おすすめの飲み方・飲み進め方
知る人ぞ知るハイコストパフォーマンスウイスキー「ハイランドクイーン」です。
海外には50年を超える長熟品もあり、歴史あるブランドです。国内でも時折リミテッドエディションがポコッと顔を出したりします。
飲むなら12年以上のものがいいかなと思います。
スタンダード品はあまり面白みがないですし、同じ金額なら代替品があるって感じでしょうか。
飲み方ですが、ノンエイジの短熟品はハイボールが良いでしょう。夏らしい飲み物です。
比較的新作であるシェリーカスクはストレートでよいと思います。けっこうシェリー強いです。ゴリゴリの格安シェリーブレンデッドといった感じで、軽めですがシェリー樽好きな人は好きって感じです。やや硫黄っぽさがあるので、苦手な方は避けましょう。
12年、16年はコスパがとても高い。っていうかタリバーディンうまい。
おすすめは1561シリーズの30年です。
30年物のブレンデッドウイスキーにしてはかなり格安であり、リーズナブルに長熟を味わってみたいという方にはうってつけ。
甘酸っぱさとナッツの風味が香る落ち着いた味わいで、グレンモーレンジィなどが好きな方はツボでしょう。
ボディは軽いですが、ゆるゆるとストレートで飲みたい夜にぴったりな一本。モルトマニアのリピーターも非常に多い商品ですね。
ボトル一本買うのは怖いという方は、お試し30mlから味わってみてはいかがでしょう。
オールドボトルは通販でもオークションでも結構見かけます。
グレンモーレンジィやグレンマレイの原酒を使用したオールドハイランドスタイルのブレンデッドウイスキーを飲んでみたい!という方は探してみるのもよいでしょう。
おすすめは「ハイランドクイーン15年 グランド15」です。レトロなラベルも可愛い逸品。
ハイランドクイーンの発祥と製造場所、歴史の紹介
名前の由来は「悲劇の女王」
ブランド名の悲劇の女王と呼ばれたスコットランドの女王「メアリー・ステュアート」がモデルとなっています。
彼女は1542〜1587年の間、波乱万丈の人生を送った女性でした。
音楽や作詞家としての才能に溢れ、更には美貌の持ち主だった彼女ですが、不幸は生まれた直後から訪れます。
まずメアリーの生後1週間で父ジェームズ5世が死去、彼女は王位の座を継がなければならなくなります。
15歳にしてフランス皇太子のフランソワの元に嫁ぎ、何事もなければフランスとスコットランドの2ヶ国を治めるはずでしたが結婚から3年後にフランソワは亡くなり、メアリーはわずか18歳で未亡人となってしまいます。
失意を胸にスコットランドへ帰郷し、義兄弟のダーンリー卿と再婚しますがこの結婚もうまくいかず、しかもダーンリー卿は何者かに殺害されてしまいます。
その後ボスウェル伯ジェームズ・へバーンと再々婚しますが、彼はメアリーの元夫のダーンリー殺害に関わっていのではないかと疑問視されている人物でした。
更に2ヶ月後にスコットランドの内乱によってメアリーは女王の座を剥奪されてしまいます。
そして晩年はイギリス英国エリザベス女王の暗殺に加わった容疑をかけられ、長い間投獄された後、最終的に処刑される…なんとも壮絶な人生を送りました。
なんだか、書いているだけで悲しくなってきます。。。
唯一の救いはダーンリー卿との間に産まれた彼女の一人息子ジェームズ6世は英国の王位を継ぎ、ジェームズ1世となったことでしょう。
エリザベス女王には息子がおらず、彼女の血縁者であったメアリーの息子が英国王家の後継に選ばれました。
リースの街から成りあがったマクドナルド&ミュア社
ハイランドクイーンをリリースしたマクドナルド&ミュア社は1893年創業、ロデリック・マクドナルドとアレクサンダー・ミュアの2人によって創られた会社でした。
ハイランドクイーンは創業と同年(1893年)にリリースされています。
同社はウイスキーの高いブレンディング技術によりリースの街で急成長を遂げました。
当初はブレンディングのみを行っていましたが、1918年にグレンモーレンジィ蒸溜所を、1923年にグレンマレイ蒸溜所を買収し、やがてこの2つがハイランドクイーンの原酒として使われるようになります。
現在シングルモルトとして著名なグレンモーレンジィも、当時は生産した原酒の大多数をブレンデッド用に提供しており、1960年代に入ってからようやくシングルモルトとしての提供を始めました。
またグレンマレイも完全なるブレンド用モルトとして使用されてきましたが、1970年代になってシングルモルトとしてのリリースが始まります。
こう見ると著名なシングルモルトも飲まれ始めたのはごくごく最近なのです。
マクドナルド&ミュア社はリースの町にあり、ここは昔メアリー女王がフランスから帰国したときに降り立った場所だったそうで「ハイランドクイーン」というブランド名が付けられました。
そのためラベルにはメアリーがスコットランドへ帰国した年「1561」と白馬に跨るメアリーの勇姿が描かれています。
長きに渡りマクドナルド&ミュア社〜グレンモーレンジィ社にて製造と販売を行ってきましたが、現在は「メゾン・ミッシェル・ピカール社」が「ハイランドクイーン」のブランド権利を買い取り販売しています。
ピカール社(ミッシェル・ピカール社)はフランスの小さなワイン商でしたがワイン畑やボトリング施設に投資しながら成長し、2008年にグレンモーレンジィ社からリリースされているブレンデッド「ハイランドクイーン」と「ミュアヘッド」の権利を買収しました。
現在スコットランドにタリバーディン蒸溜所を所有する大企業となりました。
よって現在のハイランドクイーンはタリバーディンの原酒をキーモルトとしている、と考えられます。
ハイランドクイーンの製法
ハイランドクイーンはもともとマクドナルド&ミュア社時代から所有していたグレンモーレンジィ蒸溜所とグレンマイ蒸溜所の原酒がキーモルトとして使われていました。
しかし2008年にピカール社がハイランドクイーンのブランド権を買い取ってから、ピカール社が所有するタリバーディンの原酒がキーモルトとして使われていると考えられています。
もちろんブレンデッドレシピは企業秘密ですから、はっきりと明かされてはいません。
しかし自社で造っているブレンデッドウイスキーに自社製のモルト原酒が入っているのが普通…と考えるべきでしょう。
したがって昔と今のハイランドクイーンはテイストが異なります。
気になった方はバーなどでオールドボトルを見かけた際に飲み比べすることをお勧めします。
ハイランドクイーンの種類/ラインナップ
ハイランドクイーン
こちらは現在流通しているハイランドクイーン。
少し大きめの酒屋さんなどで2千円程度で販売しているコストパフォーマンスの高いボトルとなります。
ボトルに刻まれた白馬に跨ったメアリーの絵も現在です。
香りはバニラやカカオ、そして何処か人工的でエステリックな香り、炙ったプラスチックのような癖も少々あります。
口に含むとトロみのある液質で、初めはハニートースト、ミルクチョコの甘味とポン菓子の香ばしさ、すっきりとしたウッドスパイス、後半に干し草の風味も感じられます。
加水すると香りが開きフレッシュな一面も感じられるため、水やソーダ等で割りながらじっくり楽しむことをおすすめします。
ハイランドクイーン シェリーカスクフィニッシュ
こちらは2018年の暮に刷新されたラインナップの1角。
ハイランドクイーンをシェリー樽で後熟したボトルとなります。
香りは麦菓子やマジパンの香ばしさと甘み、ナッティ、カシス、オレンジピール、奥に微かなスモーキーさも感じます。
口に含むとシルクのように滑らかな舌触りで、枝付きレーズンやデーツの甘み、カシスの艶やかなフルーツ感とシェリー樽由来であろうスパイシーさが同居して実に複雑な風味を楽しめます。
ウッドスパイスの効いた長めの余韻も◎。
タリバーディンの苦手とされる部分をうまくシェリーで覆い隠したような、ノンエイジのブレンデッドウイスキーとは思えない実によく出来たバランスのボトルです。
〜マジェスティシリーズ〜
蒸溜所かは明かされてはいませんが、ハイランドにある何処かの蒸溜所で造られた原酒を使って造られたシングルモルトシリーズです。
恐らくタリバーディンかと思います。
ハイランドクイーン マジェスティ12年
マジェスティシリーズの12年もの。原酒はおそらくタリバーディンと考えられます。
香りは華やかでフローラル、熟れたオレンジ、トフィー、ドライプラムなどのフルーティで甘やかなアロマ。
味わいは芳醇なレーズンやドライプラムの甘みとビターチョコのカカオ感、洋梨のタルト、若草、シナモンスパイス。フィニッシュにブドウの皮のようなタンニン。
ジム・マーレイ著ウイスキーバイブル2013にて86.5ポイントを獲得している優等生的なモルト。
かなり上品なモルトでナッツの香ばしい甘みがある。ブレンデッドの12年を飲んだ際の酸っぱさは感じられなかった。
ハイランドクイーン マジェスティ16年
こちらもハイランドのシングルモルトをボトリングした、マジェスティシリーズの16年もの。
もちろん濃厚なのはタリバーディンのシングルモルト…ですがはっきりとは明かされていません。
香りはオレンジやレモンよりはやや強い、柑橘系。ドライベリーの甘味と果実感、カシス、カカオの効いたチョコ、ふくよかでモルティ、奥に僅かなスモーキーさも感じます。
味わいはレーズンやドライベリーの甘みと果実感、トフィーや麦芽クッキーの甘み、バニラウエハース、少しだけ芝生やメンソールのような青々しさ。後半はウッドスパイスの効いた眺めの余韻。
後半はタンニンがやや強めですが、チョコレートやジンジャーとも捉えられるリッチなスパイシーさがあるボトルです。
「あ、グレンモーレンジィではなくタリバーディンかもな」と感じさせてくれたボトルかもしれません。
〜1561シリーズ〜
ハイランドクイーンのプレミアムライン「1561シリーズ」。
フランス国王であり夫でもあったフランソワ王を無くしたメアリー女王がスコットランドへ帰国したのが1561年。
このメアリー女王のターニングポイントともいえる「1561年」を冠したプレミアムシリーズとなります。
ハイランドクイーン 1561
ハイランドクイーンをリリースしたマクドナルド&ミュア社が創業した1893年の当時の味わいを表現したかのような、クラシックな味わいのボトルです。
現在流通しているブレンデッドウイスキーの多くは、モルトウイスキーの使用比率が50%以下となりますが、創業当時(19世紀後半)のブレンデッドウイスキーのモルト比率はもっと高かったといわれています。
このボトルはかつての味わいを復刻しようと、なんと60%以上のモルト原酒を使用したボトルとなります。
香りは青りんご、トニックウォーター、アロエ、塩キャラメルとレモン。
口当たりはややアルコールアタックが強い。続いてレモン、ジンジャー、奥にはシナモンの効いた焼きリンゴ。
後半はドライフルーツの甘みとナッツの香ばしさ、柔らく温かみのある味わいが長く続きます。
やや若さはありますが、「昔ながら」のモルティで優しい味わいのブレンデッドウイスキーですね。
ハイランドクイーン 1561 21年
過去に「ハイランドクイーン シュープリーム」というシリーズで21年が出ていましたが、リブランドされて1561として登場です。
最低21年以上の長期熟成原酒で構成され、特にモルト比率が高いため大麦由来のリッチさが特長です
<テイスティングノート>
香り:リンゴ飴、かすかにリコリス
味わい:麦芽糖、バニラアイスを思わせるクリーミーさ
フィニッシュ:青リンゴ、ほのかなスパイス
ハイランドクイーン 1561 30年
1893年に創業したマクドナルド&ミュア社の設立120周年を記念してリリースされたボトル。
1982年蒸溜の30年以上熟成されたモルト原酒をなんと75%以上も使用、そこに厳選した1978年・1979年蒸溜のグレーンウイスキーをブレンド。
その後シェリーバットで6ヶ月以上熟成させたという贅を尽くした限定ボトルとなります。
香りはたっぷりとしたシェリー樽由来の甘やかな葡萄、レザー、バニラとキャラメル、熟れたリンゴ、干し草、シナモンスパイス。やや古酒感もあるこなれたアロマ
口当たりは極めてスムーズで、ソフトなスタート。ややオーキーだが、上品なマスカット、レーズン、プラム、洋梨。円熟味を感じさせ、キャラメリゼされたミックスナッツから、シナモンの効いた焼きリンゴ。
フィニッシュはロング、複雑でシナモンスティックを食むようなスパイシーさ。柑橘系の皮のような少しの苦み。タバコの葉とバニラ。
ノンエイジとは打って変わって長熟ブレンデッドのおいしいところをうまく抑えているボトルです。
恐らくメインはグレンモーレンジィの原酒ではないでしょうか。
タリバーディンのハーバルさやワイン様のタンニン分はあまり感じられず、ナッツ感ややさしいスパイスの余韻が続く、リッチな味わいです。コスパ高い!
終売品
ハイランドクイーン 8年
8年以上熟成させた原酒を使用したハイランドクイーン。
短熟ではありますが、ノンエイジの商品と比べるとエステリックな印象が弱く、カカオのビターとややオイリーなテクスチャを感じやすいです。
香りはフレッシュだがややバターっぽいオイリーな印象。ハチミツとミント。赤リンゴの中から、カカオと薄いシナモン。
味わいはフルーツグミ。はちみつ、パンケーキ、ダークチョコレート。なめらかな口当たりだがフィニッシュにうっすらニガヨモギ。
余韻はミディアムショート。スタンダード品に比べるとかなり熟成感はあります。
ウイスキーバイブル2014で90ポイントを獲得している優等生でもあります。
ハイランドクイーン 12年
酒齢12年以上の原酒を用いたハイランドクイーン。
香りはリッチで丸みがある。フルーツポンチ、シナモン、薄い赤ワイン、ブラックペッパー。
味わいは砂糖漬けのオレンジ、黒糖、金平糖、ボンタンアメ、ヘーゼルナッツ、8年と比べるとボディはリッチだが、少しチグハグな感じもある。
やや辛みと酸味が強い気がする。
もう見かけないので終売したのかな。
ハイランドクイーンを飲みながら鑑賞することをおすすめします。
ざっくり覚える!
「悲劇の女王」の名で知られる、ハイランドクイーンはスコットランド産のブレンデッドウイスキー。
日本ではマイナーではあるのですが、その歴史は古く、デュワーズやホワイトホースと同じスコットランドを代表するブランドです。
リリース当初、ハイランドクイーンを扱っていたのは現在のグレンモーレンジィ社(マクドナルド&ミュア社)で、長きに渡りグレンモーレンジィをキーモルトとしてきたのですが、フランスのワイン商である「メゾン・ミッシェル・ピカール社」がブランド権利を買い取りました。
現在はピカール社が所有するタリバーディン蒸溜所の原酒をキーモルトに製造・販売を行っています。
クオリティが高い割においしいので「なぜこんなに安いのか?」と思う方も結構いると思いますが、これはタリバーディンがまだ安く買えるからですね。
ウイスキー愛好家の中では1561シリーズの30年は評価が高く、格安で長熟が味わえるブレンデッドウイスキーとして重宝されています。
ラベルに描かれた白馬に乗った女性は、スコットランドの女王「メアリー・ステュアート」。
こちらは後述します。