アイラモルトの中でも、ひときわ強烈な個性で世界中のファンを魅了し続けるアードベッグ。
ファンにとっては、長年の夢とも言えるボトルが、遂に現実のものとなるかもしれません。
アードベッグの最も基本的なラインナップである「アードベッグ TEN」の、カスクストレングス版のラベルが、米国のTTB(アルコール・タバコ税貿易局)のデータベースに登場し、大きな話題となっています。
「アードベッグ TEN」が、あるがままの姿で
今回明らかになったのは、「アードベッグ TEN カスクストレングス」という名のボトルです。その名の通り、これは定番商品である「アードベッグ TEN」に加水調整をせず、樽出しそのままのアルコール度数でボトリングしたものです。
公開されたラベル情報によると、スペックは以下の通りです。
熟成年数: 10年
アルコール度数: 58.9%
濾過: ノンチルフィルタード(冷却ろ過なし)
定番の「アードベッグ TEN」が46%であるのに対し、58.9%という非常に高いアルコール度数は、このウイスキーが持つポテンシャルを最大限に引き出していることを示唆します。ラベルに記載されたテイスティングノートには、「スモークした柑橘類、潮のしぶき、松脂の香り。味わいは強烈なスモーク、タール、クリーミーなダークチョコレートに黒胡椒」とあり、アードベッグの個性をよりダイレクトに、そしてパワフルに感じられる一本となりそうです。
10年越しの幻、その背景

実は、アードベッグが10年熟成のカスクストレングスをリリースするのではないかという噂は、今回が初めてではありません。遡ること10年以上前の2013年頃にも、同様のラベルがTTBに登場し、ファンの間で「幻のボトル」として大きな期待が寄せられたことがありました。しかし、その時は残念ながら、正式なリリースには至りませんでした。
一度は夢と消えたボトルが、10年以上の時を経て再び姿を現した。この事実は、今回のリリースが単なる新商品ではなく、長年のファンの期待に応える、特別な一本である可能性を示しています。

アードベッグのラインナップにおける位置づけ
現在のアードベッグの定番ラインナップには、「ウーガダール」(54.2%)や「コリーヴレッカン」(57.1%)といった、カスクストレングスに近い高いアルコール度数のボトルが存在します。しかし、「10年」という明確な熟成年数を持ったカスクストレングスは、これまで定番品にはありませんでした。
近年のアードベッグ・デー限定ボトルが、実験的なカスクフィニッシュを探求するものであったのに対し、今回のボトルは、アードベッグの最も基本的な味わいを、最もピュアで力強い形で体験できるというわけです。
まだTTBでのラベル承認段階であり、正式な発売日や価格は未定です。しかし、「幻のボトル」が現実となる日が、すぐそこまで来ているのかもしれません。世界中のアードベッグファンと共に、その吉報を心待ちにしたいと思います。