昨年8月に北海道・東川町で開業した丹丘蒸留所が、シングルモルトウイスキーのニューポットを数量限定で発売しました。
国内流通は1,500本のみ。容量120ml、アルコール分63度、小売価格は2,970円(税込)で、2026年5月11日より蒸留所のオンラインショップおよびショップにて販売されています。
同時に、樽を個人所有できる「プライベートカスクプログラム2026」の募集も開始されました。
英国産フロアモルティング麦芽に、旭岳の地下湧水。製造へのこだわり

原料に使用するのは、伝統的なフロアモルティング製法で製造された英国産麦芽100%です。仕込みから加水まで全工程において、東川町が誇る旭岳の地下湧水を使用しています。
東川町は北海道で唯一、上水道を持たない町として知られており、全世帯が大雪山の伏流水(平成の名水百選)を生活用水として使用している、水質において特異な地域です。この圧倒的な水質への確信が、香港出身のチームをこの地に引き寄せた理由のひとつでもあります。
麦汁の抽出には、世界的にも導入例の少ないマッシュフィルターを採用。麦芽成分を余すことなく抽出し、濃厚でふくよかな麦汁を生み出しています。
発酵はステンレスウォッシュバックと木桶を組み合わせた二段階方式で、合計168時間(7日間)かけて行います。ステンレスでの3日間の一次発酵に続き、木桶での4日間の二次発酵を経ることで、ぶどうを思わせる芳醇なアロマが原酒に付与されます。
公式テイスティングノート
以下は蒸留所が公表したテイスティングノートです。
トロピカルな果実と海藻が同居するオイリーな原酒
香りは、力強い麦芽香を基調に、焼いたパンやチーズクラッカーを思わせる香ばしさが幾重にも重なります。穏やかなミネラル感に、花蜜の甘やかさが寄り添うという構成です。
味わいは、爽やかな果実の甘みをほのかな酸が引き締め、芯に麦芽の存在感があります。ミルクアイスクリームのようなクリーミーさが全体を包み込み、質感はオイリーで厚み十分。海藻のニュアンスが奥行きを添えています。
余韻は長く、ホットワイン・干し梅・クローブのような風味が広がり、繊細なミネラル感が最後まで残ります。
63度という高いアルコール度数のままボトリングされており、飲み手自身が加水量を調整しながらキャラクターの変化を確かめられる仕様です。蒸留所が目指すのは「トロピカルな果実の香りと、大麦由来の奥行きある味わいが素直に表れること」とされており、このニューポットはその出発点に当たります。
プライベートカスクプログラム2026:ミズナラから入門向けオクタブまで4種

同時スタートしたプライベートカスクプログラムでは、原酒を1樽単位で所有し、熟成の変化を見守りながら、将来的に自分だけのボトルとして受け取ることができます。充填される原酒には、スコットランド産のノンピート麦芽を使用しています。選択できる樽は4種類です。
『ミズナラ樽(220Lホグスヘッド)』は税別425万円(8年分保管料込み)。富山県産・樹齢200年超のミズナラを使用した国産の樽で、伽羅や白檀を想起させる気品ある和の香りが長期熟成で育まれます。4種の中で最も高価かつ個性的な選択肢です。
『18年シェリー樽(220Lホグスヘッド)』は税別225万円(3年分保管料込み)。オロロソまたはペドロ・ヒメネスのシェリーを18年間熟成させたスペイン産オーク材で、ドライフルーツ・ナッツ・スパイスが複雑に重なります。
『バーボン樽(200Lアメリカン・スタンダード・バレル)』は税別138万円(3年分保管料込み)。バニラやキャラメルの甘い香りが特徴で、初めてプライベートカスクを持つ方にも扱いやすい王道の選択肢です。
『シェリー・オクタブ樽(55L)』は税別44万8,000円(3年分保管料込み)。コンパクトな容量で濃密な風味を短期間で引き出せるため、贈答や記念ボトルにも適しています。
相談は日本語・英語・中国語に対応しており、Zoom・電話・対面での問い合わせが可能です。
ウイスキーをつくる人——主任蒸留士・ダーウェイ・シェイ

丹丘蒸留所のウイスキー製造を指揮するのは、台湾出身の主任蒸留士ダーウェイ・シェイ(通称:デイビッド)です。
スコットランド・ハイランド地方のエドラダワー蒸留所で蒸留技師として研鑽を積んだ後、スペイサイド蒸留所ではマスターブレンダーを務めました。香港・台湾・英国にまたがるチームの中で、スコットランドの現場経験を最も深く持つ人物として、製造の核を担っています。
製造業務と並行して、台湾で特に多くのリスナーを持つウイスキーポッドキャスト「whisky4pro(業務用威士忌指南)」のホストを務めるほか、執筆活動にも取り組んでいます。
熟成ウイスキーの初リリースは2028年初を予定
ウイスキーの蒸留は2025年9月に開始しており、熟成ウイスキーとしての初リリースは2028年初を予定しています。
見学ツアー「Discover」も2026年1月からスタートしており、土曜が日本語、日曜が英語、木曜が中国語での案内(いずれも要予約、参加費2,000円)で運営されています。通常非公開の製造エリアを巡り、テイスティングで締めくくる約60分のプログラムです。
今回のニューポットは熟成前の原酒であり、完成したウイスキーではありません。ただし、蒸留所の製造思想とチームの技術水準を確認できる最初の機会でもあります。2028年に向けて、その進化をニューポットの段階から追えるという意味で、1,500本という数量は決して多くはありません。










