日本の飲料大手サントリーが、世界最大級のウイスキー市場であるインドで、再び大きな動きを見せている可能性が報じられました。
フランスの酒造大手ペルノ・リカールが所有する、インドの巨大ウイスキーブランド「インペリアルブルー」の買収交渉を再開したとの噂が浮上しています。
買収レースの背景と駆け引き

インドの現地メディア「エコノミック・タイムズ」によると、サントリーは昨年一度このブランドに関心を示していましたが、交渉から離脱していました。
しかし今回、買収レースの最有力候補と見られていたインドの地場蒸溜所「ティラクナガル・インダストリーズ」が、買収に必要な資金調達に苦戦していると報じられた直後、サントリーが再び候補として脚光を浴びることとなりました。
サントリーは、「憶測にはコメントしない」という方針を理由に噂の真偽について明言を避けていますが、現地メディアが報じる関心そのものを否定はしていません。
当初、ペルノ・リカールが提示した売却希望額は10億ドル(約1,600億円)とされ、これがサントリーの交渉離脱の一因と見られていました。
しかし、その後ペルノ・リカール側が価格を6億ドルから6億5,000万ドル(約960億円~1,040億円)まで引き下げたと報じられており、交渉のハードルは下がっている可能性があります。
巨大ブランド「インペリアルブルー」とは
1997年に発売された「インペリアルブルー」は、インド産のグレーンスピリッツに輸入されたスコッチモルトをブレンドしたウイスキーです。
現在、インド市場で第3位の販売量を誇る巨大ブランドですが、その業績は近年、精彩を欠いていると指摘されています。
市場シェア8.6%を占めるものの、過去5年間で販売量は4%減少。2024年の販売実績は2,220万ケースと、前年比でごくわずかな成長にとどまりました。
この背景には、近年のインド市場で進む「プレミアム化」のトレンドがあり、消費者の嗜好がより高品質な製品へと移行していることが影響していると考えられます。
サントリーのインド戦略と一致
この買収の噂は、サントリーが近年強力に推し進めるインド市場戦略と完全に一致します。
サントリーは2024年6月に現地法人「サントリーインディア社」を設立し、巨大市場での成長を加速させる計画を明確にしています。
当時、サントリーの新浪剛史CEOは、今後5年から10年でインド事業がグループ全体の2桁、具体的には「10%以上が目標だ」と語っており、その野心的な計画の実現に向けた大きな一手が、今回の買収劇となるのかもしれません。世界有数のウイスキー企業による、巨大市場を巡る動きから目が離せません。