広島を拠点にウイスキー「桜尾」や「戸河内」を手掛けるサクラオブルワリーアンドディスティラリー(サクラオB&D)が、三井物産企業投資株式会社(MCPI)と資本業務提携を締結したことを発表しました。
この提携は、同社のウイスキー事業を、次のステージへと大きく引き上げるものとして注目されます。
提携の背景と狙い

サクラオB&Dは、1918年(大正7年)創業の「中国醸造」を前身とする、100年以上の歴史を持つ酒造会社です。清酒や焼酎の製造を長年続けてきましたが、2017年に「SAKURAO DISTILLERY」を設立し、ジンとウイスキーの製造を開始。2021年には社名を変更し、洋酒事業への注力を鮮明にしていました。
同社のウイスキーは、瀬戸内海沿いの貯蔵庫で熟成される「桜尾」と、内陸部のトンネル貯蔵庫で熟成される「戸河内」という、広島の異なる二つの環境(テロワール)を生かした造りで、国内外から高い評価を獲得しています。
今回の提携は、このウイスキー事業をさらに加速させ、本格的なグローバル展開を目指すためのものです。三井物産グループが持つ、世界的な食品・飲料業界の広範なネットワーク、経営改善やデジタルトランスフォーメーション(DX)推進の知見、そして人材やマーケティング、サプライチェーンの支援体制を活用し、経営基盤を強化します。
第2蒸溜所「FOREST SITE」の始動

今回の発表で、もう一つ注目すべき点が、新たな蒸溜所の存在です。サクラオB&Dは、2025年11月より、新蒸溜所「SAKURAO DISTILLERY FOREST SITE」での試験操業を開始する予定であることも明らかにしました。
既存の「SAKURAO DISTILLERY」(廿日市市桜尾)が瀬戸内海に面した沿岸部に位置するのに対し、新しい「FOREST SITE」は、同じ廿日市市内でも、内陸の山間部である吉和に建設されます。吉和は、冬には雪も降る、桜尾とは全く異なる気候の土地です。
これは、同社が広島県内の異なる気候風土でのウイスキー造りを、さらに深く追求していく姿勢を示すものです。
今後の展望
サクラオB&Dの白井浩一郎社長は、「創業の地・桜尾で培ってきた技術と精神を大切にしながら、100年を超える歴史の次の章へと歩みを進めます。このたびの提携により、経営基盤をさらに強化し、国内外のお客様に“広島から世界へ”魅力あるお酒を届けてまいります」とコメントしています。
2017年の蒸溜開始から、着実に評価を積み重ねてきたサクラオB&D。今回の三井物産グループとの提携は、日本のクラフトウイスキー界において、地域に根ざしたメーカーが、世界的なブランドへと飛躍するための、一つの重要なステップとなりそうです。
新しい「FOREST SITE」で造られる原酒と、グローバルな販売網が、今後どのようなウイスキーを生み出していくのか、大きな期待が寄せられます。





 
  
  
  
  
  
  
  
 




