ウイスキーの味わいは、熟成される「土地の個性(テロワール)」によってどう変わるのか。
この壮大なテーマに、日本でも大人気のイスラエルウイスキー、ミルク&ハニー(M&H)が挑みます。
国内の全く異なる4つの気候帯でウイスキーを熟成させるという、前代未聞の実験的な「エイペックス・テロワール・シリーズ」をリリース予定です。
イスラエルの風土を瓶詰めに。壮大なテロワール実験
ワインの世界では馴染み深い「テロワール」という言葉が、近年ウイスキーの世界でも大きな注目を集めています。ミルク&ハニー蒸留所の今回の挑戦は、その概念をかつてないスケールで探求するものです。
このシリーズは、砂漠、海岸、山岳地帯、そして地中海性気候といった、車でわずか数時間の距離に多様な風土が共存するイスラエルならではの地理的特徴を最大限に活かしたプロジェクト。同じ原酒を4つの異なる場所で熟成させることで、気候や標高がウイスキーのキャラクターにどれほどの影響を与えるかを浮き彫りにします。
このアイデアは、伝説的なウイスキーコンサルタントであった故ジム・スワン博士が、この地域の可能性を「ウイスキー革新の遊び場」と評したことにインスパイアされたもの。蒸留所の情熱と探究心が詰まった、まさに飲む実験と言えるでしょう。
4つの土地、4つの個性的なウイスキー
シリーズは全4種類。それぞれが熟成された土地の名を冠し、全く異なる個性を持っています。
エイペックス・テロワール・デッドシー(死海)
熟成地: 海抜マイナス351メートル
アルコール度数: 57.4%
地表で最も低い土地である死海。乾燥し、灼熱の夏に晒される過酷な環境がウイスキーを鍛え上げました。ヘッドディスティラーのトメル・ゴレン氏は、「ミネラル感とスパイスが豊かで、丸みのある甘さを備えたこの1本は、ウイスキーのテロワール探求において最も過激な挑戦の一つ」と語ります。
エイペックス・テロワール・エルサレム・マウンテンズ(エルサレム山脈)
熟成地: 海抜576メートル
アルコール度数: 55.4%
涼しく、標高の高いエルサレムの松林で、ゆっくりと穏やかに熟成。その結果生まれたのは、「軽やかでフレッシュ、グリーンでハーバルなノートを持つ、森林のテロワールを反映したクリーンな味わい」のウイスキーです。
エイペックス・テロワール・ネゲブ・デザート(ネゲブ砂漠)
熟成地: 海抜563メートル
アルコール度数: 54.2%
砂漠地帯の激しい日中の寒暖差により、樽は日々、収縮と膨張を繰り返します。この穏やかながらも活発な熟成が、「繊細でフルーティー、そしてこの乾燥した土地ならではのドライなフィニッシュを持つ」ユニークなウイスキーを生み出しました。
エイペックス・テロワール・シー・オブ・ガリリー(ガリラヤ湖)
熟成地: 海抜マイナス154メートル
アルコール度数: 56.2%
ガリラヤ湖がヨルダン川と出会う場所で、ブドウの搾りかすから造られた「マークカスク」を一部使用して熟成。甘さとスパイスが互いを高め合う気候により、「大胆でフルーティー、リッチで凝縮された温かみと複雑な層を持つ」味わいに仕上がっています。
ウイスキーの未来を示す一杯
この興味深い「エイペックス・テロワール・シリーズ」は、現在ドイツやポーランドなどで販売が開始されており、7月中旬にはフランス、9月にはイギリスでもリリースされる予定です。(※日本での発売は未定)
希望小売価格は4種類すべて550イスラエル・シェケル(165USドル/121英ポンド)、日本円にして約25,600円。
決して安価ではありませんが、ウイスキーの熟成がいかに繊細で、環境によって劇的な変化を遂げるかを体感できる、非常に価値のあるシリーズと言えるでしょう。
ミルク&ハニー蒸留所のグローバルセールス担当、タル・チョティナー氏は「このシリーズは、長年の研究、忍耐、そして情熱の集大成です」と語ります。彼らの挑戦は、ウイスキーの新たな可能性の扉を開き、私たちにテロワールという無限のフロンティアを示してくれています。