毎年、世界中のウイスキーファンがその発表を心待ちにする、ディアジオ社の限定ボトルシリーズ「スペシャルリリース(Special Releases)」。
普段はなかなか味わえない蒸溜所の希少な原酒や、革新的な試みによって生まれたユニークなウイスキーが登場することで知られています。
2025年版のスペシャルリリースについても、そのラインナップに関する憶測が飛び交う中、先日、7つのボトルのラベルデザインがアメリカのアルコール・タバコ税貿易管理局(TTB)のデータベースで発見されたとの情報が駆け巡りました。
そして今回、その続報として、8番目となる可能性のあるボトルのラベルが新たに確認され、ついに2025年版の全貌が見えてきたのではないかと、期待が高まっています。
新たなる候補はクライヌリッシュ18年

今回、TTBデータベースで新たに発見されたのは、ハイランド地方に位置するクライヌリッシュ(Clynelish)蒸溜所のシングルモルトです。そのスペックは以下の通りです。
- 熟成年数: 18年
- 熟成樽: リフィルカスク(具体的な種類は明記されていません)
- アルコール度数: 51.6% vol.
しかし、このボトルの真に注目すべき点は、ラベルに記された以下の記述にあります。
“Matured in refill casks, with an inclusion of whiskies from Clynelish’s distillation cut point experiments.” (リフィルカスクで熟成。クライヌリッシュの蒸溜カットポイント実験によるウイスキーを含む。)
「カットポイント実験」とは何か?
ウイスキーの蒸溜工程では、ポットスチルから流れ出るニューメイクスピリッツ(蒸溜したての原酒)を、「フォアショッツ(前留:ヘッド)」、「ハート(中留:ミドルカット)」、「フェインツ(後留:テール)」の3つに分けます。
実際にウイスキーになるのは、香味成分が最もバランス良く含まれる「ハート」の部分です。
「カットポイント」とは、この「ハート」を採取し始めるタイミングと、終えるタイミングのこと。このポイントをどこに設定するかで、ニューメイクスピリッツの性格、つまり軽やかさや重厚さ、フルーティーさやオイリーさといった風味が大きく左右されるのです。
今回のクライヌリッシュ18年には、このカットポイントを通常とは異なる設定で実験的に蒸溜した原酒が含まれていることを示唆しています。
クライヌリッシュといえば、その特徴的な「ワックス(蝋)」のような風味で知られていますが、このカットポイントの実験が、そのテクスチャーやアロマにどのような影響を与えているのか? よりリッチになっているのか、あるいは意外な軽やかさを見せるのか?
ウイスキー愛好家、クライヌリッシュマニアにとっては、想像を掻き立てられる注目のボトルになりそうです。