世界中のウイスキー愛好家にとって、最も信頼のおけるオンラインストアの一つ、「ザ・ウイスキー・エクスチェンジ(TWE)」。
そのTWEが、ロゴやデザインを含む、大規模なブランドイメージの刷新を行うことを発表しました。これは、同社の歴史における新たな章の幕開けを意味します。
TWEとは何者か?―シン兄弟の伝説からペルノ・リカール傘下へ
この変革を理解するためには、まずTWEの歴史を振り返る必要があります。
TWEは、スキンダー・シン氏とラジビル・シン氏という兄弟によって1999年に設立されました。彼らの情熱と卓越した知識によって、TWEは単なる小売店から、膨大な品揃えと専門知識を持つ、世界的なウイスキーの権威へと成長しました。
その後の2021年、ウイスキー業界を揺るがす大きな出来事が起こります。シーバスリーガルやグレンリベットを所有する世界的な酒類企業、ペルノ・リカール社が、TWEとその関連会社(業者向け販売のスペシャルティ・ドリンクス社、ウイスキー専門オークションのウイスキー・オークション社)を買収したのです。
この買収後、創業者のシン兄弟はTWEの経営から退き、現在は自身が設立したエリクサー・ディスティラーズ社(ポートインチュラン蒸溜所などを所有)の運営に専念しています。今回のブランド刷新は、この大きな経営体制の変更を経て、新たな時代へと進むための、TWEチームによる意思表示ということです。
新たな時代の幕開け―ブランド刷新の全貌
今回の刷新の目的は、TWE、スペシャルティ・ドリンクス、ウイスキー・オークションという、強力でありながらも個別で活動してきた3つの事業を、一つのまとまりあるブランドアイデンティティの下に統合することです。
ザ・ウイスキー・エクスチェンジ (TWE)
新しいロゴと、よりモダンで鮮やかな色調のカラーパレット(配色)を採用。ウェブサイトも刷新されます。
スペシャルティ・ドリンクス → ザ・ウイスキー・エクスチェンジ・トレード
社名を変更し、TWEの業者向け(BtoB)部門であることをより明確にしました。
ウイスキー・オークション
名称は維持しつつも、TWEとの連携を視覚的に示す新しいデザインへと更新されます。
変わるもの、変わらないもの
今回の刷新で最も重要な点は、「何が変わり、何が変わらないのか」ということです。
変わるもの
経営体制(ペルノ・リカール傘下となり、創業者が去ったこと)、そしてロゴや色といった視覚的なアイデンティティが変わります。
変わらないもの
ヘッドバイヤーのドーン・デイヴィス氏が強調するのは、TWEのDNAは変わらないという点です。その象徴として、新しいロゴにも「ライオン」のモチーフが引き継がれています。これは、創業者であるシン(Singh)家の名前が「ライオン」を意味することへの敬意であり、彼らが築き上げた歴史と精神を忘れないという強い意志の表れです。
そして何よりも変わらないのが、「知れば知るほど、味わいは深まる(The more you know, the better it tastes)」という、TWEが掲げる核となる哲学です。彼らは単なる販売店ではなく、ウイスキーに関する知識と情熱を分かち合う「教育者」としての役割を、これからも最も大切にしていくとしています。
今回のブランド刷新は、TWEが創業者の手を離れ、「第二章」へと歩み出したことを示す、力強い宣言です。
世界的な巨大企業の傘下に入りながらも、その魂である「情熱」と「専門知識」を維持し、進化を続けていく。
ウイスキー愛好家にとって、その挑戦が今後どのような新しい発見をもたらしてくれるのか、大きな注目が集まります。