定期的に来る、ノンアルウイスキーの話題。
今回は、ウイスキーや焼酎などの蒸溜酒を知り尽くしたサントリーが、ノンアルコール市場に革新的な一石を投じます。
2025年9月16日、さまざまな飲みものと割るだけで、お酒のような複雑な味わいと余韻が楽しめる、飲食店向けの“ベースのノンアル”「ZEROPPA(ゼロッパ)」を全国で新発売することを発表しました。
「ゼロよいサワー」で飲食店のノンアルが変わる

これまで飲食店のノンアルコールメニューは、ビールテイスト飲料が中心でした。
しかし「ZEROPPA」の登場により、その常識が変わるかもしれません。
「ZEROPPA」は、炭酸水やお茶、ジュースなどと1:4の割合で割るだけで、バーで楽しむような本格的なノンアルコールカクテル、その名も「ゼロよいサワー」を簡単に作ることができます。
これにより、お酒を飲まない、あるいは飲めない人も、より多彩な選択肢の中から自分の好みに合った一杯を選べるようになります。
鍵を握るサントリー独自の「ウイスキーエキス」
この新商品の心臓部とも言えるのが、サントリーが長年培ってきた蒸溜技術を応用した「焼酎エキス」と「ウイスキーエキス」です。
これは厳選した香り高い焼酎やウイスキーを実際に蒸溜し、そこからアルコール分だけを丁寧に取り除くという、非常に高度な技術を用いて作られています。このエキスによって、アルコール0.00%でありながら、本格的なお酒が持つ複雑な香りの層や、味わい深い余韻を再現することに成功したというのです。

商品は500ml瓶で、希望小売価格は400円(税別)。飲食店にとっては、多彩なノンアルコールメニューを低コストで展開するきっかけとなるのでしょうか?
【考察】ノンアルコールウイスキー市場の現在地
今回の「ZEROPPA」登場の背景には、世界的に急成長するノンアルコール市場の存在があります。特に近年は、健康志向の高まりや「ソバーキュリアス(お酒は飲めるが、あえて飲まないライフスタイル)」の広がりを受け、単なる“お酒の代用品”ではない、洗練されたノンアルコール飲料への需要が高まっています。
ノンアルコールウイスキーの世界では、大きく分けて2つのアプローチがあります。一つは、ハーブやスパイス、木片などを組み合わせてウイスキーの風味を“模倣”する「オルタナティブ(代替品)」。もう一つが、「ZEROPPA」のように、一度造ったウイスキーからアルコール分を除去する「脱アルコール」製法です。
後者は、より本物に近い香味を保持できる可能性がある一方で、アルコールが担っていた風味や口当たりの「ボディ感」をどう補うかという技術的な課題がありました。
サントリーの「ZEROPPA」は、この課題に対し「割って飲むベース」という形で新たな答えを示しました。
ストレートで飲むことを前提とせず、カクテルベースに特化することで、その真価を最大限に発揮させるという、一風変わった戦略。
日本のノンアルコール市場を牽引してきたサントリーが、その蒸溜技術の粋を集めて送り出す「ZEROPPA」。これは、飲食店の景色を変えるだけでなく、ノンアルコールの概念そのものを進化させる、大きな一歩となるかもしれません。