうえでブレンドしており、樽ごとの個性を重ねた複雑な香味を狙った一本ということです。
焼酎蔵が描くウイスキーの次の一手

横川蒸留所はこれにとどまらず、老朽化した第二の蒸留所の再稼働に向けたクラウドファンディングも実施するなど、生産拡大に向けた動きを見せています。焼酎需要の縮小が続くなか、蒸留技術を軸に新しい柱を育てようとする姿勢は、熊本の山鹿蒸溜所や山形の遊佐蒸溜所など、同じ道をたどる九州・東北の蔵元とも重なります。
免許取得の苦労を数字に刻んだ「531」は、そうした挑戦の通過点を示す一本といえそうです。
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