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ブナハーブン、個人樽販売を開始。その裏にある真意とは?

ブナハーブン、個人樽販売を開始。その裏にある真意とは?

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近年その評価を確固たるものにしているアイラ島のブナハーブン蒸溜所。

そんなブナハーブンからウイスキー愛好家にとって夢のような、しかし同時に様々な憶測を呼ぶニュースが飛び込んできました。同蒸溜所が史上初となる、個人向けのカスク(樽)販売プログラムを開始したのです。

夢のオーナードリーム、希少なピーテッド樽

このプログラムの最大の魅力は、販売される樽に詰められるのが、ブナハーブンのピーテッドタイプのニュースピリッツ「ストイーシャ(Staoisha)」である点です。本来、ブナハーブンはノンピートのウイスキーで知られているため、そのピーテッド原酒の樽を丸ごと一本所有できるというのは、極めて希少な機会と言えるでしょう。

マスターブレンダーのジュリアン・フェルナンデス=トムソン氏は、「このプログラムは以前から計画していたもので、世界中のウイスキー愛好家に特別なものを提供したいと考えていました。これはブナハーブンの歴史の一片を、その最初の瞬間から所有できるユニークなチャンスです」と語っています。

提供される樽の選択肢は以下の3種類です。

  1. 200L ファーストフィル バーボンバレル: 約6,500ユーロ / 5,650ポンド(約111万円~114万円)

  2. 250L リフィル ホグスヘッド: 約7,800ユーロ / 6,750ポンド(約133万円~136万円)

  3. 500L ファーストフィル オロロソシェリーバット: 約16,000ユーロ / 13,850ポンド(約274万円~278万円)

価格には5年間の保管料と保険料が含まれており、購入者は蒸溜所への割引訪問や、15%の買い物割引といった特典も受けられます。

さらにユニークなのは、樽の熟成場所をアイラ島のブナハーブンか、姉妹蒸溜所であるハイランドのディーンストンか、購入者が選べる点です。

ブナハーブンでは冷涼な気候でスモーキーさを保ちつつゆっくりと、ディーンストンではより温暖な環境で樽との相互作用を促し、フルーティーでスパイシーなキャラクターを早く引き出すことができるとのこと。まさに究極の選択です。

分析:苦肉の策か、それとも巧みな戦略か

さて、ここで一つの疑問が浮かびます。現在のウイスキー市場がブームのピークを越え、調整局面(いわば不況)にある中で、なぜ今、個人への樽販売に踏み切ったのでしょうか。

これは「資金繰りに困窮しているサインではないか」という見方です。確かに、将来の製品を前金で販売することは、短期的なキャッシュフローを確保する有効な手段です。

しかし、もう少し深く掘り下げてみると、異なる景色が見えてきます。

まず、ブナハーブンの所有元は「CVHスピリッツ」という企業ですが、この企業は2023年にビール世界大手ハイネケンが買収を主導して誕生し、2024年9月にはイタリアの酒類大手カンパリグループも資本参加しています。つまり、ブナハーブンは独立した一蒸溜所ではなく、巨大な世界的企業の強力な資本背景を持っているのです。資金繰りに窮するという状況は考えにくいでしょう。

次に、プログラムの内容です。これは単なる樽の安売りではありません。希少な「ストイーシャ」原酒に限定し、熟成場所の選択という付加価値をつけ、購入者との直接的な関係を築く、非常にプレミアムな体験を売るものです。これは顧客エンゲージメントを深め、ブランドの熱狂的なファンを創造するための巧みな戦略と捉える方が自然です。

また、蒸溜所が閉鎖・売却された場合でも、樽の所有権は契約によって完全に保護されると明言しています。

この購入者保護の姿勢は、自信の表れとも言えます。

ウイスキーファンにとっては、またとない機会の到来と言えるでしょう。

ブナ好きの方はぜひ一樽どうでしょうか。




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