革新的なアプローチで知られるファイフのインチデアニー蒸溜所と、多彩なブランドを持つマクダフ・インターナショナルが5月1日に合併し、新会社「インチデアニー・ウイスキー社」としてスタートを切りました。
この統合は、両社にとって「自然な次のステップ」と位置づけられ、スコッチウイスキー界でのさらなる飛躍を目指します。
インチデアニーが、新たな価値を創造
2015年、業界の重鎮イアン・パーマー氏によって設立されたインチデアニー蒸溜所は、ライ麦を使用したシングルグレーン「ライロー」で独自の地位を確立。一方、1992年創業のマクダフ・インターナショナルは、「アイラ・ミスト」や「ローダーズ」、「ウォータープルーフ」といったブレンデッドウイスキーを手がけ、国際的な販売網を誇ります。
Inchadairnie Distillery, Glenrothes, Fife.
以前からマクダフ社は「ライロー」の海外販売を担うなど、両社は深い協力関係にありました。
新会社「インチデアニー・ウイスキー社」では、インチデアニー蒸溜所の創業者イアン・パーマー氏が会長に就任。
コマーシャル部門を元マクダフ社マネージングディレクターのグラハム・グレン氏が、蒸溜部門をインチデアニー蒸溜所のマネージングディレクターであるスコット・スネドン氏が、それぞれ共同で率います。
グレン氏は「一つのビジネス、一つのチーム、一つの明確なビジョンで長期的な成功を目指す」と述べ、スネドン氏も「これは単なる社名変更ではなく、我々のアイデンティティと目標を示すものだ」と新体制への意欲を語っています。
マクダフ・インターナショナルの名は一線を退きますが、その伝統は新会社に受け継がれます。
この合併により、インチデアニー・ウイスキー社は、自社蒸溜所での多様なウイスキー生産能力と、既存の強力なブランドポートフォリオ、そしてグローバルな販売チャネルを一体化させ、市場での競争力を一層高めることになります。
待望のファーストシングルモルト「キングラスィー」がついに発表！
この記念すべき船出を祝し、インチデアニー蒸溜所初となるシングルモルトスコッチウイスキー「キングラスィー」が今月、リリースされました。特筆すべきは、これがファイフ地方では近年珍しいピーテッドタイプのウイスキーであるという点。スコットランド本土産のピートを50ppmのレベルで使用し、インチデアニーならではの革新的な製法で仕上げられています。
「キングラスィー」は、個性の異なる2つのバージョンで展開されます。
キングラスィー・ダブルマチュアード 8年 (KinGlassie Double Matured Aged 8 Years)
バーボン樽で5年間熟成後、アモンティリャード・シェリーカスクでさらに3年間熟成。スモークとタバコのアロマに、アーモンドやナッツの豊かな風味が重なり、ベルベットのような滑らかな口当たりが特徴です。アルコール度数は46.3% ABV、推奨小売価格は£79（約15,100円）。
キングラスィー・ロー 8年 (KinGlassie Raw Aged 8 Years)
アメリカンオークのバーボン樽のみで8年間熟成。「ロー（生）」の名が示す通り、より力強く複雑な深みを持ち、リッチで甘美なモルティさと、精密にバランスの取れたスモーキーさが一体となった味わいです。
アルコール度数は46.3% ABV。ザ・ウイスキー・エクスチェンジとスペシャリティ・ドリンクスで1ヶ月間の先行販売後、一般販売されます。
インチデアニー蒸溜所は、ハンマーミルや特注のマッシュ転換槽、硫黄成分を排除するための二重凝縮システムなど、最新鋭の設備と独自の蒸溜技術を駆使し、フレーバーの最大化を追求しています。
創業者イアン・パーマー氏は、この「キングラスィー」のリリースを「画期的なマイルストーン」と位置づけ、「スコッチウイスキーの既存の期待を覆す、我々の計画の始まりだ」と、その野心的なビジョンを語っています。
さらにインチデアニー社は環境への配慮も重視し、スコッチウイスキー協会（SWA）や環境団体と協力してピートランドの保全活動を支援。責任ある原料調達と、感動的なウイスキー造りの両立を目指しています。
スコッチウイスキー協会（SWA）の2025年2月のデータによれば、2024年のスコッチ総輸出量は数量ベースで3.9%増加したものの、金額ベースでは3.7%の減少を示しています。
このような市場環境の中、伝統と革新を融合させた「インチデアニー・ウイスキー社」の誕生と、個性的なシングルモルト「キングラスィー」の登場は、スコッチウイスキー界に新たな潮流を生み出す可能性を秘めています。
