ジャパニーズウイスキーを「ジャパニーズウイスキー」と名乗るための法律が、日本には存在しない。3月19日の参議院予算委員会で、自民党の石田昌宏議員がこの問題を正面から取り上げたようです。
「国会の議事録に『ジャパニーズウイスキー』という言葉が初めて記録されたのは2025年3月のこと」——そこからわずか1年、この問題は立法府の中枢でより本格的な議論へと発展しています。

「振興」から「保護」へ——国会での議論の変遷

この問題が政治の場に登場したのは、2024年6月の「国産ウイスキー振興議員連盟」設立総会が最初です。
当初は販路拡大や需要喚起、地域活性化といった「振興」の文脈での議論でした。
転機となったのが2025年3月21日。石田昌宏参議院議員が国税庁に対し、業界の自主基準だけでは不十分であり正式な法的保護が必要だと訴えたこの日が、議事録に「ジャパニーズウイスキー」という言葉が初めて記録された歴史的な節目となりました。
そして2026年3月19日の参議院予算委員会。石田議員は同じテーマをさらに踏み込んで追及しました。
振興から保護へ——国会での論点がこの2年で大きく深化しています。
「日本語っぽい名前をつければジャパニーズウイスキー」という現実

今回の質疑で石田議員が名指しで批判したのが、酒税法の「10パーセント・ルール」です。
100リットルの本物のウイスキー原酒に900リットルの代替アルコールを混ぜた1,000リットルの液体も、現行法上は「ウイスキー」として販売できます。国税庁にとっては10倍の税収が入る仕掛けで、税収優先の設計がそのまま残っています。
さらに問題なのが産地の定義がまったく存在しないことです。石田議員は「外国の大麦で、外国で糖化・発酵させ、外国で蒸留して、外国で貯蔵して、外国で樽詰めしても、日本語っぽい名前を付ければジャパニーズウイスキーと言えないこともない」と端的に表現しました。
スコッチ、バーボン、アイリッシュ——世界5大ウイスキーのうち日本以外はすべて、国名や産地の名称を冠するための法的定義を持っています。
業界の自助努力が先行してきた5年間

この問題は業界内では以前から認識されていました。日本洋酒酒造組合は2021年4月、「ジャパニーズウイスキーの表示に関する基準」を自主基準として施行。原材料に麦芽の使用を必須とし、国内での糖化・発酵・蒸留、700リットル以下の木製樽による3年以上の国内貯蔵、国内瓶詰、アルコール度数40度以上という厳格な要件を設けました。
しかしこれはあくまで加盟企業のみに効力を持つ自主基準です。非加盟のメーカーは酒税法の抜け穴を合法的に利用し続けることができました。
こうした限界を踏まえ、2024年7月には法制化を専門に推進する団体が設立。
2025年3月にはJSLMAが「GI取得」「公式ロゴマークの制定」「国税庁への法整備要請」という三本柱の計画を発表し、同年10月に公式ロゴマークの商標登録が完了しています。2026年春からは対応製品の店頭展開が始まります。
国税庁が法整備への取り組みを公式に認めた
今回の質疑に対し、国税庁の田原芳幸次長は「ウイスキーの製法や品質に係る表示基準の制定に向けて関係団体等と協議を行っているほか、ジャパニーズウイスキーの地理的表示の指定の実現に向けて取り組んでいる」と答弁しました。
参考とされるのが2018年施行の「日本ワイン」表示基準です。当時、市場の約70%を占めていた輸入ワインブレンド品は全面的なラベル変更を余儀なくされました。ウイスキーで同様の整理が進めば、現在「ジャパニーズウイスキー」を名乗っている製品の一部は、その表示を外さなければならなくなります。
完全な施行までには今後1〜2年のプロセスが必要とされています。GI指定が実現すれば、日EU経済連携協定を通じてEU全域での名称保護にも道が開けます。











