日本酒はお米、ワインはブドウから造られます。
では、ウイスキーの原料は何か知っていますか?
原料がよくないと美味しいウイスキーは造ることができません。
ウイスキーはとてもシンプルに3つの原料から構成されています。
原料の種類を知って、どんなウイスキーができるのか見ていくことにしましょう。
ウイスキー原料の基礎知識を身につけてください。
ウイスキーのもとは「穀物」
ウイスキーは「穀物」を原料として造られたお酒です。
この穀物の種類には大麦・トウモロコシ・ライ麦・小麦・燕麦・蕎麦などがあり、どれでもウイスキーは造れます。
スコッチや日本のウイスキーの原料として主に使われるのは大麦。
ビールやパン、水あめの材料としても使われるあの大麦です。
大麦は世界最古の穀物のひとつで、約一万年前から西アジア~中央アジアで栽培されていました。
古代エジプトのツタンカーメン王のお墓からも見つかっているので、この頃にはビールやパンは食べられていたことになりますね。
よく耳にする”モルトウイスキー”と呼ばれるウイスキーは大麦麦芽を原料に作っています。
大麦麦芽とは大麦の芽を出させたもので、麦もやしなんて言い方もします。
わざわざ発芽させてから使うのは、製造過程で発酵しやすいという利点があるからです。
大麦にも種類があり、二条大麦や四条大麦、六条大麦などが存在ます。
六条麦茶とか聞いたことありませんか?あれは六条種を使ったお茶です。
大麦の中でもビールやウイスキーの製造にはデンプンを多く含む”二条大麦の麦芽”が使われます。
モルトウイスキーとグレーンウイスキー
使用する穀物によってウイスキーの名称は変わります。
大きく分けると2種類。
ひとつめは、上にも書いた大麦麦芽だけを原料に使ったウイスキー。麦芽は英語で(モルト-malt-)。
これはそのまんま『モルトウイスキー』と呼びます。スコッチウイスキーやジャパニーズウイスキーにはこの大麦麦芽を使って造られたモルトウイスキーが多いのが特徴です。
次に、この大麦麦芽(モルト)に加え、トウモロコシや小麦など他の穀類を混ぜて造られたウイスキーは『グレーンウイスキー』と呼ばれます。(※グレーンとは穀類の意味)
アメリカンウイスキーのバーボンはトウモロコシ主体のものが多くを占めます。なのでこちらのグレーンウイスキーが一般的です。
一般的にスコッチとジャパニーズのモルトウイスキーは大麦麦芽が原料。
アメリカンのバーボンはトウモロコシが原料と覚えておくと良いでしょう。
ブレンデッドウイスキーとは
上記で解説した『モルトウイスキー』と『グレーンウイスキー』混ぜて造られたものが『ブレンデッドウイスキー』です。
混ぜる=ブレンド、ですね。
色々な蒸溜所でできた100種類以上のモルトウイスキー原酒とグレーンウイスキー原酒の中から20~30種を選び出し混ぜ合わせるわけです。
混ぜ合わせる理由は単純に飲みやすいから。
そのままでは個性が強くて飲みにくいモルトウイスキーなどを複数混合して調整することで、より多くの人がおいしいと思うバランスのとれた味に仕上げているのです。
ちなみに世の中に出回っているほとんどのウイスキーはこの『ブレンデッドウイスキー』なのです(世界シェアの9割以上はブレンデッド!)。
有名なブレンデッドのスコッチ銘柄としてはジョニー・ウォーカーやバランタイン、シーバスリーガルなどがあります。
馴染みのあるジャパニーズであれば、響、角瓶、ブラックニッカ、フロム・ザ・バレルなどですね。
シングルモルトとシングルカスク
そして、ひとつの蒸溜所で造られた『モルトウイスキー』だけを使用したウイスキーは『シングルモルト』と呼ばれます(ひとつの蒸溜所で造られた『グレーンウイスキー』は『シングルグレーン』と呼びます)。
シングルには”単一の蒸溜所で造った”という意味が含まれています。
シングルモルトはブレンデッドとは違い、グレーン原酒が混ぜられていません。非常に個性が強く、蒸溜所の特徴を感じさせます。
各蒸溜所には年数違いでたくさんの樽が貯蔵してあります。
ブレンダーと呼ばれる職人が、この年数違いの樽からモルトウイスキー原酒を取り出し、『シングルモルト』を作ります。
年数違いのモルトウイスキー原酒を巧妙に混ぜ合わせ香りや味のバランスを調整するのです。
同じ銘柄のモルトウイスキー原酒だけを合わせているので前述のブレンデッドとは異なります。
例えば『山崎18年』というウイスキーは、”18年間以上熟成した山崎のウイスキー原酒”を複数合わせて作られたシングルモルトウイスキーです。
ラベルに表示する酒齢は用いられたウイスキー原酒のうち最も若いウイスキーの熟成期間でなければならないのです。
シングルモルトのバリエーションとしては一本の樽から原酒をそのまま瓶詰する『シングルカスク』があります。(※カスクとは樽の意味)
シングルカスクはブレンダーが味を調整せず直接出荷されるので、樽熟成の出来がよくわかる逸品です。
一本の樽から瓶詰されるウイスキーは約450本程度なので希少です。
名称については以下の図解がわかりやすいです。
「水」も大切な原料
2つのめ原料は「水」。
ウイスキーに使う水は「仕込み水」とも呼ばれ、ウイスキー造りのすべての工程において、大量に使用されます。
良質で豊富な水が大量に必要になるので、ほとんどの蒸溜所の近くに潤沢な水源があります。
むしろこの水が確保できるかどうかで立地を決めると言っても過言ではありません。
「仕込み水」には酵母の栄養となるミネラル分がバランスよく含まれており、この水の質によって、独特な香りや口当たりが生まれると考える蒸溜所もあります。
スコッチやジャパニーズはミネラル分が少ない軟水が多く使われ、アメリカやカナダは硬水が多いのが特徴です。
軟水、硬水どちらがウイスキー造りに適しているかは一概には言えませんが、色々な酒造りにおいてはマグネシウムが酵母の働きを抑制する作用があるので軟水のほうが良いとしている場合が多いです。
水は穀物と並ぶ「ウイスキーの盟友」なのです。
「酵母」は香味の幅をつくる
3つめの原料の「酵母(英語でイースト)」は、菌類です。
ウイスキーの香りや味の幅を広げるために使用されます。
簡単に言うと菌のチカラでウイスキーをおいしくしているのです。
それぞれの蒸溜所で酵母のレシピは違いますが、1種類しか酵母を使わない場合もあれば、7種類も酵母を使う場合もあります。
菌が入っているなんて気持ち悪い!と思う方もいるかもしれませんが、発酵の役目を終えると跡形もなく消えてなくなります。
酵母は、酸素のない環境で糖分を炭酸ガスとアルコールに分解する能力を持っています。
この働きを利用してアルコール発酵を行うのが「酒造り」です。
発酵するとアルコールに香りを与える成分が生み出され、酵母の種類によって様々な香りを生みます。
これをコントロールすることでお酒の性質に変化をつけていくのです。
シングルモルトのボトル1本を生産するのに必要なな原材料は、平均して水10リットル、大麦1,400gと言われています。
こう考えるとめちゃくちゃたくさんの水がいるので、蒸溜所はまず原材料である水の確保が不可欠です。
過去には水源が枯渇したため閉鎖した蒸溜所もあるくらいです。
大麦やトウモロコシ以外を使ったウイスキー
では、最後に大麦やトウモロコシ以外を使った、ちょっと珍しい原料を使ったウイスキーをご紹介しておきましょう。
原材料は小麦!
バーンハイム オリジナル・ウィート・ウイスキー
ヘブンヒル(バーンハイム)蒸溜所から2005年9月21日に公式発表された、世界第一号の「小麦」を原料に使ったウイスキーです。
原材料の配合は、冬小麦51%、コーン39%、糖化酵素用発芽大麦10%の割合です。
一般的に冬小麦を使うと口当たりが柔らかくなり、なめらかになると言われています。
冬小麦を使ったバーボンといえば、みなさんもご存知「メーカーズマーク」などが有名ですが、こちらは木樽の感じが少なく、もっともっとなめらかです。
とても軽いボディですが、しっかりとしたコクもあり、バニラやシロップのような甘味が印象的です。
原材料は蕎麦!
エデュー・シルバー
続いてフランスから蕎麦(そば)を原料に使ったウイスキーをご紹介。
フランスのブルターニュ地方で2回蒸溜で造られるエデュー・シルバーは、コニャックの樽で5年間熟成されています。
やはりというか、流石フランス。
寝かせる樽はブランデー(コニャック)です。
ドライな切れ味でやや酸のある柑橘フレーバーが特徴的です。
口当たりは軽く、ハチミツとバニラ、微かにオレンジピールのような味わいを感じます。ちょっと焼酎っぽい風味もあります。。
少し時間をおくと、確かに蕎麦の香りがします…!お湯割りなんて粋かもしれませんね。
原材料はキヌア!
コルセア キヌア
原材料の「キヌア」というのは、なんとNASAが21世紀の宇宙食と絶賛している穀物なんです。
南米ボリビアでとれる雑穀なんですが、タンパク質や食物繊維をはじめカルシウム、マグネシウムなどの鉄分を大量に含む本でスーパーフードとして日本でも話題になりました。
2007年設立と比較的新しいコルセア蒸溜所。
この蒸溜所のモットーは【オルトウイスキー】を造ること。
オルトウイスキーとは、既存の製法とは異なった材料や製法でウイスキーを開発することを言います。
キヌアをはじめ、オートミールやジュズダマなどを原料にウイスキー造りに挑戦しているパイオニアなのです。
フレーバーはバニラやヘーゼルナッツ、そしてバナナのようなとろみのある甘さがあります。すいすいと飲みやすいウイスキーです。
いかがだったでしょうか?
基本とはいえ結構覚えることたくさんありましたねー。
良い原料なくして、良いウイスキーを造ることはできません。
穀物、水、酵母、この3つを基本に、水質や風土、気候など様々な要因が重なってくるのです。
これからは多くの蒸溜所が実験的に色々な穀物でウイスキー造りを試すと思います。
今後どんなウイスキーが造られるのか楽しみですね!