スコットランドのアイラ島に位置し、2024年3月に40年以上の沈黙を破り再稼働したことで世界中の注目を集めたポートエレン蒸留所は、創設200周年を記念し、新たな芸術作品「ザ・アトラス・オブ・スモーク(The Atlas of Smoke)」を公開しました。
この巨大なガラス彫刻は、蒸留所に来る観光体験の中心要素となり、伝説的なウイスキーブランドのニューシンボルとなりそうです。

蒸留所のミッションを具現化した巨大ガラスアート

今回公開された「アトラス・オブ・スモーク」は、ガラスアートで知られるアーティスト、イニ・アーチボング氏が手掛けたもの。
この作品は、アーチボング氏にとって過去最大のガラス作品であり、高さ2.3メートルに達します。
また、高度な技術を要するヴィトルセル・ガラスという特殊素材を使用した単一の芸術作品としても、最大級のサイズを誇ります。
作品は、琥珀色に輝くガラスの層が渦を巻き、ポートエレンのウイスキーの特徴であるスモーキーな香りとフレーバーの層を視覚的に表現しています。ガラスの台座は、アイラ島の複雑な地形の輪郭からインスピレーションを受けており、現代ブロンズアーティストのヤニック・セカーニ氏とのコラボレーションにより、フランスで制作されました。
アーチボング氏は、「この作品は、私がこれまでに手掛けたガラス作品の中で最大であるというだけでなく、ポートエレンという場所、そこに住む人々、そしてコミュニティとの繋がりを表現する上で非常に大きな意味を持つ」と語っています。この彫刻は、単なる装飾ではなく、ポートエレンが掲げる「開拓的な実験を通じて煙の地図を描く」というミッションを具現化したものとして、今後何世紀にもわたって蒸留所のロビーに設置される予定です。
伝説の「ゴーストディスティラリー」の背景
ポートエレン蒸留所は1825年に設立されましたが、1983年に惜しまれつつ操業を停止しました。それ以降、「ゴーストディスティラリー(閉鎖された蒸留所)」として、その稀少な原酒はウイスキー愛好家やコレクターの間で伝説的な価値を持つこととなりました。
この伝説の蒸留所は、親会社であるディアジオによる1億8,500万ポンド(約340億円)の巨大投資プロジェクトの一環として、2024年3月に40年以上の沈黙を破ってついに再稼働を果たしました。この再稼働は、単に過去の蒸留所を復元するだけでなく、現代の技術を取り入れた「実験的な蒸留棟」を併設し、新しい製法やフレーバーを探求するという革新的なアプローチで注目を集めています。

今回の「アトラス・オブ・スモーク」の公開は、この200周年記念事業の目玉の一つです。歴史と革新性を融合させたポートエレンの試みは、アート作品を通じて物理的な形としても表現されたと言えます。
記念事業としての特別な体験と慈善活動

この彫刻は、特別に企画された「ポートエレン 200周年記念体験」を予約したゲストのみが鑑賞できるそうです。
一人あたり450ポンド(約82,800円)で提供されており、伝説的な蒸留所の歴史と再始動後の実験的な側面を深く知る機会となること間違いなし。
また、ポートエレンは記念事業の一環として、慈善活動にも注力しています。例えば、芸術的なコラボレーションを通じて制作された限定ボトリング「ポートエレン プリズム」は、「ディスティラーズ・ワン・オブ・ワン・オークション」に寄贈され、300,000ポンド(約5,520万円)もの収益を慈善団体にもたらしました。
蒸留所の再稼働に始まり、文化、芸術、慈善活動を巻き込んだ一連の200周年記念事業。
ポートエレンは、稀少なウイスキーという枠を超え、スコッチウイスキーの未来を繋ぐシンボルなろうとしています。









