スコットランドの西海岸、アイラ島の隣に浮かぶジュラ島。
その名を冠したジュラ蒸溜所が、ブランドの顔であるエントリーモデルのウイスキーを刷新する発表を行いました。
長年親しまれてきた「ジュラ 10年」に代わり、今後は「ジュラ 12年」が、その役割を担うことになります。
単なる熟成年数の変更ではない、ブランドの新たな挑戦

多くの蒸溜所が原酒不足から熟成年数表記をなくしたり、より若いウイスキーをエントリーモデルにしたりする昨今のトレンドの中、あえて熟成年数を引き上げるという決断をジュラは決行します。
この変更の背景にあるのは、大規模な消費者調査の結果です。ブランドチームによると、様々な消費者グループによるテイストテストで、10年よりも12年の方が一貫して高い評価を得たとのこと。
この声に応え、ブランドの新たな「出発点」として12年熟成を据えることを決定しました。これは、過去2年間の生産分をすべてシングルモルトの熟成に充てるなど、長期熟成原酒の安定供給に向けた蒸溜所の地道な努力が可能にした、自信の表れと言えるでしょう。
英国では2025年10月より切り替えが始まり、その後、順次グローバルに展開されます。
消費者に寄り添う、新しいパッケージデザイン

今回の刷新は、ボトルの中身だけではありません。パッケージデザインも大幅にアップデートされます。
新しいボトルには、それぞれのウイスキーが持つ3つの主要なフレーバーを、その強さと共に示す「テイストスケール」が導入されます。例えば新しい12年には、ピーチ、シトラス、ウォルナットの風味が、その強弱と共に視覚的に表示されます。これは、「ウイスキーの専門用語は難しくて baffling(分かりにくい)」という消費者の声に応え、誰もが直感的に味わいを理解できるようにするための、画期的な試みです。
軽やかでフルーティーな酒質へ、スタイルの再発見

ジュラ蒸溜所のウイスキー造りの特徴は、スコットランドでも有数の高さを誇るポットスチルにあります。この背の高いスチルが、蒸留の過程で銅との接触を増やし、軽やかでフルーティーなニュースピリッツを生み出します。
ブランドチームは、この本来の酒質が持つ繊細な魅力を、今後はより前面に押し出していく方針です。これまでの重厚な樽香が特徴的なスタイルから、よりスピリッツそのものの個性を活かす方向へと舵を切る。ウイスキーメーカーのジョー・リケッツ氏は、「これはジュラを再発明するのではなく、伝統を受け継ぎながら新たな章に入るということだ」と語ります。
また、今回のリニューアルに合わせ、免税店向けの新シリーズ「ジ・アイランダーズ・シリーズ」も発表されました。
ホワイトオークカスク、13年、16年、19年の4種類で構成され、10月から展開される予定です。

定番ボトルの進化と、それを伝えるための新しいデザイン。そして、蒸溜所が持つ本来の魅力への回帰。ジュラ蒸溜所が迎える「新たな章」が、ウイスキーファンにどのような新しい発見をもたらしてくれるのか、大きな期待が寄せられます。