サントリー株式会社は、世界5大ウイスキー産地の自社蒸留所原酒をブレンドした「サントリーウイスキー 碧Ao」を、2025年12月中旬より順次リニューアル発売します。
2019年の登場以来、自社資産のみで構成されるワールドウイスキーとして独自の地位を築いてきましたが、今回初めて中味とパッケージの刷新が行われることとなりました。

今回のリニューアルにおける最大の焦点は、配合される原酒の質が大幅に引き上げられた点。特に、スパニッシュオーク樽で30年以上熟成された「山崎モルト原酒」が新たに投入されたことは、既存のファンにとっても驚きのニュースです。
以前、当メディアでも「碧Ao」の誕生からそのブレンディングの妙について報じてきましたが、今回のリニューアルにより、その味わいの厚みはさらに増すことが予想されます。
30年熟成の山崎と8年熟成バーボンがもたらす複雑性

今回のリニューアルの核心は、追加された原酒の希少性にあります。
サントリーが保有する膨大なストックの中から、スパニッシュオーク樽で30年以上熟成させた山崎モルト原酒を厳選。この超長期熟成原酒が、ブレンド全体に重厚なウッディネスと濃密な甘みを与えています。
さらに、8年以上熟成させたアメリカンバーボン原酒も新たに採用されました。これにより、バニラやキャラメルといった華やかな甘みが補強され、山崎の重厚さと対比をなすことで、ブレンドの立体感が向上。サントリーのブレンダーは、これらの個性の強い原酒を、既存のスコッチやカナディアン、アイリッシュの原酒と再構築し、より深く濃厚な味わいへと進化させています。
ブランド名の変更。サントリーのアイデンティティを強調

今回のリニューアルに合わせて、商品名が従来の「サントリーワールドウイスキー 碧Ao」から、シンプルに「サントリーウイスキー 碧Ao」へと変更されました。
この変更は、戦略的なリポジショニングを意味すると考えられます。これまでは「世界の原酒を混ぜる」という新奇性が前面に出ていましたが、名称から「ワールド」を外し、サントリーブランドの冠をより強調。これは「碧Ao」をサントリーが誇るプレミアムラインの一つとして、より確固たる存在にする意志の表れです。
パッケージにもこだわりが見られ、ラベルには「越前和紙」を採用。多様な原酒が重なり合う味わいを、さまざまな色が織りなすデザインで表現しており、視覚的にもサントリーの美意識が反映された外装となっています。
ジャパニーズウイスキーの強みを活かした戦略
今回の「碧Ao」の進化は、日本のウイスキー市場全体に対しても一つの指標を示しています。
現在、日本国内では多くの新興蒸留所が誕生しており、自社原酒と海外原酒を組み合わせた製品も増えています。しかし、30年熟成という極めて希少な自社原酒を、ブレンドのキーモルトとして投入できるのは、100年以上の歴史を持つサントリーならではの強みです。
また、希望小売価格が6,000円(税別)という設定も、注目すべき点です。30年熟成の山崎原酒を含むブレンドでありながら、この価格帯を維持したことは、ワールドウイスキーというカテゴリーの価値を再定義し、より多くの消費者にプレミアムな体験を届ける狙いがあるのでしょう。これは、高品質な原酒の確保が課題となっている新興蒸留所にとっても、ブレンドの技術によって付加価値を高める手法として、大いに参考になるはずです。
商品概要と今後の展開
商品名:サントリーウイスキー 碧Ao
容量:700ミリリットル(350ミリリットルのハーフサイズも展開)
希望小売価格:6,000円(税別)
アルコール度数:43%
発売日:2025年12月中旬より順次
今回のリニューアルは、2024年に行われたサントリー主要製品の大幅な価格改定を経て、ブランドの価値を再構築する中での大きな動きとなります。山崎や響といったシングルモルトの入手が困難な状況において、この「碧Ao」が、サントリーのブレンディング技術をより深く体験できる存在へと進化したことは、市場にポジティブな影響を与えるでしょう。
新しくなった「碧Ao」。30年熟成の山崎原酒が世界の原酒とどのような調和を見せるのか。その評価が待たれます。










