2026年2月2日、スコットランドのローモンド湖西岸に位置するラス(Luss)村にて、新しいウイスキー製造拠点『ラス蒸留所(Luss Distillery)』が正式に開業しました。
オープニングセレモニーには、スコットランド自治政府のトップであるジョン・スウィニー第一大臣が出席。
地元の領主や関係者と共にテープカットを行い、同施設がスコットランドの農村経済において果たす役割について言及しました。
美しい景観で知られる観光地に誕生したこの蒸留所は、単なる製造工場ではなく、地域雇用の創出と環境保全を両立させるモデルケースとして稼働を始めます。
「国策」としての地域再生モデル

Luss Distillery , First Minister.
Photograph by Martin Shields
Tel 07572 457000
www.martinshields.com
© Martin Shields
一企業の施設開業に第一大臣が公務として訪れた背景には、スコットランド地方部が抱える課題と、それに対する政府の期待があります。
ラス村は「スコットランドで最も美しい村」の一つとして知られますが、多くの農村部と同様に若者の流出や通年雇用の不足という課題を抱えていました。
スウィニー第一大臣は式典で、同蒸留所が26名のフルタイム雇用を創出した点、および若者向けの現代的な徒弟制度(Modern Apprenticeships)を導入した点を高く評価。「質の高い雇用と地域社会への投資の好例」とし、ウイスキー産業が地域インフラの維持に貢献している現状を強調しました。
国立公園内の厳しい規制をクリアした環境技術

同蒸留所は「ローモンド・アンド・ザ・トサックス国立公園」の中心部に位置しており、建設にあたっては景観保護や環境負荷に対して極めて厳しい基準が求められました。
これに対応するため、製造プロセスには最新の熱蒸気再圧縮技術(Thermal Vapor Recompression)などの省エネシステムを導入。製造時の熱エネルギーを回収・再利用することで、炭素排出量を大幅に削減する設計となっています。
また、建物はかつての製材所などの既存建築をリノベーションして活用しており、国立公園の景観に配慮しつつ、内部は最新鋭のプラントという対比構造を持っています。
スコットランド観光の「玄関口」として
立地においても、ラス蒸留所は戦略的な意味を持ちます。
グラスゴーから車で約45分というアクセスの良さは、海外からの観光客がハイランド地方へ向かう際の「最初の蒸留所(ゲートウェイ)」となることを意味します。
同地を拠点とするクラン・コルトーン(コルトーン氏族)の歴史的背景と、ローモンド湖という自然資源、そして最新のウイスキー製造。これらを組み合わせたコンテンツは、夏場に偏りがちだった湖畔の観光を通年型へと転換させる狙いがあります。
蒸留所ではシングルモルトウイスキーの製造に加え、ジンなどのスピリッツ製造、および一般向けの体験ツアーやボトリング体験などが提供される予定です。










