アイラ島のブルックラディ蒸留所が手がけるスーパーヘビリーピーテッドの代名詞、「オクトモア」の最新版となる「17シリーズ」の全貌が明らかとなりました。
すでに「17.1」から「17.3」までの情報は夏のリークで一部で先行して報じられていましたが、新たにシリーズの完結編とも言える「17.4」のスペックが浮上。これにより、次世代のオクトモアが目指す方向性が明確になったと言えます。
数値競争を超えた「17シリーズ」の新たな試み
オクトモアといえば、世界最高峰のフェノール値を競うスペックが注目されがちです。しかし、今回の「17シリーズ」においては、数値設定の多様性も意識されているようですね。
シリーズの基準となる「17.1」および「17.2」のフェノール値は81ppm。これは、300ppmを超えた「15.3」や、200ppm近辺を維持していた近年のシリーズと比較すると、極めて控えめな数値と言えます。しかし、これは決してスモーキーさの減退を意味するものではありません。ブルックラディのヘッドディスティラーであるアダム・ハネット氏が近年強調しているように、オクトモアは今、単純な数値競争から「テロワール、熟成、そして樽による複雑性の探求」へと、そのフェーズを確実に移行させています。
シリーズの異端児「17.4」のスペックを読み解く

今回新たに判明した「オクトモア 17.4」は、シリーズの中でも極めて異彩を放つスペックを誇ります。
熟成年数:7年
原料大麦:コンチェルト種(スコットランド本土産)
フェノール値:108.2ppm
熟成樽:オロロソシェリー、フレンチヴァージンオーク
アルコール度数:57.2%
多くのオクトモアが5年熟成を基本としている中で、7年という長期熟成を選択した点は大きな特徴です。さらに、力強い香味を持つオロロソシェリー樽と、木材のタンニンがダイレクトに反映されるフレンチヴァージンオークを組み合わせるという大胆な構成。108.2ppmという、シリーズ内では中程度のピートレベルが、これらの個性的な樽とどのような化学反応を見せるのか。これは、これまでのオクトモアにはなかった、新たな次元の「スモークとウッドの調和」を狙った設計であると考えられます。
「17.1」「17.2」「17.3」各エディションの立ち位置
シリーズ全体のラインナップを振り返ることで、今作のテーマがより浮き彫りになります。
「オクトモア 17.1」は、バーボン樽で全期間熟成された、シリーズの「ベンチマーク」となる一本。81ppmという数値により、原酒本来のフルーティーさや麦芽の甘みが、スモークの奥からより鮮明に浮き上がる構成。
対して「オクトモア 17.2」は、同じく81ppmの原酒を、バーボン樽とポート樽で熟成。ポート樽由来のダークベリー系の甘みと、控えめなピートが重なり、エレガントな仕上がりが期待されます。
そして、アイラ島産のコンチェルト種大麦を使用した「オクトモア 17.3」は、132.1ppmという高数値を記録。熟成にはバーボン、ソーテルヌ、リベラ・デル・ドゥエロ、アイスワイン、シラーと、極めて多彩なワイン樽を使用。これは、ブルックラディが長年追求してきた「アイラ島のテロワール」と「ワイン樽による多層的な風味」の究極の結合を目指したものと言えるでしょう。
日本市場におけるオクトモアの存在感と示唆
オクトモアは、日本のウイスキー愛好家の間でも非常に熱狂的な支持を得ているブランドです。マットブラックのスタイリッシュなボトルデザインと、その強烈な個性は、日本のバー文化においても欠かせない存在となっています。
また、近年の日本の新興蒸留所の中には、高PPMの麦芽を使用し、短期間で力強い個性を生み出そうとする「オクトモア・スタイル」を参考にしているところも少なくありません。今回の「17シリーズ」が示した「あえてPPMを落とし、樽や熟成年数で複雑さを出す」というアプローチは、熟成が進み始めた日本のクラフトウイスキー業界にとっても、参考になる事例かもしれません。










