ジェムソンやレッドブレストといった名だたるアイリッシュウイスキーを製造するアイリッシュ・ディスティラーズ社は、同社の最高峰ライン「ミドルトン ベリーレア(Midleton Very Rare)」より、ミドルトン蒸留所の創設200周年を締めくくる特別限定品「Midleton Very Rare 200th Anniversary Edition」を発表しました。
今回のボトルは、熟成年数28年のシングルポットスチルウイスキーで、ブランド史上初めて日本の「ミズナラ樽」をフィニッシュに使用した意欲作。全世界でわずか636本のみという稀少なリリースとなります。
アイルランドの伝統と日本の木材の融合

本商品は、ミドルトン蒸留所が誇る伝統的な「シングルポットスチル」製法の原酒を使用しています。これは発芽大麦と未発芽大麦をポットスチルで3回蒸留する、アイリッシュウイスキー独自のスタイルであり、オイリーでスパイシーな風味が特徴です。
今回の200周年記念ボトルの核心は、そのウッドマネジメントにあります。 マスターディスティラーのケビン・オゴーマン氏は、1stフィルおよび2ndフィルのアメリカンオーク樽で熟成された原酒に加え、日本のミズナラ樽(パンチョン)で6年以上後熟させた特別な原酒を含む計5つの樽を厳選し、バッティングを行いました。
ミズナラ樽由来の白檀や新鮮な木のスパイシーな香りが、アメリカンオーク由来のバニラやトフィーの甘さと重なり、パイナップルやキウイ、レモンといった鮮やかなフルーツの香味が際立つ構成となっています。アルコール度数は54.7%のカスクストレングス仕様です。
ミズナラ樽の採用が意味するもの
アイルランドの伝統ある蒸留所が、200周年の集大成として日本の木材である「ミズナラ」を選んだことは、日本市場やジャパニーズウイスキーにとって非常に興味深い動きです。
近年、スコッチやアイリッシュのプレミアムレンジにおいて、ミズナラ樽を使用するトレンドが加速しています。これは単なる流行ではなく、ミズナラ特有のオリエンタルな香味が世界的な高級ウイスキーの文脈で「高品質」や「希少性」の象徴として定着したことを示しています。
本来、ミズナラは加工が難しく、漏れやすい上にコストも高いため、長期熟成に使用するのは技術とリスクを伴います。しかし、サントリーやニッカといった日本のメーカーが長年培ってきたこのスタイルが、今やアイルランドの老舗蒸留所の「未来への革新」の象徴として採用されている事実は、日本のウイスキーファンにとっても誇らしいニュースと言えるでしょう。
200周年記念イヤーのクライマックス
ミドルトン蒸留所は1825年、マーフィー家によって設立されました。2025年はその創設からちょうど200年にあたり、一年を通じて様々な記念リリースが行われてきました。
今回の28年熟成は、その記念事業のフィナーレを飾るものです。ケビン・オゴーマン氏は、「このウイスキーは、ミドルトンの洗練された伝統を守りつつ、新しい可能性(ミズナラ)を探求した進化の証です」とコメントしています。過去の伝統に安住せず、次の世紀へ向けて革新を続ける姿勢が、この一本に凝縮されています。
商品概要

商品名: Midleton Very Rare 200th Anniversary Edition
アルコール度数: 54.7%
熟成年数: 28年
樽構成: アメリカンオーク、ミズナラオーク
生産本数: 世界限定636本
価格: 1,220ポンド(約23万円)/ 1,500ユーロ(約24万円)※1ポンド=190円、1ユーロ=160円換算
発売日: 2025年12月16日より現地およびオンラインで展開
以前、当メディアでもレッドブレストやジェムソンの限定品について報じてきましたが、アイリッシュ・ディスティラーズ社のプレミアム戦略は年々洗練されています。
本商品は、アイルランドのコークにある「ミドルトン蒸留所体験」や、ダブリンの「ジェムソン蒸留所ボウストリート」での販売、およびオンラインサイト「Midleton Distillery Collection」でのプレオーダーが予定されています。
日本への正規入荷のアナウンスは現時点ではありませんが、アイリッシュウイスキー愛好家にとっては見逃せない一本となりそうです。










