日本のウイスキー界で独自の存在感を放つ、本坊酒造のマルスウイスキー。
その長野県にあるマルス駒ヶ岳蒸溜所が、ブランド戦略における重要な転換点となる新商品を2025年9月上旬に発売することを発表しました。
初の通年販売となる定番商品、「シングルモルト駒ヶ岳」の誕生です。
「限定品」戦略からの転換、その意味とは

2011年の蒸留再開以来、マルス駒ヶ岳蒸溜所はその生産体制から、多彩な樽種や製法を用いた「リミテッドエディション(限定品)」を毎年リリースする戦略をとってきました。これにより、ファンの間では「今年の駒ヶ岳はどんな味わいか」と、年ごとの個性を楽しむ文化が根付いていました。
しかし、今回の「定番化」は、その戦略からの大きな一歩を意味します。

14年の歳月を経て、蒸溜所の原酒ストックは、ひとつの安定した香味プロファイルを持つ製品を通年供給できるだけの量と質に達しました。
これは、マルスウイスキーが、ブランドの「顔」となるフラッグシップ製品を確立し、より広い市場に対して一貫したメッセージを発信していくという、新たなフェーズに入ったことの証左です。
目指すは「クリーン&リッチ」な味わい

新しく定番となる「シングルモルト駒ヶ岳」は、特定の年に縛られないからこそ、ブレンドの技で目指す味わいを一貫して追求できるのが特徴です。蒸溜所が保有する多種多様な熟成原酒の中から、ブランドが目指す「爽やかで繊細ながらも、ふくよかな味わい」を表現するために、最良のものが選ばれます。

公式のテイスティングノートによると、その香味は「アップルティーやあんず、熟した柿を想わせる華やか」なもの。スムースな口当たりと、心地よく続く余韻が楽しめる一本に仕上がっているとのことです。
商品名: シングルモルト駒ヶ岳
アルコール度数: 45%
内容量: 700ml(専用カートン入)
参考小売価格: 7,920円(税込)
マルスウイスキーの現在地と未来

マルスウイスキーは、冷涼な長野の「駒ヶ岳蒸溜所」と温暖な鹿児島の「津貫蒸溜所」という、異なる環境に2つの蒸溜所を構えています。さらに屋久島にも熟成庫を持つことで、多様な原酒を造り分ける国内でもユニークな生産体制を確立してきました。

今回の「シングルモルト駒ヶ岳」の定番化は、そうした生産基盤の成熟を背景に、ブランドのアイデンティティをより強固なものにするための戦略的な一手と分析できます。
これまで様々な限定品を通じて探求してきた味わいの集大成として、一つの「答え」を提示したと言えるでしょう。
このフラッグシップの誕生が、今後のマルスウイスキーの国内外での展開にどう影響していくのか、業界全体が注目しています。