スコッチウイスキーの歴史を語る上で欠かせないインディペンデントボトラーの雄、ゴードン&マクファイル(G&M)社。
同社の象徴的ブランドである「コニサーズチョイス」の黎明期を飾った「黒ラベル」が、現代に「ヘリテイジ(HERITAGE)」として復刻しました。
今回、その「ヘリテイジ」シリーズの最新作として、半世紀以上の時を超えた「ロングモーン 1968 56年」が発表されました。G&M社の根幹をなす樽管理の哲学を現代に伝える、歴史的な一本となりそうですね。
1. シングルモルトの立役者:「黒ラベル」の歴史的役割

「コニサーズチョイス」は1968年、ジョージ・ウルクハート氏によって立ち上げられました。当時、ウイスキーといえばブレンデッドが主流であり、G&M社は、各蒸溜所がリリースしなかった原酒の「シングルモルト」としての可能性を信じ、このシリーズで世に問うたパイオニアです。

初期の黒ラベル(赤文字×黒背景)は、その挑戦的な精神を体現するものでした。この時代のボトルは、閉鎖蒸溜所や特定の優れたヴィンテージを多く含み、その後のウイスキーブームの礎を築きました。
伝説的な銘柄群

コニサーズチョイスの黒ラベルといえば、タリスカー1951~1953、モートラック1936など、今日では入手困難な稀少なモルトが輩出されました。この黒ラベルの時代にボトリングされた数々の名品は、ウイスキー愛好家の間で、G&M社の樽選定眼の確かさを証明する「液体の遺産」として語り継がれています。
2. 56年熟成が証明する「樽管理の哲学」

今回発表されたロングモーン 1968年ボトルは、G&M社のカスクマネジメント技術の精髄を示すものです。
熟成と度数の奇跡
このロングモーンは、1968年蒸留から2025年瓶詰まで56年という途方もない歳月を経ており、ファーストフィルシェリーバットで熟成されました。
驚くべきは、熟成を終えた時点でのアルコール度数が54.3%を維持している点です。ウイスキーは熟成中に「天使の分け前(エンジェルズシェア)」としてアルコール分と水分が蒸発し、通常、これほどの超長期熟成では度数が大きく低下します。この高い度数を保っている事実は、G&M社が選定した樽の密閉性、そしてスコットランドの涼しい熟成環境が、原酒を「飲み込んでしまう」ことなく、その個性を保ち続けたことを雄弁に物語っています。
単なる長期貯蔵ではなく、最高のタイミングで樽と原酒の相互作用を制御し続けた熟練の技こそが、この56年という歳月を可能にしました。
3. ロングモーン 1968の香味と価値
商品名:LONGMORN 1968 56YO / GM Connoisseurs Choice HERITAGE
熟成年数:56年
カスクタイプ:ファーストフィルシェリーバット
度数:54.3%
希望小売価格:1,980,000円(税込)
テイスティングノートによれば、香りは蜜蝋(ワックス)や甘いタンジェリンといったロングモーンらしい個性と、ダークチェリーや煮込んだレーズンの濃密さが共存しています。味わいも、ドライタバコやオレンジマーマレード、ダークチョコレートへと複雑に変化し、長い余韻へと続きます。

この「ヘリテイジ」シリーズは、G&M社の創業当時からの信念を現代に繋ぐ架け橋です。56年の時を超え、現代の最高技術でボトリングされたこの「黒ラベル」の最新作は、ウイスキーの真価が、蒸溜所の名声だけでなく、その原酒を見守り続けたボトラーの哲学によって生み出されることを、改めて私たちに伝えています。










