世界的なスコッチウイスキーブランドであるジョニーウォーカー(ディアジオ社)は、2025年11月18日、同社の象徴的なブランドキャンペーン「キープ・ウォーキング(Keep Walking)」の刷新を発表しました。
このキャンペーンは25年以上にわたり展開されてきましたが、今回の刷新では焦点を大きく変更しています。米国での展開を皮切りに、2026年にはヨーロッパを含むグローバル市場へ順次拡大される予定です。
25年続くキャンペーンの新たな方向性「集団」から「個人」の進歩へ

近年のジョニーウォーカーの広告展開は、パンデミック後の社会情勢を反映し、人々が再びつながることや、コミュニティが障壁を乗り越えるといった「集団的な進歩」に重きを置いていました。
しかし、今回の新しいチャプターでは、視点を「個人の進歩」へと移しています。
背景には、消費者の意識変化があります。コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーのレポート「State of the Consumer 2025」によると、人々は依然として友人や家族との時間を大切にしているものの、個人の趣味や自己表現といった「自分自身の時間」への関心を高めています。
また、伝統的なライフステージの節目(結婚や昇進など)よりも、個人的な達成感や充実感を重視する傾向が強まっているという分析結果に基づき、キャンペーンのメッセージが再構築されました。
9700万件の会話分析から生まれたコンセプト

新キャンペーンの中核となるのは「Keep」という単語です。
ブランドチームは過去1年間にわたり、世界中で約9700万件におよぶ「Keep」を含むソーシャルメディア上の会話を分析(ソーシャルリスニング)しました。その結果、モチベーション、行動、コミュニケーション、感情、成功、アイデンティティという6つの主要なテーマが浮かび上がりました。
これに基づき、「Keep dreaming(夢を持ち続ける)」「Keep trusting(信じ続ける)」「Keep searching(探し続ける)」といった、日常の中にある個人的な前進を肯定するメッセージが制作されました。
クリエイティブと今後の展開
キャンペーン動画の監督には、グラミー賞ノミネート経験を持つディレクターのチャイルド(child.)氏が起用されました。リニア(直線的)な成功物語ではなく、詩的なコラージュのように個人の感情や日常の瞬間を切り取る映像表現が採用されています。
また、ブランドは近年、音楽やファッション、スポーツといったカルチャー領域への関与を深めています。米国のシンガーソングライターであるサブリナ・カーペンターとのパートナーシップなどもその一環であり、今回のキャンペーン刷新も、次世代のウイスキー愛飲者との接点を強化する狙いがあります。
日本での展開について
今回の発表は米国市場向けのものであり、日本国内での具体的な展開時期は未定です。しかし、グローバル展開が2026年に予定されていることから、日本でも近い将来、この新しい「Keep Walking」のメッセージを目にする機会が増えることが予想されます。
ウイスキーの楽しみ方が多様化する中、最大手ブランドが「個人の充足」に舵を切ったことは、業界全体のマーケティングトレンドを示唆する動きとして注目されます。









