2026年2月2日、スコットランドの蒸留所にとって、春節(旧正月)の贈り物のようなニュースが届きました。
英国政府と中国政府の通商協議の結果、中国におけるスコッチウイスキーへの輸入関税が、現行の10%から5%へ引き下げられることが正式に決定しました。
たかが5%の差と思うなかれ。中国のような「超・数量市場」かつ「超・高級志向市場」において、この数字は利益率と価格競争力に決定的なインパクトを与えます。
背景:消滅しかけた「5%」の特権
実はこのニュース、正確には「引き下げ」というより「防衛戦の勝利」に近い側面があります。
調査によると、中国はかつて暫定的にウイスキー関税を5%に設定していましたが、この措置は2025年に失効。自動的にWTO協定税率(最恵国待遇)である10%に戻るという危機的な状況にありました。
今回、スターマー首相が北京を訪問し、習近平国家主席と会談したことで、この特例措置の恒久化(事実上の半減措置の継続)を勝ち取った形です。
SWA(スコッチウイスキー協会)のマーク・ケントCEOが「この合意は、極めて重要な成長市場への輸出を再活性化させる」と異例の歓迎コメントを出したのも、この「10%への逆戻り」を回避できた安堵感があるからです。
なぜ今、中国なのか?「プレミアム」の主戦場
今回の合意が業界で重要視される理由は、中国市場の「質」にあります。
中国はスコッチの輸出先として世界トップ10に入りますが、特筆すべきはシングルモルトを中心とした「高価格帯」の比率の高さです。 富裕層の贈答用や投資用としての需要が極めて高く、数千万円クラスのボトルが動くことも珍しくありません。
米国市場が在庫過多で調整局面にある今、ウイスキーメーカーにとって中国は「絶対に落とせない砦」。 今回の関税引き下げは、マッカランやダルモアといった高級ブランドだけでなく、中堅の蒸留所にとっても中国進出のハードルを下げる追い風となります。
日本のウイスキーへの影響は?
我々日本のメディアとして見逃せないのが、競合である「ジャパニーズウイスキー」への影響です。
中国は日本のウイスキーにとっても最大級の輸出先です。サントリーやニッカ、そして新興クラフト蒸留所がこぞって中国市場を開拓しており、その人気はスコッチに匹敵します。
しかし、今回の合意により、スコッチは価格競争力において一歩リードすることになります。 「歴史あるスコッチが、より安く、より手に入りやすくなる」。 この事実は、ブランド力で勝負してきた日本のウイスキーにとって、強力なライバルの攻勢を意味します。
インドに続く「アジア・シフト」の完了
英国は2025年にもインドとの間で、ウイスキー関税を150%から段階的に引き下げる歴史的なFTA(自由貿易協定)を結んでいます。
インド: 世界最大の消費国(関税の壁を突破)
中国: 世界最大の高級市場(関税の低減を維持)
この2つの巨大市場へのアクセスを確保したことで、スコッチウイスキーの「アジア・シフト」は完成形に近づきました。
2026年、スコットランドのウェアハウスから出荷される樽の多くは、東を目指すことになりそうです。










