スコットランド、アラン島に拠点を置くアラン シングルモルトの生産拠点であるロックランザ蒸留所が、「2025年スコティッシュ・ウイスキー・アワード(Scottish Whisky Awards)」において、最高賞の一つである「ディスティラリー・オブ・ザ・イヤー」に選出されました。
日本でも人気の同蒸留所が、操業30周年を迎える記念すべき年に達成されたものであり、その品質とブランドの戦略性が高く評価された結果と言えます。
受賞の詳細とブランドの多角的な戦略
ロックランザ蒸留所は、アラン島におけるウイスキー製造を約150年ぶりに復活させた歴史を持つ蒸留所として知られています。
今回の受賞は、蒸留所の設立から30年という節目に、製造技術、品質管理、そしてブランド全体の成功が認められたものです。
また、トップアワードの受賞に加え、中核製品の一つである「アラン シングルモルト 10年」が「シングルモルトスコッチ – 12年以下」のカテゴリーで金メダルを獲得しています。これは、ブランドのエントリーレベルの製品が、高品質であるという客観的な評価を得たことを示しています。
アラン蒸留所を運営するアイル・オブ・アラン・ディスティラーズ社のマネージングディレクター、ユアン・ミッチェル氏は、「ロックランザ蒸留所がディスティラリー・オブ・ザ・イヤーに選ばれたことは、チーム全体にとって大変名誉なことだ」とコメントしています。
特に注目すべきは、この受賞が2023年に同賞を獲得した姉妹蒸留所のラッグ蒸留所に続くものである点です。
ラッグ蒸留所は、アラン島の南部に位置し、ピーテッドウイスキーの製造を専門としています。ノンピートのロックランザとピーテッドのラッグという二つの異なる個性を備えた蒸留所が、わずか数年のうちに最高賞を連続受賞したことは、アラン島におけるウイスキー製造全体のレベルが非常に高いことを裏付けています。
30周年を迎えたロックランザの歴史的意義

ロックランザ蒸留所は1995年に初留が行われ、アラン島における合法的なウイスキー蒸留の歴史を再始動させました。この歴史的な役割に加え、蒸留所は30周年を迎えた2025年に、様々な記念活動を展開しています。
記念活動としては、蒸留所マネージャーのスチュワート・ボーマン氏が選定した1995年蒸留の原酒を使用した「アラン 30年 シングルモルト ファーストリリース」の発売や、30個の稀少なパロ・コルタド・シェリー樽の販売などが行われました。
さらに、アラン島で製造された最初のウイスキー樽がチャリティオークションにかけられ、スコットランドの小児ホスピス支援団体「チルドレンズ・ホスピス・アクロス・スコットランド(CHAS)」に対し、150,000ポンド(約2,700万円超)を超える金額を寄付しました。これは、単に高品質なウイスキーを製造するだけでなく、地域社会と密接に関わり、貢献していくというブランドの姿勢を示すものです。
観光地としての役割と今後の展望
ロックランザ蒸留所は、スコッチウイスキーの製造拠点であると同時に、アラン島を代表する観光地としても重要な役割を果たしています。ビジターセンターとカフェは年中無休で営業されており、訪問者に対してガイド付きツアーやテイスティングを提供しています。蒸留所は、アラン島の自然と文化を伝える重要な窓口として機能しており、ビジターセンターのマネージャーであるリンジー・パトリック氏は、「この受賞は、島内の素晴らしい観光体験の一翼を担っているという証であり、大変誇りに思う」と述べています。
今回の「ディスティラリー・オブ・ザ・イヤー」受賞は、ロックランザ蒸留所にとって、30年の歴史における最高の栄誉の一つとなりました。二つの蒸留所が確立したアラン シングルモルトは、今後もスコッチウイスキー市場において、島のテロワールを表現する存在として、その地位を確固たるものにしていくと見られます。










