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富良詩蒸留所、起工。富良野ウイスキー計画が発表から1年

富良詩蒸留所、起工。富良野ウイスキー計画が発表から1年

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2026年6月15日、北海道富良野市で「富良詩(ふらりす)蒸留所」の起工式が執り行われました。

昨年6月の計画発表から約1年。軽井沢蒸留酒製造、西武ホールディングス、富良野市の三者連携による構想が、ついに土が動く段階に入りました。

カバランを育てた男が、富良野を選んだ理由

北の大地・富良野に新たな薫り、世界が注目するウイスキー蒸留所『富良詩』誕生へ

このプロジェクトの中心にいるのが、軽井沢蒸留酒製造の副社長を務めるマスターブレンダー、イアン・チャン氏です。

チャン氏は台湾の蒸溜所「カバラン」の立ち上げに2005年から携わり、16年間マスターブレンダーとして国際品評会で数百もの受賞を積み重ねながらブランドを世界に押し上げた人物です。2020年12月にカバランを離れ、新天地として選んだのが日本でした。

故ジム・スワン博士に10年以上師事してきたチャン氏は、長野県小諸市で軽井沢蒸留酒製造を島岡高志社長とともに共同創業。2023年に開業した小諸蒸留所は、海外専門誌が選ぶ「世界で最も注目すべき蒸留所3選」に選出されるなど、わずか数年で国際的な評価を得ています。

チャン氏は富良野の冷涼な気候が「繊細で重層的なウイスキー」造りに適していると評価しています。スコットランドに近い気象条件と、観光インフラが整備されたリゾート立地——その両方が揃う場所として富良野を選んだ、というのがプロジェクトの設計思想です。

蒸留所の概要

建設地は新富良野プリンスホテルから徒歩約7分、富良野スキー場に近い西武グループ所有の森の中です。

施設コンセプトは「体験」。蒸留工程の見学ツアー、富良野産食材とウイスキーのペアリングを提供するレストラン、バー、ショップなどを設ける計画です。製造過程で出る大麦麦芽の搾りかすを焼き菓子として再利用するアップサイクルの取り組みも盛り込まれています。

名称の「富良詩(ふらりす)」は、「富良野(FURANO)」と「至福」を意味する英語「BLISS」を組み合わせた造語です。

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1年でスケジュールが後ろ倒しに

昨年の計画発表時点では「2026年春着工・2028年度蒸留開始・2031年度販売開始」というスケジュールが示されていました。

今回の起工式を受けて改めて示されたスケジュールは、建物本体の着工が2027年春、蒸留開始が2029年秋ごろ、販売開始が早ければ2032年となっています。約1年の後ろ倒しです。

資材高騰や施工工程の調整といった要因が影響しているとみられます。ウイスキーの熟成には最低でも3年以上を要するため、どこで蒸留を始めるかが販売時期に直結します。今回の遅れにより、富良野産シングルモルトが市場に出るのは2030年代初頭になる見通しです。

なお、蒸留所の開業に先駆けて、富良野市内の別の施設では長野・小諸で蒸留したウイスキーの熟成がすでに始まっています。富良野の気候環境で熟成させた原酒を、富良詩蒸留所開業前の先行リリースとして展開する可能性があります。

「第2のニセコ」とウイスキーツーリズム

西武グループが富良野に投資を集中させる背景には、インバウンド需要の変化があります。

富良野市の外国人人口は2026年4月末時点で682人と、2019年同時期の約3倍に増加しており、総人口に占める割合は約4%に達しています。もともと「第2のニセコ」として注目されてきたエリアですが、そこにウイスキー蒸留所というコンテンツを加えることで、冬のスキー、夏のラベンダーに加えた「第3の柱」を作る、というのが西武HDの狙いです。

西武HDの後藤高志会長は「ウイスキーは世界的なブームだ。お酒を飲みながらゆったりとした時間を過ごすことで宿泊日数も増える」と語っています。蒸留所を通年で稼働させることで、春・秋の閑散期の集客平準化にも寄与するという計算です。

同時に進める宴会場のMICE施設への改修(今年11月)と合わせ、富良野を「ラグジュアリー観光地」として再定義しようとしているのが今回の投資の全体像です。

ジャパニーズウイスキーと「蒸留所ツーリズム」の接点

2024年4月に本格施行されたジャパニーズウイスキーの自主基準により、国内熟成・国内瓶詰めを満たしていない製品は「ジャパニーズウイスキー」を名乗れなくなっています。富良詩蒸留所は最初から国内一貫生産を前提に設計されており、将来的には生産量の半数を海外輸出する目標も掲げています。

蒸留所ツーリズムの観点でいえば、BARRELでも4月に紹介した「銅印帳」の動きとも連動する文脈です。訪日外国人がウイスキー蒸留所をめぐる旅を計画するとき、富良野は北海道・余市と組み合わせやすい動線上にあります。富良詩蒸留所が目指す「体験型施設」の設計は、そのターゲットを強く意識したものでしょう。

首都圏から遠い富良野に、世界的なマスターブレンダーを擁する蒸留所が誕生するのは、ジャパニーズウイスキーの新しい地図が描かれていくプロセスの一部です。

オーツカ
スケジュールが1年後ろ倒しになったことは正直に書きましたが、それよりも気になるのは「蒸留前に富良野で熟成を始める」という先行リリース戦略です。

小諸で蒸留した原酒を富良野の環境で熟成させたら、それは「富良野産」と呼べるのか。ジャパニーズウイスキーの定義との関係を含め、商品が出てくる段階で改めて注目したいポイントです。




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