ウイスキーのコアファンやコレクターの方々なら思わず手が止まるニュースです。
ジャパンインポートシステムが展開する独立系ボトラーの雄、キングスバリー(Kingsbury)社が、1990年代に一世を風靡した初期ラベルシリーズ「キングスバリー オリジナル」を、当時のデザインそのままに数量限定で復刻することを発表しました。
今回のリリースは、オークニー、リンクウッド、クロフテンギアの3種類。
ボトラーズウイスキーの黎明期を知るベテラン勢には懐かしく、最近のファンには逆に新鮮に映る「金色のラベル」が、2026年の市場に再び舞い戻ります。
ウイスキー界に吹き荒れる「復刻ブーム」の正体
最近のウイスキー業界では「過去の意匠」を引っ張り出してくるケースが目立ちます。
昨年末、キングスバリーは伝説の「ケルティックシリーズ」も復活させています。

そして先日ゴードン&マクファイル(G&M)社が往年の「黒ラベル(衝撃の黒)」を復刻させたニュースを弊メディアでもお伝えしました。
まさに今、ボトラーズ界隈では「原点回帰」がトレンドとなっています。
なぜ今、各社がこぞって「あの頃のラベル」を復活させているのでしょうか。そこにはいくつかの要因が透けて見えます。
「オールドボトル」市場の過熱への回答 現在、90年代以前のボトラーズボトルはオークションで手が届かないほどの高値で取引されています。メーカー側は、当時のデザインを復刻させることで、あの「黄金時代の空気感」を今の原酒と共にパッケージし、ファンの所有欲を刺激しようとしています。
デザインの差別化(情報のノイズからの脱却) 現代のラベルはスタイリッシュでミニマルなものが増えていますが、逆に言えばどれも似通って見えてしまう側面もあります。情報の少なかった時代の「蒸留所名がクラシカルに記されたデザイン」は、飽和した市場で強烈なフックになります。
「確実な成功」への依存 原酒価格が高騰し、一樽のリスクが巨大化している現在、全く新しいデザインラインを立ち上げるよりも、過去にファンに愛された実績のある「成功の形」をなぞる方が、経営的なリスクは低くなります。

復刻第一弾ラインナップ
クロフテンギア 2009 16年

製品概要
容量:700ml
アルコール度数:52.3%
カスクタイプ:ホグスヘッド
テイスティングノート
落ち着いた金色のウイスキーからは、甘い麦芽やクリーミーなグリスト、割れた貝殻の香りが感じられる。口にすると塩キャラメルや溶かしバターの風味が口いっぱいに広がり、ピリッとしたスパイスやおだやかなピートスモークが現れる。フィニッシュはなめらかで、海岸の潮の風味が心地よい。
オークニー シングル モルト 2008 17年

製品概要
容量:700ml
アルコール度数:62.5%
カスクタイプ:ホグスヘッド
テイスティングノート
バイキングモチーフの金貨を想像させる金色で、咲き誇る菜の花のフローラルな香りがグラスから立ち上り、はちみつに漬けた完熟フルーツの香りも感じられる。口にするとクリーミーかつやわらかくなめらかで、フルーツのジャムやトフィーの風味。フィニッシュは長く、うっとりするような甘いハーブのニュアンス。
リンクウッド 2012 13年

製品概要
容量:700ml
アルコール度数:54.7%
カスクタイプ:バレル
テイスティングノート
明るいゴールド。バタートーストファッジやポップコーンの香りがふんだんに感じられ、大麦麦芽や刈った干し草の香りも。口にすると、あたたかいオーク、フローラルハニー、ウッディなスパイスにペッパーのニュアンスが感じられ、フィニッシュはビッグで力強く、熟した果実味がこの素晴らしいウイスキーを完璧にまとめる。
遺産への依存か、伝統への敬意か

「過去の遺産にすがっている」という厳しい見方も、あながち間違いではありません。
斬新なコンセプトや、これまでにない実験的な熟成に挑むよりも、過去の「ブランド資産」を切り崩して売る方が、短期的な数字は作りやすいのが現実です。
しかし一方で、キングスバリーやG&Mのような老舗にとって、デザインは単なる紙のラベルではなく、彼らがシングルモルトを世界に広めてきた「戦歴の証明」でもあります。
今回のキングスバリーの復刻についていえば、200本余りという極めて少ない本数でのリリースであることから、大々的な「遺産商法」というよりは、「初期からのファンへの感謝と、ブランドのアイデンティティの再確認」という意味合いが強いように感じます。
ファンに試される「中身」の質

結局のところ、ラベルがどれほどノスタルジックであっても、最後に評価されるのはグラスの中の「液体」です。
90年代の伝説的なボトルが素晴らしかったのは、ラベルが金ピカだったからではなく、その中に驚くような長熟・高品質な原酒が詰められていたからです。
今回のキングスバリー「オリジナル」シリーズ。
懐かしのラベルに袖を通した最新の原酒たちが、あの頃のような感動を与えてくれるのか。
あるいは、外見だけの「懐古趣味」で終わってしまうのか。
ボトラーズウイスキーが「知識と経験」を売る商売である以上、私たち消費者の審美眼もまた試されていると言えます。









