2014年、スコットランド・ローランド地方のウイスキー復興を担う「ニューウェーブ」の一つとして産声を上げた、キングスバーンズ蒸溜所。
その設立から10年という節目を迎え、同蒸溜所にとって初となる10年熟成のシングルモルトウイスキーが、2025年9月より発売されることが発表されました。

10年という「大きな節目」のリリース

近年のクラフトウイスキーブームの中で誕生した蒸溜所にとって、10年熟成のボトルをリリースすることは、一つの大きな目標であり、成熟の証といえます。
ノンエイジの「ドゥーコット」や、8年熟成ボトルなどを経て、キングスバーンズはついにこのマイルストーンに到達しました。
ディレクターのウィリアム・ウィームス氏は、「10年前、キングスバーンズは野心的なビジョンでした。今、初の10年熟成を発表できることは、我々の旅を支えてくれた全ての人々にとって祝福の瞬間です」と語ります。
ローランドスタイルを追求した味わい

キングスバーンズが一貫して目指してきたのは、「その土地の起源を語る、軽やかでエレガントなローランドスタイル」のウイスキーです。
今回の10年熟成は、その哲学の集大成と言えるでしょう。
熟成には、主にバーボン樽が使用されていますが、味わいに深みを加えるため、少量のSTRワインカスクも使用されています。
STRカスクとは、赤ワイン樽の内側を削り(Shaved)、再度トースト(Toasted)し、焼き直す(Re-charred)という特別な処理を施した樽のこと。
これにより、ワイン由来の渋みを抑えつつ、樽材が持つ甘みやスパイス香を最大限に引き出すことができます。これは、多くの新しい蒸溜所を指導した故ジム・スワン博士が広めた手法としても知られています。
その結果生まれたウイスキーは、「夏のフルーツとバニラの香りを持つ、柔らかくバランスの取れた味わい。時間だけがもたらすことのできる、より深い豊かさと複雑さが感じられる」と、ブレンダーのイザベラ・ウィームス氏は説明しています。
商品名: キングスバーンズ 10年
アルコール度数: 46%
希望小売価格: 65ポンド(約13,700円)
次の10年を見据えた投資

キングスバーンズ蒸溜所を運営するのは、インディペンデントボトラーの「ウィームスモルツ」を母体とするウィームス・ファミリー・スピリッツ社です。
彼らはこの10年という節目を、単なる通過点とは考えていません。
近年では、省エネとコスト削減を実現する新しい熱交換システムを導入したり、自社で保税倉庫を稼働させたりするなど、次の10年、さらにその先を見据えた投資を積極的に行っています。
ウィリアム氏は、「最初の10年は素晴らしかったが、我々はまだ始まったばかりだ」と語ります。
設立から10年という歳月をかけて、自分たちのスタイルを粘り強く追求し、ついに一つの到達点を示したキングスバーンズ。
ローランドウイスキーの旗手として、どのような新しいフレーバーを探求していくのか、その旅路から目が離せません。