映画を見ていると、登場人物たちがウイスキーを飲むシーンを目にすることがあります。
単なる映画のワンシーンではあるのですが、ウイスキー好きとしてはこの場面が非常に気になるわけです。
どのような飲み方をしているか。何の銘柄が登場したのか。ウイスキーラヴァーの好奇心を刺激せずにはおれません。
ウイスキーを題材に扱った映画には「天使の分け前」や「ウイスキーと2人の花嫁」などが有名ですが、今回はもうちょっとマニアックなものをご紹介します。
「あれ?今チラっと見えたのって●●じゃない?」
「へぇ。主人公はロック派かぁ…」
などと楽しめることうけあい。
今宵はウイスキーとグラスを用意して、映画の世界に浸ってみてください。
ウイスキーが登場する映画
『スパイ・ゲーム』
ハリウッドの2大スターのロバート・レッドフォードとブラッド・ピットが共演したサスペンス・アクションです。
『トップガン』を監督してトニー・スコットがメガフォンを握りました。
国家のために30年間人生を捧げてきたCIA工作員ネイサン・ミュアーの元に「トム・ビショップが中国当局に拘束された」という知らせが飛び込んできました。
ビショップはミュアーが工作員としての素質を見出して、自分自身の手で育ててきた部下です。
すぐにCIA本部に赴いたミュアーは上層部の動きを探っていくうちに、国益のためにビショップが見殺しにされることを知ります。
そのことを知ったミュアーは引退後の生活のために少しずつ貯えていた財産を全て引き出して、大胆な救出作戦を実行に移していきます。
ミュアーがドイツのバーで飲んでいるのは「ザ・グレンリベット18年」です。
凝縮された果物と花の甘美な香りが調和し、完熟した洋ナシの香りがあります。飲み方はロックグラスにストレート。
「スパイはマティーニを飲むと思っていました」、と言う部下ビショップに「スコッチ、12年以上の」とミュアーは言います。
己のこだわりを持って生きていく男の姿に自然と魅せられます。
しかし、リベット18年をロックにするとは、、、このスパイ、香りを楽しむ気はなさそうですね。
『評決』
『ハスラー2』でアカデミー主演男優賞に輝いたポール・ニューマンが主演を務めた法廷映画です。
監督は『十二人の怒れる男』でメガフォンを握ったシドニー・ルメットです。
ニューマンが演じるのは弁護士フランク・ギャルヴィンです。
かつてはエリート弁護してあったのですが、あることをきっかけに落ちぶれ、お酒に溺れる毎日を過ごしています。
そんなフランクは今や、交通事故の賠償事件を目当てに葬儀場を出入りする弁護士に成り下がっていました。
ある日フランクは、友人の弁護士からカトリック教会が経営する病院で起きた医療過誤を担当することになり、心の奥底に眠っていた正義が再び呼び起されるのです。
弁護士フランクがバーに行ってお酒を注文するシーンがあります。
彼が注文したのはアイリッシュ・ウイスキーの「ブッシュミルズ」です。
ブッシュミルズは3回蒸溜を行うアイリッシュウイスキーで、りんごのようなフレッシュな香りが特徴的なボトル。
口当たりはスムースで、女性にも人気の逸品ですね。
『明日に向って撃て!』や『スティング』で見せたユーモアのある演技は封印され、カトリック教会が経営する病院の医療過誤にひとりで挑む弁護士を熱演するポール・ニューマンの演技に胸が熱くなります。
『アルゴ』
18年間にわたって機密扱とされていたCIAの救出作戦を映画化した実話に基づくサスペンス映画です。
第85回アカデミー賞で作品賞、脚色賞、編集賞の3部門を受賞しています。
映画の舞台は中東イランの首都テヘランです。ガンを患うイラン前国王を人道的な立場での受け入れたことに抗議するデモ隊が大使館を占拠し、大使館職員を人質に取ります。
混乱の中で6人の大使館職員が裏口から脱出に成功して、カナダ大使の私邸に身を寄せます。しかし、イラン側に脱出がわかるのは時間の問題でした。
そこでCIAは人質救出に携わってきたトニー・メンデスをイランに送り込み、救出作戦を実行に移します。
それは6人の大使館職員を、イランにSF映画のロケハンに来たカナダ人映画スタッフに仕立てて、イランから脱出させるというCIAの歴史上最もありえない作戦でした。
そんな映画に登場するのがスコッチ・ウイスキー「ザ・マッカラン」です。トニーがカバンにそっと忍ばせ、ホテルの部屋でひとりボトルごとあおります。
うーん豪快。これは多分「ザ マッカラン 1824 アンバー」っすね。オールシェリーのノンエイジものです。
救出作戦は成功するか。6人の大使館職員とトニーの運命はどうなるか。
ホテルの部屋でひとりお酒をあおるトニーの心の内をあれこれ考えさせられます。
『サンローラン』
1970年代の半ばに死亡説が流れた1人のファッションデザイナーがいました。「モードの帝王」としてファッション界に君臨していたイヴ・サンローランです。以前から失踪説や重病説、そしてスキャンダラスな噂もたびたび流されていました。
人々の前から姿を消したイヴが死亡したとされ、一流の新聞社は彼の死亡記事の見出しを考えていたといわれています。
そんな天才ファッションデザイナーの華麗な成功の裏側に隠された命を削るほどの創造の苦しみとスランプ、そして心を打ち砕くほどの愛の葛藤が描かれていきます。
映画に登場するのはスコッチ・ウイスキーの「シーバスリーガル12年」です。
ハーブとハチミツ、豊かな果物香。バニラとヘーゼルナッツの風味に熟したリンゴとハチミツの味わいが広がる初心者から玄人まで愛される名品です。
映画ではタンブラーに注いで、ストレートで飲みます。なかなか粗野な飲み方ですが、この頃のシーバスはクリーミーでまろやかな舌触り。どう飲んでも美味しいでしょう。
1967年のパリが舞台なのでストラスアイラは買収してますね。スタンダード品とはいえ一度飲んでみたい、、、ゴクリ
そんなサンローランを見ながら、「シーバスリーガル12年」を片手に、天才と呼ばれたファッションデザイナーの姿を想い浮かべてみてはいかがしょうか。
『テイラー・オブ・パナマ』
ギャンブルと女性問題で身を崩したイギリス人スパイのオズナードがパナマへ左遷されます。そんな彼は、パナマ運河がアメリカからパナマへ返還された後の政情を探る任務を課せられます。
そんなオズナードが情報源として目を付けたのが仕立屋のペンデルでした。
政府の要人が利用するといわれる仕立屋として店を切り盛りしていますが、服役していた過去がありました。
その暗い過去をオズナードにつかまれたペンデルは無理矢理スパイ活動に従事させられます。
元イギリス人スパイであったジョン・ル・カレのベストセラー小説『パナマの仕立屋』の映画化作品で、自身も映画の脚本に参加しています。
「007シリーズ」のような派手なアクションはありませんが、パナマの持つ独特の空気や気だるさを感じさせる映画です。
また、ジェームズ・ボンド役で派手なアクションを見せたピアース・ブロスナンがボンドとは正反対の堕落したスパイ役を演じています。
映画に登場するのはスコッチ・ウイスキー「ザ・グレンリベット12年」です。
オズナードにパナマ行きを命じた上司がホテルの一室で飲んでいます。
一緒に吸っているタバコはマルボロライトでしょうか。
ベージュのスーツをこんなにかっこよく着こなせる人はそうはいません。
まだまだある!ウイスキーが登場する映画
結構マニアックなシーンの切り取りでしたが、どれも良い映画ばかりです。
今も映画に登場するウイスキーを飲むだけで、不思議とそのシーンがよみがえってきます。
映画を見ながらウイスキーを飲むことは、素敵な作品をウイスキーに閉じ込めることでもあるんです。
ちなみに、『スパイ・ゲーム』のノヴェライズでは「ザ・マッカラン12年」が登場します。
CIA工作員ミュアーが救出作戦の依頼書をタイプライターで作成する描写があります。依頼書の作成が終わった後にひと口だけ飲みます。
また、『アルゴ』の別シーンで「ザ・グレンリベット12年」も登場します。
偽のSF映画『アルゴ』を製作することになったプロデューサー、特殊メイク担当、そしてトニーの3人が飲んでいます。
他にも『キングスマン』に「ダルモア1962」が登録。
『ハスラー』に「J.T.S.ブラウン」が。
『恋のゆくえ』には「ワイルドターキー」が。
『ブレードランナー2049』には未来の「ジョニーウォーカー」が出てきます。
数え上げるとキリがありませんね。
まだまだ未発見の映画はたくさんあるかと思います。
最近は映画見放題サービスも多いですから、是非ウイスキーが映っているシーンを見つけてください。
洋画配信数はAmazonプライムかdtvあたりが一番多いと思いました。ご参考まで。