グラスゴー大学と九州工業大学が、ウイスキーを宇宙で蒸溜する実験に取り組みます。
2028年に超小型衛星(キューブサット)を打ち上げ、10mlの液体を載せて、最長5年間、軌道上で調べます。実験の通称は『スペース・パフィン』です。
10mlの試料と樽材の小片で、軌道上の蒸溜と熟成を調べる

衛星は、国際宇宙ステーションへの補給船で運び、日本の実験棟『きぼう』から軌道に放出する計画です。
載せるのは、ウイスキーの試料と原料、そして樽材の小片です。樽そのものは、重くてかさばるため載せません。
調べることは大きく二つあります。
一つは、軌道上でエタノールを取り出せるかどうかです。エタノールは多くの医薬品の製造に関わります。
もう一つは、樽材の反応です。地球を90分で1周する間に、樽材は急な熱さと冷えを繰り返し受けます。
木が地上よりずっと速く「呼吸」し、熟成を早める手がかりになるかもしれない、と研究チームは見ています。
計測には、光で成分の変化を素早く読み取る人工の「舌」を使います。香り成分のテルペンなどの小さな変化をとらえ、色や成分のデータを地上に送ります。
ウイスキーや樽材が宇宙に行った例は、これまでにもあります。ただ、いずれも国際宇宙ステーションの中の、温度が管理された環境にとどまり、地上に戻してから調べました。ウイスキーを宇宙空間にじかにさらすのは、今回が初めてです。

宇宙で熟成させるバーボンの計画は、2023年に取り上げました。
ウイスキーを選ぶ理由は、地上で仕組みが分かっていること

ウイスキーは、発酵や蒸溜の化学が地上でよく調べられています。
そのため、微小重力の中で何が変わるかを比べやすい題材です。プロジェクトを率いるグラスゴー大学の研究者は、発酵や化学反応を宇宙でどう監視し、制御できるかを知りたいと話しています。
背景には、宇宙で薬を作る構想があります。微小重力では、より大きく純度の高い結晶ができ、タンパク質の折りたたみも変わりうると考えられています。地上では合成しにくい分子を、軌道上の工場で作れれば、糖尿病、がん、アルツハイマー病の薬に使えます。今回は、その手前の基礎実験にあたります。
衛星本体は九州工大、ウイスキーの実験はグラスゴー大

役割は分かれています。
九州工業大学が衛星本体と独自の観測装置を、グラスゴー大学がウイスキーの実験を担当します。
グラスゴー大学の機械工学の最終学年の学生7人が、今秋から3か月、九州工業大学で電池、無線、搭載コンピューターの設計に加わります。
渡航は、蒸溜所の設計会社アレン・アソシエイツの助成によるものです。
学生の一人は、100年以上前に竹鶴政孝がグラスゴーで化学を学び、蒸溜所を回って日本に技術を持ち帰ったことを挙げ、スコットランドと日本をつなぐ今回の企画に加われることを喜んでいます。











